Interview

埼玉西武ライオンズ 秋山 翔吾選手【前編】 「打撃好調の秘訣をメカニズムの観点からを探る」

2015.02.26

 レオの頼れるリードオフマンが躍動している。悔しい昨シーズンを踏まえ、「打ち・守り・走る」全てにチャレンジを試みるプロ5年目の秋山 翔吾外野手。4月19日を終えて打率.397と、パ・リーグ1位にランクインしている打撃ばかりでなく、中堅手での守備や先を狙う走塁でも埼玉西武ライオンズを力強くけん引している。

 そんな秋山選手が中堅の域に入ったからこそ、高校球児へのアドバイスも含め、実直をにじみ出して熱く語ったインタビュー。今季好調の秘訣と「野球への想い」は全てここにある。

2015年の挑戦は「フルイニング出場」

秋山 翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)

――埼玉西武ライオンズ・秋山 翔吾選手は2015年・挑戦のテーマを「フルイニング出場」として、4月19日現在・17試合ここまでその公約を達成しています。まずこのテーマを掲げた理由について、まず教えてください。

秋山 翔吾選手(以下、秋山) フルイニング出場はけががあったらできないことですし、結果が残らないとできないことですので、これが一番の目標になります。

――逆にフルイニング出場ができれば、いろいろな結果は得られるだろう、得ないといけないということになりますか?

秋山 チームの状態にもよりますが、やはり結果を出している選手は試合に出ています。そして「フルイニング出場」というものは打つだけでもダメだし、守るだけでも達成できません。ですので、フルイニング出場が僕のテーマになると思っています。

――そのフルイニング出場を達成するために、今取り組んでいることはありますか?

秋山 やることはいっぱいありますし、昨年の成績では(131試合出場・打率.259)ではフルイニング出場はできません。実際、昨シーズンはファームにも落ちて試合に出ることが叶わなかったので、攻撃も守備も走ることも、体力作りも含めて一年間戦うための準備期間と考えています。

軌道を「点からライン」に変えるための操作変更

――その「準備期間」について少し細分化してお話を聞かせてください。まず打撃をどのように伸ばしていきたいですか?

秋山 ホームランや飛距離を出すためにはバットの芯で打たないといけないので、捉える力を付けること。あとはシーズン中に疲れた時や苦しくなったときのために、数を振って体力を付けることを意識しています。あとは打点は打順によって数が変わってきますが、やはり打率3割を出していく、ヒットを積み重ねていくことが野手としての1つの目標ですね。これは毎年言っている目標なんですが、やっていきたいですね。

――「振る」という部分は体力や精神的要素の強化が大きいですが、技術的なアプローチで取り組んでいるテーマはありますか?

秋山 昨年は変化球に対し空振りや捉えきれないことが多かったので、構えの時にグリップの位置を下げて軌道を合わせられるように。「点」ではなく「ライン」で合わせられるようにしようと思っています。これが今までできなかったので、しっかり取り組んでいく。これが技術的テーマかもしれないですね。

――では、今まではわりと「点」で捉える意識が……。

秋山 その通りです。上から捉えにいってバットを振る感じでした。このスイングは真っ直ぐに対しては軌道を取りやすいのですが、変化球になると対応しづらいところが結構ありました。ですので、今年はやらないといけないと感じているんです。
 実際、キャンプ序盤では変化球をフリーバッティングでは打っていなかったんですが、そこから真っすぐをラインで合す形で打っていいます。この形で数を振ってフォームを固めれば、自分のイメージしているものには近づいてくると思っています。

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[page_break:軌道を「点からライン」に変えるための操作変更]

秋山 翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)

――打撃練習も見せて頂きましたが、フォーム的にはしっかりトップを作ってシンプルに振る形ですね。

秋山 そうですね。あまり余計なことはしたくないですし、これまではあまり遊びのある打ち方はしていなかったんです。ですので、余裕を持ちながら打つ方法も試したいんですが、まずはグリップの位置を下げてテイクバックを下げるイメージから始めたいと思っています。そこでどれくらい振ればラインのイメージが出るか。投手と対戦したときには球威やタイミングなどで色々と問題が出てくると思うので、その前にピッチングマシンや打撃投手のボールをしっかり捉えていけるかだと考えています。

――そうなってくるとバットの使い方にも多少変化が生じてくる印象があるのですが。

秋山 そうですね。僕の打ち方はバットのヘッドは利かせたいですけど、リストが立てづらい形になるので……。

――リストが「立ちづらい」理由は?

