Interview

東京ヤクルトスワローズ 小川 泰弘投手 「小さな投手が第一線で活躍するために必要なこと」

2015.03.06

 足を高く上げた独特のフォームで球場を沸かせる東京ヤクルトスワローズの小川泰弘投手。2015年もチームのエースとしての活躍が期待されます。今回は、そんな小川投手の身体を使いこなすための秘訣や、大きな選手に負けない芯の強さ、そして高校生に伝えたい思いについて伺いました。身体の使い方に悩んでいる球児、必見です。

ケガがあっても、焦りはなかった

小川 泰弘投手(東京ヤクルトスワローズ)

 昨年、9勝に終わったシーズンを小川投手はどう自身で評価しているのだろうか。

「昨年は開幕投手という大事な役目も務めさせていただいたので、1年目よりはプレッシャーや周りの期待を感じながらやっていました。ただ、9勝に終わってしまったところやケガをしたことも含めて力不足だなっていうことを感じる1年間でしたね」

 小川投手はヤクルトのエースとして開幕戦に登板。チームとしては44年ぶりの開幕3連勝も達成したが、4月18日に打球を右手に受け、有鉤骨鉤骨折で長期離脱。苦しいシーズンながらも、勝ち星を積み上げた要因は何か。

「復活してから絶対結果を残そうと、しっかり準備をしていたのと、野球が出来ることに感謝して一球一球投げていたので、それが最後3連勝という良い結果に繋がったかなと思います」
野球選手にとって、プレーが出来ないのはつらいもの。どうしても焦りが出てしまう。だが小川投手に焦りはなかった。

「焦りは全くなかったですね。これも良い経験だと捉えていました。ケガは誰でも経験することだと思うし、そういう時に、どうやってケガに向き合い野球に打ち込むかという経験が、今後も役に立ってくるはずです。確かに残念でしたけど、1カ月間投げられない期間が出来て、肘・肩の休憩期間が出来たので、長い目で見たら来年以降につながるはずだって。そう考えて毎日過ごしていました。

 これは僕が性格的にマイペースだというところも大きいと思います。それに、先の事を考えてしまうと焦りも出てくると思うんですけど、『本当に今出来ることは何か?』っていうのを常に考えて、それを自分なりにやっていけば、おのずと自信も出てくる。そう心掛けています」

 焦らず、しっかりとケガに向き合ってきた小川投手は、その中で来年につながることを考えながら取り組んできた。そんな中でも、9勝を挙げることができたのだ。
今シーズンを見据え、小川投手はどんなトレーニングを行ってきたのか。

「身体を絞りながら、柔軟性を出しながら、バランスを整えながら鍛えるということを意識しています。シーズン中、野球をやっていると、どうしても体のバランスって崩れてくるんですけど。
それをオフの期間でどれだけフラットに戻せるかというのがすごく大事で。そういったトレーニングを行っています。あとは体幹が大事だと思うので、重点的にやっていますね。
キャンプでも引き続き体幹トレーニング、下半身のトレーニングをしっかりやりながら、自分のペースを保って、じっくり一か月やれればとイメージしています」

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[page_break:憧れの上原浩治投手との自主トレとフォームのこだわり]

憧れの上原浩治投手との自主トレとフォームのこだわり

小川 泰弘投手(東京ヤクルトスワローズ)

 このオフは、目標にしていた上原 浩治投手『上原浩治のピッチング・メソッド』・2014年インタビュー・2013年インタビュー【前編】【後編】)との自主トレが実現。実際に上原投手と触れ合って、どんな感想を持ったのだろうか。

「人に流されないし、自分というものを持っているし、練習熱心ですよね。キャリアが長くなっても一生懸命練習されている印象が強いんです。一緒に練習をすると伝わってきますし、刺激は受けますね。やっぱり中高生の時から見ている憧れの選手ですから」

 そんな小川投手は、今年から上原投手も使っているブランドに揃えたという。

「今年からナイキを使っていますが、まずはカッコイイというのが、率直なイメージでした。靴もしっかりしているし、ウェアもいろんな種類があって。アンダーシャツもすごく種類が豊富だし、普段着られるようなものもありますね。多くの種類の中から選べるのっていいですよね。スパイクなどは選手の要望に沿って色々細かく作っていただけるというのを聞いたので、いいなと思いました」

 ウェアを選ぶときには、見た目は気にしているのだろうか。

「気にしますね。サイズ感とか形とか。ダボッとしているよりフィット感がある方が良いです」
大学時代から小川投手は、ピチピチとしていたユニフォーム姿が印象的で、分厚い下半身がとても目立っていた。やはりフィット感には、こだわりを持っていたようだ。

足を高々と上げるフォームを維持するために心がけていること

小川 泰弘投手(東京ヤクルトスワローズ)

