Interview

東京ヤクルトスワローズ 大引 啓次選手【vol.4】「現在の守備の土台となった高校時代のトレーニング」

2015.03.03

 ここまで大引選手に守備をテーマに3回構成で迫っていきました。今回、大引選手に、今の守備の基礎を作り上げた高校時代の練習での工夫から、プロ入り後のトレーニングへの取り組み方のお話までたっぷりと伺っていきます。

今の基礎を作り上げた高校3年間

大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)

 大阪の浪速高時代、大引は野球の基礎を作り上げる濃厚な3年間を送った。

「うちの高校はそれほど環境に恵まれた方ではなかったので、ノックの回数も多くは受けられなかったです。それでも、与えられた環境の中で、どのようにすれば密度の濃い練習ができるのかを考えた経験が、今プロで戦う糧となっているので、与えられるのではなくて自分でテーマを見つけ出しながらトレーニングしてきたことが、今の自分に生きていると思います」

 当時、監督だった小林 敬一良氏(現・成美大監督)の出会いも大きかった。小林氏はどんなトレーニングを教えていたのだろうか。

「高校時代から、バランス、ビジョントレーニングは多くやりましたが、今でも続けています。高校時代の監督は、いろんなものを野球に繋げることを考えていて、とても柔軟性のある方でした。バランスを大事にするトレーニングの重要性は、進学して改めて気づきましたし、それは今に生きているなと。自分の原点になっています。また、強豪校と戦う時に同じことをやるのではなく、いろいろな工夫をしていたことが結果的には糧になっていたのかなと思いますね」

 強豪校と同じことをやるのではなく、自分にしかできないことをやる。大阪の強豪校に負けないためには、それが必要な考え方だった。

「練習量、選手の質とこの2つを合わせても、がっぷり四つ組み合えば絶対負けることは選手も分かっていました。そのため、彼らとは違うことをやって、メンタルの部分でこういう練習をしていれば強豪校に勝てる、負けない、と実戦をイメージして練習していましたが、それが対等に戦えていた要因かなと思っています」

 そこでトレーニングの重要性に気付いた。
「高校ですかね。グランドばかりではなくて、授業や勉強もあったので、それらを含めてここ一番の集中力が生まれたと思います。大学、プロでも大事なことですね。あと走り込みは基本じゃないですかね。やっぱり、どのスポーツにしても土台がしっかりしないと戦えないので、そこは重点的にやっています」

 また、内野手の守備力を鍛えるためには、遊びの中から見出すことが重要だ。

「機材を使ったトレーニングよりも、日常生活や遊びの中の何気ないことから、野球に役立つと感じるものを見つけ出せるか。これは本人が気付いて、トレーニングをしてほしいですね。グラウンドレベルで言えば難しいのですが、数をこなす。『こうすれば上手く取れる』っていうのは、いくら教えられても自分で気付かないとなかなか分からないことがある。でも数をこなせばうまくなるので、コツを実感できればもっと練習に打ち込めるのかなと思います」

 また、プロ入りして感じたトレーニングメニューについてはどうだろうか。

「オリックスでもトレーニングコーチを代えたりして、いろいろやっていましたけど、一番はファイターズですかね。2年間しかお世話にならなかったですけど、トレーニングの基本がしっかりしているなとは感じましたね。キャンプから、ランニングのメニューだとか体幹のトレーニングをするのにも、同じものばかりでなく、段階を踏んだ様々なバリエーションがあったと感じますね」

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[page_break:トレーニングは良薬は口に苦しという気持ちで取り組む]

トレーニングは良薬は口に苦しという気持ちで取り組む


大引 啓次選手(東京ヤクルトスワローズ)

 そして選手によって課題というのは、毎年変わってくるもの。大引はどう感じながら過ごしているのだろうか。

「徐々に体力の衰えも感じるので、それをどうキープするか。でもキープすることだけを考えれば落ちてしまうので、もっと伸びるということを考えてやらないといけないとは思いますね」

