Interview

神村学園高等部 山本 卓弥選手【前編】 「才能開花のきっかけ」

2015.03.12

 昨春のセンバツ開幕戦で放った第1号アーチは、山本を一躍、全国区の強打者として印象付けた。身長185センチ、体重85キロの恵まれた体型に加えて、どんな厳しいコースにも対応できるバットコントロールのうまさ、ボールをとらえる瞬間のスピードとパワーに非凡なものを持っている。今大会でも注目の打者に挙げられる山本に2年連続でセンバツに挑む決意や理想の打者像などを聞いてみた。

小田監督が野手の才能を見抜き、瞬く間に台頭する

山本 卓弥選手(神村学園)

 山本の出身はお隣の宮崎県日向市。小学1年からウイングススポーツ少年団でソフトボールを始めた。大王谷学園中時代はボーイズリーグの日豊ボーイズに所属。高校の進学は「甲子園に出られるところ」を考えた。
地元・宮崎はいろんな学校が群雄割拠しており、「ここならば確実に甲子園に行ける」という決め手がなかった。たまたま知人で神村学園山本 常夫前監督を知る人がいて、その人を介して神村学園への進学を決めた。

「僕は元々、投手だったんです。でも入学当初は周りのレベルが高くて、やっていけるかどうか不安でした」

 入学当初から183センチの身長があり、中学時代も投手がメインで打撃が自分のセールスポイントだとは思っていなかった。だが、投手以上に打者として非凡なものを持っていることに気付いた人が数人いた。現監督の小田 大介監督もその1人である。

「ティーを打っているときのスイングの強さが目を引きました。インパクトの瞬間に実にいい音を響かせていました」(小田監督)

 当時、中等部の監督だった小田監督は、たまたま室内練習場でティー打撃をしている姿を見て、そんな第一印象を持った。「投手よりも打者で育てた方がいいのでは?」と高等部のスタッフに進言したことを覚えている。そして山本が野手として起用されたゴールデンウイーク明けの練習試合でのこと。
「Bチームの練習試合に1番打者で使ってもらったら、4打数4安打と結果を出しました。そこから打者でいくことになりました」

 非凡な才は瞬く間に頭角を現し、1年夏から2番・ライト、もしくはファーストでスタメン出場を勝ち取った。1年秋からは3番、4番と中軸を任されるようになり、昨春のセンバツでは3番・ライトで憧れの[stadium]甲子園[/stadium]の土を踏んだ。

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[page_break:選抜初本塁打デビューも、その後、苦しみながらも乗り越えた夏]

選抜初本塁打デビューも、その後、苦しみながらも乗り越えた夏

 2014年3月21日、第86回センバツ甲子園の開会式直後の開幕戦。2対1と神村学園リードで迎えた7回表二死一三塁の場面で、山本は岩国(山口)の好投手・柳川 健大から非凡の才を印象づける3ランホームランを放った。

 この試合は中盤まで好投手・柳川のスライダーと140キロ台の直球のコンビネーションを見極められず、打ちあぐねていた。小田監督が指示した攻略のカギは「ベルト付近のスライダー狙い」だった。その言葉通り中盤以降、打線が柳川を攻略し始めた中で山本の一発も生まれた。

山本 卓弥選手(神村学園)

 ベルト付近よりも更に低く、内角に食い込んで沈むスライダーだったが、これをしっかり腕をたたんで振り抜き、ライトのポール際に叩き込んだ。この本塁打について山本は、
「あのコースは練習試合でも打ち返したことがありました。1、2打席目と打席で見ていてスライダーの曲がり方は分かっていたので、打つイメージはできていました。厳しいコースでしたが、インコースは苦にしていないのでしっかりたたんで打てました。

 でも、憧れだった甲子園でまさかホームランが打てるとは思っていなかったので、うれしくて頭の中が真っ白になって、そのときのことはよく覚えていないです。打った後からすごいことをしたと実感するようになりました。

 中学時代、日豊ボーイズの監督だった池辺 賢治さんが、その頃体調を崩して入院していました。僕が甲子園に出たことをとても喜んでくれていて、試合のときはずっとラジオをそばに置いて応援してくれたそうです。池辺さんは昨年の10月に亡くなられましたが、良い報告ができて良かったです」

 開幕戦で勝利し、特大アーチでセンセーショナルな甲子園デビューを飾ったが、2回戦福知山成美(京都)戦は0対12で惨敗。「1つ勝ったことで浮かれてしまって心にスキができてしまった。それからの大会も勝てない時期が続いたけど、何とか調子を上げて夏は3年生を絶対に甲子園に連れて行いきたい」気持ちで夏に挑んだ。

 春夏連続甲子園を夢見て挑んだ昨夏、山本は3番を任されていたが、4回戦までは13打数2安打と低迷していた。準々決勝鹿児島実戦で右中間スタンドに初ホームランを放って、ようやく調子づいた。決勝まで勝ち進み、ライバル鹿屋中央と延長戦まで死闘を演じたが力尽きた。山本は同点で迎えた9回裏に一打サヨナラのチャンスが回ってきたが、内野ゴロに倒れた。「勝負強い打者になる」ことを心に誓った夏になった。

「夏は打てなくて悩んでいたこともあったけど、みんなが休んでいる間もバットを振って、4番の小島 千聖さんや監督さんに相談に乗ってもらって、そのおかげで打てるようになりました。
相手の鹿児島実は強いチームだったけど、僕らの前の代のチームから鹿実には負けなしできていたので、そのライバルを相手にコールド勝ちできたことは自信になりました」

 決勝戦鹿屋中央戦は、お互い相手を知り尽くしていて、大きなミスもなかった中で、最後は甲子園に出たいという強い気持ちの差が勝敗を分けたと振り返る。

「僕自身、チャンスで打席が回ってきてプレッシャーに押しつぶされていました。こんなときこそ、『よっしゃ、回ってきたぞ』と緊張感を楽しめるぐらいの強さがまだなかった。今思えば、必死になって頭が真っ白になっていて、左投手のスライダーでも、抜けて甘いボールになったのが何球かあったのに、打ち損じてファーストライナー。冷静だったらホームランも打てたのにと思える場面でした」
そう、振り返る山本。再び[stadium]甲子園[/stadium]の土を踏むために勝負の秋が始まった。

 ここまで入学から夏までの過程を振り返ってきました。打者としての非凡な才能を見出した小田監督によってメキメキと頭角を現した山本選手。後編では選抜までの過程、自分が目指す打者像についても語ってもらいます!

(文・政 純一郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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