横浜DeNAベイスターズ・下園 辰哉 外野手「来るチャンスを逃さないためには」
NPB・いわゆる日本プロ野球の世界は究極的「弱肉強食」の世界である。結果を残した者のみが生き残り名誉を得る一方、結果を残せない者はその立場だけでなく、少年時代から続けてきた野球を奪われることにもなりかねない。
だからこそ彼らは挑戦を続け、常に高みを目指し続ける。そして、1998年の日本一再来を目指す横浜DeNAベイスターズにも、高みを目指し続ける男が。ここ数年は選手会長として名実ともにチームを支える存在として存在感を示す下園 辰哉。宮崎日大高校から九州国際大を経てプロ9年目を迎える外野手は、2015年・さらなる高みを目指す。
「集中力を作る」読みと素直なバットの出し方
下園 辰哉選手(横浜DeNAベイスターズ)
――「代打の切り札」でファンから支持を集める下園選手ですが、自分にとって、1打席で結果を求められる「代打」に必要なこととはなんでしょうか?
下園 辰哉選手(以下「下園」) 相手を研究することです。配球がわかればどの方向に狙えばいいかわかるし、それが確立すれば自信を持って打席に入れるようになります。
――「試合の流れ」を読むことも必要ですか?
下園 そうですね。流れがわかれば試合のどこで代打が出るかもわかりますし。僕の場合であれば、セントラル・リーグなので出番は同点か、チームが負けている場面。打順も8番か投手のところになるので、自然と準備ができてきます。
――そしてバットスイングはバッティング練習や試合を見ても極めてシンプルです。
下園 あまり太いグリップは好きでないので、バットのグリップは細めにして、無駄な動きをしないことは心がけています。
――バッティング練習では、少しグリップを空けてからスイングする場面もありました
下園 あれはバスターの練習ですけど、素直にバットを出すことも意識しています。
――このようなスイングはいつぐらいにマスターしたのですか?
下園 宮崎日大高3年の時くらいには自然とマスターしていました。
「左vs左」を苦にしない「投手への目線取り」
――下園選手といえば、左打者にもかかわらず左投手を苦にしないことでも定評があります。「左vs左」を苦にしないミート方法はあるのですか?
下園 僕の中では「左が来たから」という意識はないんです。ミートも普通にしています。ただ、左投手は身体の方から投球が入ってくるので、右目でなく両目で視野を確保するようにしています。
――その目線取りをするようになったきっかけはなんですか?
下園 実は僕も横浜ベイスターズ(当時)入団当初はやっぱり左vs左が打てなかったんです。ただ、そんなある日に先輩が「両目で視野を捉える」話をしていたのを盗み聞きして。それを心がけるようになってから、左投手も苦にしなくなりました。
正確な送球の秘訣は「急がないこと」
下園 辰哉選手(横浜DeNAベイスターズ)
――外野守備の話もさせてください。下園選手が守備やグラブの部分でこだわっている部分はありますか?
下園 グラブは持ち替えがしやすいので深い方が好きですが、守備の部分ではあまりこだわりはないですね。
――ただ、練習や試合を見ていると、下園選手はキャッチボールから全ての送球が正確です。
下園 そうですか?それははじめて言われましたが……。
――いや、体重移動やバランスもしっかりしていると思います。
下園 僕も2007年の入団当初は周りの凄い選手たち(金城 龍彦<現:読売ジャイアンツ>、内川 聖一<現:福岡ソフトバンクホークス>(2012年インタビュー【前編】【後編】・2014年インタビュー【前編】【後編】)、佐伯 貴弘<現:中日ドラゴンズ2軍監督>など)に負けないように送球を急ごうとしていたんですけど、急ぐ分バランスが崩れてしまった。そこで、しっかり持ち替えて、タイミングを合わせて、無理して急がず投げるようにしたら、正確な送球がいくようになりました。
――正確な送球の際には、体重移動を支えるスパイクもポイントになると思います。下園選手はどのようなところに気を遣っていますか?
下園 これはバッティングにもつながるのですが、スパイクの刃は力を外に逃がさないかたちにしてあります。身体の内側に力を残すことが走ることや投げる際に大事だと思いますね。
「NEVER SAY NEVER」で横浜に歓喜を
下園 辰哉選手(横浜DeNAベイスターズ)
――ところで今季、横浜DeNAベイスターズではチームスローガンと同時に、ユニフォームの裏側に入る個人スローガンがあります。下園選手は「NEVER SAY NEVER」となっていますが、この言葉を選択した理由は?
下園 今季の目標として「妥協しない」ことを第一に考えて、そこに合う英語を調べてみたら、この言葉を見つけました。
――[stadium]横浜スタジアム[/stadium]の熱い声援にも応えられるように。
下園 まずは一軍に上がって代打でも試合を決める1本を打ち続けて。スタメンの選手が調子がずっといいことはないと思うので、そこで回ってきたスタメンのチャンスを活かせるように心と技術の準備をしっかりしていきたいですす。熱い声援に応えたいですね。
――今回は様々なお話、ありがとうございました!
下園 ありがとうございました!
逆境にあることを認識しつつも、高い目標を持ち、いつ来るかわからないチャンスを逃さない努力を続ける。これは今、レギュラーに手が届かず悔しい思いをしている多くの高校球児たちにも通じることである。ハマの背番号50が体現する「NEVER SAY NEVER」。その表現法を皆さんが少しでも学んでくれれば幸いだ。
(インタビュー・寺下 友徳)