 しかし、トレーニングは非常につらいもの。どうやって気持ちを切らさないようにしているのか。

「もちろん逃げたいこともあるんですよね。ただ、ラクなものばかりやってもね。『良薬口に苦し』という言葉があるように、つらい練習ほど生きる気がするので、ホント我慢だけしてやっています」

 つらいけど、いつか自分の身になる。そういう気持ちを持ち続け、練習を重ねてきた。大引は、オフシーズンの過ごし方こそがシーズンを左右するものと考えている。

「それは僕だけではなくて、いろんな人も思っていますが、この時期が一番、選手間の差が広がったり縮まったりする。シーズン中は、なんだかんだみんな同じような量をやるじゃないですか。キャンプ中も与えられえたことをやるので。そうなってくると、やっぱりオフの時期が、やる人とやらない人の差がつくので、シーズンを大きく左右するんだと思います」

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[page_break:背中で引っ張る存在でありたい]

背中で引っ張る存在でありたい

大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)

 そんな大引選手が、北海道日本ハムファイターズから東京ヤクルトスワローズに移籍して感じていることとは?

「比較的、前所属の北海道日本ハムファイターズに似ているのが印象的です。本当に、すんなりとチームに溶け込むことができました。それも同級生の森岡 良介だったり、高井 雄平2010年インタビューだったりが声をかけてくれたり、若い選手も声をかけてくれているから、自分としては助かっていますね」

 北海道日本ハムファイターズと似ているというのは、活気があって競争意識も高く、若手選手の多さを実感している部分からだろう。

「野手は、僕より2つ上の田中 浩康さんや畠山 和洋さんたちが最年長の年代になるくらい。あとは僕よりも若い選手ですから。ファイターズは当時、小谷野 栄一さん(今季よりオリックス・バファローズ)、飯山 裕志さん、金子 誠さん(現:北海道日本ハムファイターズ・チーム統括本部 特命コーチ)、稲葉 篤紀さん(現:侍ジャパントップチーム打撃コーチ)など、年上の方がいっぱいいらっしゃいましたけど、今は僕が中堅というよりベテランにさしかってきていることは感じますね」

 これまでの2球団とは違い、ヤクルトで担う役割は“伝える”ことが多くなる。

「いろいろな意味で若い選手が多いので、自分が今までやってきたことを若い選手に伝えていきたいですね。『いいところはいい。悪いところは悪い』と、今後につなげていってもらえれば。いいお手本になりたいと思います。移籍1年目なので、口で『ああやれ、こうやれ』と言うよりも、まずは自分がやるべきことを背中で示して、それを若い選手が見てくれて、自分の真似をしてくれるような。そんな選手になりたいと思います」

 若手選手に背中で手本を示すのは、北海道日本ハム時代に、金子選手、稲葉選手を見て感じたことである。

「まず野球を楽しむ。ただその中にも厳しさがちゃんとある。雰囲気を引き締めてくれる人がいると思うんですけど、そういう人は、普段もしっかりコミュニケーションをとって、和気あいあいとしていますけど、ここぞというときにしっかりと締める。ファイターズなら稲葉さんや金子さんのようなベテランが、しっかり背中で引っ張ってくれたので。あの人がやるんだから若い人たちもちゃんとやらないといけないな、というのがあったので、そういう雰囲気が大事だと思います。僕もそういう方を目標に、変わらないといけないと感じています」

 最後に大引選手から頑張る10代プレーヤーたちにメッセージを頂いた。

「結果をすぐに追い求めたくなりますけど、今トレーニングをしていることは、なかなかすぐに数字とか結果では表れないと思います。それでも、春、夏に、地道に積み重ねてきたことが成果として出てくると思うので。練習は絶対に嘘をつかないので、頑張ってほしいと思います」

 大引選手、ありがとうございました!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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