秋山 リストが弱いんでしょうね。ヘッドが寝やすい振り方になってしまう。ですので、上からバットを落としていた部分でカバーしていたんです。でも、それだけではやはり(3割には)到達しないものがある。となるとヘッドが寝やすい中でどのような打ち方をしたらいいかを考えて、グリップを下げることにしたんです。

――バットの重心などについてはどうですか?

秋山 若干重心は下めにおいて、コンタクトしやすく、振りやすい形状にしています。

――グリップの丸さも特徴的ですね。

秋山 グリップに段差のある形もプロ1年目に使っていたのですが、しっくりこなかったんです。人間の指は全て長さが違って、小指がその中でも特に短い。その小指がグリップにかかった方が自分はしっくりくるので、グリップの丸いタイ・カップ型気味にしています。

――右投左打ちの秋山選手ですが、バットの握り方はどのように?

秋山 右手は最初にしっかり握ってから、少し余裕を持たせる感じですね。

――左手はどうですか?

秋山 今まではがっちり握っていたんですが、今年は少し遊びが出る感じ、ハーフスイングの時にスイングが止められるようにしつつ、スイング時にヘッドが走るイメージを作っています。これは構えを決めた時点で「せっかく変えるのだから、少し冒険してみよう」と思って。元に戻せることもできる形の中でヘッドが走るイメージを持たせるようにしました。

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[page_break:スイング最後の右足首回転を支えるもの]

スイング最後の右足首回転を支えるもの

秋山 翔吾選手(埼玉西武ライオンズ)

――秋山選手のスイングでもう1つ特徴的なのが最後に右足首を回転させて身体を押し込む点です。

秋山 自分ではしっかり腰を回転させて、打球方向に強く打てればいいと思っています。外角のボールはコースによって対応が難しいところもありますが、基本的には最後まで振り切ること。バットもそれに見合った形状にしていますから、スイングも見合ったものにしないといけないと考えています。

――足首の回転が強い打球を生んでいるように見えるのですが……。

秋山 よく皆さんからは「蹴れている」と表現して頂いています。中村(剛也)さん2015年インタビューもそうですが、力強いバッターは最後まで蹴れて腰が回転して、強い打球が飛ばせていると思います。そうすると上体の力も抜けるし、遊びも生まれて対応力も生まれてくると思っています。自分では言われるまで気づいていなかったのですが、そう考えると、意識していることがバッティングに出ているということなんですかね?

――秋山選手のバッティング練習では、それが最初に目に付いた部分です。

秋山 そうですか?じゃあ、いい方向に進んでいるかもしれないですね。まだ、映像を撮影して見る時期ではないので、自分としてはやっている意識は持っていたんですが、バランスのいい回り方をしている分にはいいと思います。ありがとうございます(笑)。

――いえいえ(笑)。ただ、あの足首回転があるということは、守備の部分含めスパイクの部分でも相当気を遣われているところがあると思います。

秋山 確かに蹴りやすくしていますし、刃も他にない形状にしています。逆に蹴り切らなくても力が伝わるように、蹴ったときにはさらにパワーを引き出してもらえるようにしてあります。もちろん、守備や走塁でもスタートやストップがしやすいように、土を噛んだときに色々な方向へ対応できるよう作ってあります。

――このスパイクを履き始めた時期と、それによる効果はどうですか?

秋山 試合で使い始めたのは昨年からですね。他のスパイクを履いていないので比較はできませんが、方向転換にかかる負担が軽減されることで、自分の行きたい方向へ瞬時に力が伝わると思っています。

 今季、打撃好調の要因は昨年の不振から始まった。そこで秋山選手がどのように打撃面に工夫を凝らしていったかを感じ取っていただけたと思う。後編では、秋山選手のもう1つのウリである守備・走塁にも迫っていく。

(インタビュー・寺下 友徳

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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