Interview

広島東洋カープ 福井 優也投手 「自分を成長させた済美高、そして大学での経験」

2015.02.19

 2004年の春のセンバツ甲子園では、初出場で初優勝を果たす。夏の大会でも準優勝。大学時代には、リーグ通算11勝3敗の成績を残す福井 優也投手。今回は、福井投手に高校、大学時代の取り組みや考え方、プロ5年目を迎えるシーズンに向けてのオフのトレーニングの内容を中心にお話をお聞きしました。

高校時代、済美高校が全国の舞台で勝てるチームになった要因

福井 優也投手(広島東洋カープ)

 華々しい活躍の裏には、厳しいトレーニングがあってこそだ。

「毎日、授業が終わってすぐにグラウンドに移動して、16時から21時まで練習でした。済美は何の練習をするのにも厳しかったですね。下肢のトレーニングでは、エルゴメーターとか、タイヤを引いてノックなども行っていました。特にキツかったのはノック。夏場でも2時間3時間やっていました」

 想像を絶するトレーニングが、済美高校の活躍を裏付けていた。この練習以外にも、ウエイトトレーニングも行っていた。オフシーズンだけでなく、シーズン中も本格的に取り組んでいたようだ。

 福井投手が甲子園で優勝した時、済美高校は創部3年目であった。そんな彼らが、全国の舞台で勝てるチームになれた要因を聞いてみた。

「(上甲)監督ですね。監督の手腕といいますか。練習では厳しいですけど、試合では選手を信じてくれるというか。監督は、選手をその気にさせるのが上手いんです」
済美高校を常勝チームにのしあげたのは、上甲監督と選手との信頼関係からだったようだ。

 春のセンバツ大会は優勝し、夏の大会では準優勝。世間は、済美高校の春夏連覇を期待していただろう。福井投手は、あの夏の大会の決勝戦をもう1度やり直したいと思うのか。

「あそこで勝って(甲子園春夏連覇して)いたら、今の僕が無かったかもしれないんで、負けて良かったのかなと思う。まあ、天狗になっていたと思いますよ(笑)」

 さらに甲子園での成績を振り返る。
「夏は防御率が良くなかった。センバツは(内容が)良かったですね。松坂(大輔)さん以来の2試合連続完封勝利をしたり。済美は打撃のチームだったので、それで優勝させてもたったと思います。僕も打ちましたけどね!」

 高校時代を振り返って、福井投手は高校野球をこう考える。
「高校時代には、無駄な練習が必要というか。何に必要なのかと思いながらやっていた練習も多かったですが、今はそれも何かに繋がっていたのかなと思います。高校生は理不尽な練習をやってこそだと思います。3年間と期間が短いんで、技術を教えるといっても教えられるものじゃない。気持ちだったり、精神力だったりが大事かなと思います」

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[page_break:ライバルに刺激を受けて成長した大学時代]

ライバルに刺激を受けて成長した大学時代

福井 優也投手(広島東洋カープ)

 済美高校から早稲田大学に進学した福井投手。大学時代は、斎藤 佑樹投手(早稲田実)や大石 達也投手(福岡大大濠)と同期入学する。果たして、福井投手にとって、ライバルとはどんな存在だったのだろうか。

「プラスしかないですね。大学に入った時、僕は(東京)六大学の開幕戦も投げるんじゃないかって言われたんですけど、結局斎藤が投げて。ジャパンに選ばれる時も、斎藤と大石は選ばれて、僕は選ばれなかったりとか。反骨心はすごくありましたね。みんな仲良いんですけどね。僕は負けている気持ちは無かったのに、ジャパンに選ばれないっていうのが悔しかったですね」

 負けず嫌いの一面を覗かせる。

「元々、負けず嫌いです。最近、諦めることも覚えましたけど。諦めるというかは認めるというんですかね。大学1年の時も、ライバルに負けていないと思ってやっていたので。「負けていない、負けていない」と思ってやるよりも、認めた上で負けたくないと思い始めたくらいから、ちょうど伸び始めました。そこから素直に斎藤と話ができるようになったり、いろいろ聞くようになったりとか、そういうのはありましたね」

