Interview

埼玉西武ライオンズ 秋山 翔吾選手【後編】 「前向きに取り組むことが自分のためになる」

2015.02.26

 前編では今季の目標、また4月19日を終えて、パリーグ打率1位を走る打撃のメカニズムについて、用具のこだわりについて語っていただいた。後編では高く評価されている守備、走塁の意識づけ、またベストパフォーマンスを発揮するためのグラブのこだわりについて触れていく。

大切に使うグラブの秘密

秋山 翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)

――守備や走塁について、秋山選手も進化されている部分もあると思います。

秋山 もう少しスパイクの力を借りることができるように(笑)、自分も進化しないといけないと思っています。守備に関しては前にも後ろにも対応できるように捕ってすぐ投げられるように、とっさの動きにスパイクが対応できるよう、ボールと自分がコンタクトしたときに道具の力を借りるような流れを心がけています。

――その道具という部分ではグラブですが……使い込んでいますね。

秋山 2011年に埼玉西武ライオンズに入団してからずっと試合ではこのグラブを使っています。

――このグラブを使い続けている理由はどこに?

秋山 今年は充て布とかも使っています。これは今年使いこなせるかは僕自身の課題になります。ただ、このグラブは自分でもしっくりきますし、プレーに支障が出ないものだと思っているので。紐を変えたり、いろいろなところを補強してもらったりもしてもらっているので、このまま使い続けられていますね。本当に感謝しています。

――このように用具を大切に使う思考は、横浜創学館高、八戸大(現:八戸学院大)時代もそうだったのですか?

秋山 高校・大学時代はお金もなかったですし、ある意味「使い続けるしかなかった」ですね。そして自分の性格的に「新しいものにいけない」ところがあると思うんですが……。ただ、このグラブは大きなミスが出たり、プレーに支障が出るようなら変えないといけないと思いますが、今までやってきて、ゴールデングラブ賞も1回(2013年)獲らせて頂きましたし、試合で使える状態にして頂いている以上、大事に使いたいと思っています。

――その5年目に入るグラブの特徴はどこにありますか?

秋山 「長さ」だと思います。他の外野手の方よりも二回りくらい大きいですね。指の長さが長いんですよ。

――確かに!長い!

秋山 これ以上大きくしようとは思いませんが。一回り小さいグラブも過去には試したこともありますが、この長さにやはり慣れているので。あとは小指の深さが特徴です。

――小指が深いのはなぜですか?

秋山 普通のグラブは浅い握りをイメージしていると思いますが、僕は指の長いグラブになっている分、しっかり手を入れたい。手のひらに近い感覚を考える中で、この形になりました。

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[page_break:外野守備向上に大事な「フリーバッティング捕球」]

外野守備向上に大事な「フリーバッティング捕球」

秋山 翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)

――その外野守備ですが、単純そうに見えて実に深い部分があると思います。打者・試合環境・投手の配球・カウント・相手打者の打球傾向など。高校球児がこれらをいっぺんに行うことは難しいですが、秋山選手はどのようなことからつかんで守ればいいと考えますか?

秋山 まずは風をつかむことですね。そのためには普通、高校や大学だと「球拾い」的守りになってしまったり、お手伝いをされる方もいらっしゃるのですが、バッティング練習のときからしっかり守ることです。僕はその時にはいつもより守備位置を前めにとって、前はもちろん後ろも追って捕ります。定位置だったら捕球できるものに対して、わざと練習で難しい状況を作っておくんです。この練習はある意味孤独なんですけど、うまくなるためには人と違うことをしないとうまくなりません。

――確かに、そうですね。

秋山 外野ノックだとノッカーの肩の力加減があるので、比較的捕球しやすい。対してフリーバッティングでは生きたボールが飛んでくる。イージーな捕球ばかりをしているとあまりためにはならない。

――となると、フリーバッティングのボールをつかみにいかないことは「もったいない」こと。

秋山 そうなんです。練習で生きた打球を受けられるのはそこしかないですから。そしてこの時に、ポジションを前にすることは簡単な反面、状況を作りだす意味では大事なことだと思っています。

――ということは秋山選手は今でも練習でされている?

秋山 はい。シーズン中はコンディショニングを整えないといけない部分がありますが、練習日の時は。
ノックを受ける時も前に出ていい状況であれば、前に出たポジションからノックを受ける時もあります。もちろん、前に出る部分でもライナーやこすった打球の捕球も難しいんですけど、外野手は追う距離や落下点を探す部分では、後ろに追うことが一番難しいですから。「いろいろな状況を練習から自分で作りだす」これが大事だと思います。

――余談ですが、NPBの主催球場で難しい場所はありますか?