 小川投手といえば、高く上がった足が綺麗な独特のフォーム。このフォームを見て、小川投手のことを多くの方が「ライアン」と呼ぶ。そのことについては。
「フォームは見た目じゃないです(笑)。見た目より実用性ですね。でもこのフォームに期待してもらっている部分はあると思うんですよね。実は足を上げるフォームはしんどいんですけど、これを見に来てくれるお客さんもいるんじゃないかなと思って頑張れる部分もあります」

 今のフォームにしたきっかけは、大学3年生の春のリーグ戦で東京国際大に2連敗をして優勝を逃したことだ。小川投手にとって痛恨の出来事。秋のリーグ戦に向けて期間が少しあったので、新しいフォームに取り組むチャンスがあった。

「その時、雑誌を読んでいたら、ちょうどノーラン・ライアン選手のピッチャーズバイブルを見たという、ロジャー・クレメンスの連続写真を発見したんです。まずは自分もピッチャーズバイブルを読んでみようと。それで真似してみて。最初はやっぱりバランスが難しかったりしたんですけど、意外とすんなりいきましたね。自分に合っていたのかもしれません」

 こうして小川投手は秋のリーグ戦優勝。その後の横浜市長杯も勝ち抜き、2011年の明治神宮大会はベスト4入り。大学4年生となった2012年も、春には大学選手権に出場し、全国レベルの投手として活躍を遂げた。

 あれほど足を高く上げるフォームを維持するのには、何か特別なトレーニングはしているのだろうか。また体の部分で大事な点について聞いてみると、

「他のピッチャーと比べて特別なことはしていないですね。足を上げた時のバランスとか、フォームチェックは鏡を見てよくやったりしますけど、それくらいですかね。
ただ、下半身の強さと体幹の強さが無いとダメだと思います。普通のフォームよりも足を高く上げるのでブレが大きくなっちゃう。だからそのブレを最小限にしなくちゃいけない。そういう意味で強さは必要だし、もちろん柔軟性もないと足も上がらないです。もともとどちらかといえば身体は柔らかかったです」

 体幹も強かった方なのか。
「いや、弱い方でしたね。今も強いとは言えないんですけど、意識して鍛えるようにしています。量を多めにというよりは、毎日継続して、という感じですね。やっぱり継続は大事です」。

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小さな投手が、第一線で活躍するために必要なこと

小川 泰弘投手(東京ヤクルトスワローズ)

 しかし継続するのは大事とわかっていてもなかなか難しいところである。昔から継続して取り組める選手だったのだろうか?

「コツコツとやるタイプでしたね。何か取り組むことがあったら、目標も立てますけど、まずはやってみる。それで『これをやったらどういう自分になっているのかな?』というイメージをします。イメージしながらやると意欲的に取り組めたりするので」

 プロ野球の投手としては決して大きくない小川投手だが、第一線で活躍するために心掛けている、必要なこととは。

「大きい選手には負けないぞっていう『負けん気』みたいなものですかね。そういうのは絶対必要です。
気持ちの上では強気でいようと思うし、『小さくても出来るんだぞ』っていうのも、子供たちに伝えたいという思いもあります。
身体も小さいし全身を使って投げるので、身体のケアとトレーニングは絶対必要で欠かせないと思っています」

 体が小さいことに悩んでいたりする選手もいる。身体を大きくしようとするのと、今ある身体と向き合って使い方を工夫していくのと、どちらの方向で考えるのが良いと小川選手は考えているのだろうか。

「難しいところですけど、高校生の年代であれば、身体をしっかり鍛える、出来るだけ大きくすることが大事じゃないですかね。身体のベースを作って、それから使いこなせるようにしていく。自分の体を自分でコントロールしていくことが出来るようにしていくのが大事ですね。
自分も小さい時は思ってましたよ、大きくなりたいって。牛乳もたくさん飲んだし、でも背は伸びない。悩みというか、考えることはありました。
吹っ切れたのは、『身長は関係ない。使い方次第だよ』って言われて、『あ、そうなんだ』って思えたんです。ホント、身体は使い方次第ですよ。大きさじゃないです。自分で使いこなせるかどうかです」

 いかに自分の体を使いこなせるか。その考えが、今のフォームを築き上げたのだろう。
今年の目標について聞くと、
「防御率2点台に下げること。あとはとにかく1年間投げたいです。一年投げれば勝ち星は付いてくる自信はあります」

 最後に高校生へ向けて全力で最後までやりきるためのメッセージをいただいた。

「目標を定めたら、そのためには何が必要なのか考えて逆算して、今日一日何をすればいいのかを考えてから練習する。自分が決めたことに全力で取り組む。それを毎日全力で続けていければ、やり切ったって言えるんじゃないかなと思います。悔いは残してほしくないです。負けたら悔いはどうしても残っちゃうと思うんですけど、その取り組み自体に悔いは残してほしくないですね」

 しっかりと自分というものを持った、芯の強さを持った小川 泰弘。その芯の強さは多くの球児が見習いたいと感じているだろう。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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