 大学時代の成長の秘訣は、相手を認めるということだった。

 決して順風満帆なことばかりではなかった大学時代。苦しい時期には、どのように乗り越えたのだろうか。
「僕がくすぶっている時期にも、周りの人で『見てくれている人は見てくれているから』というのをずっと言ってくれたり、『自分ができることだけはやっておけよ』ということを言ってくれたり。それで我慢できたのはあります」

 福井投手をサポートするのは、人だけではない。用具も福井投手を支える。
「グラブなんですけど、手のひらのところが、NIKEにしかない特殊なもので、『モイストクラッチ』と言うんですが、それがすごく良くて。汗を吸収するんです。手に汗をかくと、普通のグラブは浮いてきたりするんです、指先とかに。そしたら、外して拭いたりするんですけど、このグラブはそれを全然やらなくていいんです」

 アンダーウェアにもこだわりがある。
「今のアンダーウェアは、軽いですね。僕ごわごわするのがダメなんで、ぴっちりするんですけどしすぎないというか。日頃から着ているのですが、NIKEのウェアは本当に良いですね。周りがみんな『カッコ良いね』って言ってくれます」

 デザイン性にもこだわる福井投手だが、自分が着てカッコ良いと思うとテンションが上がり、プレーへの士気が高まるようだ。

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[page_break:プロ5年目に懸ける想い]

プロ5年目に懸ける想い

 プロ野球選手になって5年目を迎える2015年シーズン。今シーズンはどんなことをテーマに、冬はトレーニングを行ってきたのだろうか。

「シーズンを通して、ローテを守って行けるように、ケガをしない体作りから考えてやっていました。専属のトレーナーさんと一緒にやったんで、昨年自分の中で良かった点や課題だった点を振り返り、トレーニング計画を組んでもらいました」

福井 優也投手(広島東洋カープ)

 シーズンを目の前に、キャンプではどのようなことを目標やテーマにしていたのかを聞くと、
「結果を残すこと。結果を残してローテに入ること。それしかまだ考えていません。ケガをしないことは大前提なんですけど。あとは投げていて自分に自信がつくようにというところを意識しています。試合で、いつでも『行け』と言われれば行けるように準備ができる体作りをしています」

 福井投手にとって「トレーニング」とは、どのように考えるのか。

「『自分を高めるもの』でもあり『調整をするためのもの』でもあると思います。キツいことをやる必要もあると思うんですね。キツいと思いながらやっているんですけど、そこで耐える自分も、ピッチングに生きてくると思いますし。楽な時でも、1本の重要性だとかを意識するようにはしてます。できない時もあるんです。本当は我慢しなきゃいけないんですけど、切れたときでもいろいろプラスに考えるようにしています。『全てはピッチングのため』と思っていつもやっています」

 トレーニングにも前向きな姿勢を見せる。

 最後に、甲子園で活躍しプロ野球入りの夢を叶えた福井投手から、高校球児へメッセージをいただいた。

「『プロ野球選手になれる』と思ってやるしかない。僕はなれると思っていました!努力をしたのかと言われると、抜く時は抜いていました。それが良かったのかなと思います。やる時はやる、休む時は休む。目標は高く、今の自分を把握することが大切。自分に何が足りないのかを自分で分かりながら、現状に満足しないこと。『誰にも負けていない』と思いながらやるのは大事かなと思います。それは高校の時から変わっていないですね。誰にも負けているとは思っていないんで。でも、相手を認めることも大事。そこから学べることも、たくさんあると思うので」

 高校、大学と日本一を経験してきた福井投手。広島東洋カープの悲願の日本一に貢献することはできるだろうか。ローテーションを1年間守っていけるための準備をしてきた福井投手の活躍から目が離せない。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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