秋山 [stadium]西武プリンスドーム[/stadium]は風がないので、[stadium]QVCマリンフィールド[/stadium]よりは難しくないです。風は自分が養ってきた感覚がズレる大きな要素になります。天候や環境については似たようなシチュエーションをあてはめることができますが、風だけは……。[stadium]コボスタ宮城[/stadium]も形状的な難しさはありますが、やはり千葉の風の方が難しいです。

――風をつかむためには、どのようなことを?

秋山 ですのでバッティング練習中の捕球が重要になるんです。ただ、ビジターチームは練習時間が短くなっていますから。ということもあって、[stadium]西武プリンスドーム[/stadium]で難しい状況を作っておいて、ビジターでは普通の守備位置捕球から入る。これをやっておくといざというときに対応しやすくなるんです。

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[page_break:「試せる時間がない」中でチャレンジする方法]

「試せる時間がない」中でチャレンジする方法


秋山 翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)

――走塁についてはいかがでしょうか?50メートル走5秒8と素のスピードが素晴らしい秋山選手は、スピードをどのように野球の部分に落とし込もうとされているのですか?

秋山 まず自分がどのくらいのスピードでできるか。これで自信を付けて相手や状況が入ってくるようにしたい。このキャンプでは盗塁練習もあるので自分で「これだ」というものをつかんでいきたいと思っています。

――高校球児にとってもベンチからのサインが出ての走塁はともかく「盗塁の決断」は難しい判断だと思います。

秋山 僕自身も高校・大学時代は盗塁を真剣に考えたことはありませんでした。ただ、プロでは公式戦が140試合以上、ポストシーズンとかを合わせたら170試合以上ある中で、盗塁が勝敗にかかる重みは全然違ってきます。

 アマチュア時代は練習試合を通じて、試せる時間があるんですよ。シーズンが短いので。逆にそれが練習計画の部分にかかってくるんですが。これに対して、プロはシーズンが始まってしまえば試す時間はほとんどなくなってくる。「対・投手」が必要な練習は特にそうです。バッティング練習は打撃投手の方が投げて下さればできることですが、走塁練習は投手のけん制などが加わらないとできないこと。

――走塁練習を実戦で使えるものにする難しさは様々なカテゴリーにも言えることですね。

秋山 走塁は実戦にならないとできないことが多い。今、考えて野球をやらせて頂く立場になったからこそ、難しさを感じています。守備や打撃は時に想像を絶するボールもありますが、予測ができる。ただ、走塁については投手のけん制やクイックは、事前に映像は見るにしても試合になると一発で見抜かなくてはいけない。さらに味方の打球方向に対して判断が入ります。その瞬間、瞬間で頭がスパスパと切り替わらないといけないですよね。

――この考え方は高校球児にも参考になる話だと思います。

秋山 でも、僕も高校時代は考えていなかったと感じます。「走塁バイブル」のような本も読んでいなったですし。高校のときは漠然と「プロに行きたい」と思っていて、与えれられた環境の中で自分を磨こうとしていました。そこから八戸大学に行って、斎藤 佑樹(早大→北海道日本ハム)や同級生に力のある選手がいて、全国への視野が広がって、プロに入って情報や探求心が入るようになってきた。そんな感じです。

――では、秋山選手から高校球児へアドバイスを送るとしたら

秋山 高校野球は組織としてやることが1つのテーマだと思いますが、その中で個人として任された時間をいかに使うか。それが大事だと思います。特に冬の時期は「いやな顔をしてやるのも1本、プラスに変えてやるのも1本」と思って自分もやっていたので、前向きに、自分の身になることを信じてやってほしいですね。

――最後に2015年、チームとしてと個人としての目標を

秋山 チームとしては優勝しかないですね。そしてチームが優勝した時、自分と照らし合わせて納得できるように。
最初に言った「フルイニング出場」ができれば、貢献した想いと充実感が多少残ると思うので、心から喜べる優勝にしたいですね。

――貴重なお話の数々、ありがとうございました。

秋山 こちらこそ、ありがとうございました!

 自らが今、抱える課題も全く隠すことなく、特に外野手にとってためになることを次々と披露してくれた秋山選手。球児の皆さんも秋山選手の言うように「前向きで、自分の身になることを信じて」ぜひ、日々の練習に取り組んでほしい。強くて優しい秋山 翔吾選手への第一歩が、そこにある。

(インタビュー・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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