Interview

東京ヤクルトスワローズ 大引 啓次選手【vol.1】「見落としやすいジェスチャー&足の動かし方のコツ」

2015.02.26

 東京ヤクルトスワローズ・大引 啓次遊撃手。オリックス時代から堅守を誇る遊撃手として、活躍をみせてきた大引選手に、今回は球児たちにとって、『基礎となる守備』をテーマにロングインタビュー(全4回)を実施。ジェスチャー、ポジショニング、打球判断、二塁手とのコンビネーションなど、あらゆるところまで守備の極意を語っていただいた。第1回は、実は見落としがちなジェスチャーについてのアドバイスを盛り込んだコラムをお届けします!

Point01.ジェスチャーを取る重要性

大引 啓次選手
(東京ヤクルトスワローズ)

 2月、キャンプ中の練習の様子を見ると、大引選手はシートノックから中継・カットプレーの際に、1つずつ大きなジェスチャーを外野手に示し、併殺の際も「こっちにボールがほしい」というところを明確に示していた。このプレーについて大引選手は、
「内野手として当然の動きであると思います。外野手が打球を追いかけ、どこに投げたらいいのか分からない状態で、振り返って目がいった時、僕が大きなジェスチャーをすることで目標がしっかりしていれば、外野手もしっかりといいところに返してくれる。それは自分にとっても、すごいプラスになるじゃないですか?

 逆に投げるところが分からず、適当に投げたボールが僕の捕りにくいところに来たら、次にする僕の送球にも繋がらない。いいところに投げたら、いい送球にも繋がるので、そこは『僕が意識する』というよりも『自分にも跳ね返ってくる』と思っています。それはオリックス時代から、なんら変わりなくやっていることですね」

 実は大引選手は、法政大時代から同様に取り組んできた。
「逆に(大きなジェスチャーを)やらないと、『もっと大きく呼んでやれ!』と怒られていたくらいですから。『声を出して呼んであげろよ』と言われていたので、内野手として当然のことだと思いますね」

 取材日のシートノックで、一番大きなジェスチャーをしていたのが大引選手だった。大引選手は、大きくジェスチャーすることは、内野手の徹底事項だと説明する。

「僕は中継に入る選手に『もっと大きく呼んであげた方がいいよ』とアドバイスした方がいいと思います。きっとその方が外野手としても投げやすいと思うんですよね。二塁手の山田 哲人も入団するまではそれに気付かなったようなので、そういった部分はどんどん伝えていったほうが良いと思うんです」

 内野手は外野手とのコミュニケーションが欠かせない。だが、プロ野球の現場でも、ジェスチャーでしっかりと意思表示する意識はあまり広まっていないようで、意外にも見逃されてしまう部分のようだ。しかし、それを内野手としての徹底事項だと大引選手は語ってくれた。

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[page_break:Point02.今年の神宮は打球が死にやすい。足を動かす必要性とポイント]

Point02.今年の神宮は打球が死にやすい。足を動かす必要性とポイント

大引 啓次選手(東京ヤクルトスワローズ)

 大引選手がヤクルトに移籍して、ホームスタジアムは法政大学時代以来の[stadium]明治神宮野球場[/stadium]になる。今までも[stadium]札幌ドーム[/stadium]・[stadium]京セラドーム[/stadium]と人工芝のグラウンドをホームスタジアムにしていた大引選手だが、遊撃手の守備で今までと少し違った動きや考え方を入れていこうと考えていることはあるのだろうか。

「今年から[stadium]神宮球場[/stadium]の人工芝も張り替えられていますし、実際に一度グラウンドに入る機会があった中で感じたのは『打球が以前に比べて来なくなる、死んだ打球が多くなるだろう』ということ。そのため、『抜けた』と思った打球でも一生懸命追えば追い付くことができたり、ヒット性の当たりでもアウトにできる可能性があると思っています。逆に待って捕ってしまうと、内野安打になってしまう確率も高くなってしまう。積極的に自分の足でボールを取りに行く、ボールを待つのではなく、しっかり取りに行くことをやっていく必要があると考えています」

 足で取りに行くとなると、その足を動かすポイントとは何だろうか。

「相手打者が打った瞬間に、足を動かす。合わせないことです。内野手は『このバウンドは自分のところまで2バウンドで来るな』と思ったら、どうしても待ってしまいがちになりますが、まずは打った瞬間に前なら前、横なら横に反応することが大事だと思いますね。

 その中で、スタートする時の姿勢と捕球姿勢があまり変わらないようにすること。打った瞬間に浮きがちになるところを抑える。そうしないとスタートも遅れますし、捕球時に上から捕球する形になってしまいますので、極力低い姿勢のままスタートを切る。盗塁にも似ていますよね。相手投手の投球と同時に、ひざの位置を動かさずに低い姿勢のままスタートを切る。目の位置もブレないことがエラー防止にもつながると思います」

 プロの遊撃手は一瞬の『待ち』が内野安打につながりやすい。打球に合わせるのではなく、いかにすぐに捕球態勢に入れる動きを作れるか。そうなると、構える意識も大事になる。

 また、高校球児が陥りがちだが、よく「腰を落とせ」という言葉がある。ただ、腰を落とし過ぎると捕球時にはもう1回立て直さないといけないので、難しい体勢になってしまう。大引選手の場合は、どんな意識で構えを取っているのだろうか。

「自分にとって、どの姿勢がパワーを出しやすいのか、スタートを切りやすいのか。そこは個人によって絶対に違う部分です。ポジションによっても違います。サードやファーストであれば速い打球が来る可能性がありますし、遊撃手は打席から遠いので動き回ることが多い。僕の場合はテニスプレーヤーのように、前・後ろ・横、どこにでも動ける形で準備はしているつもりです」

 低く構えるのには、素早く反応するという目的がある。だが、腰を低く落とすことが目的化してしまい、本来の目的を見失いやすい。大引選手に限らず、プロの内野手は、スタートを切りやすいポイントを把握しているのだ。


ここまで判断のポイント、ジェスチャーの重要性、適切な腰の落とし方について説明をいただきました。次回はポジショニングとコミュニケーションの取り方について語っていただきます。

(インタビュー・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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