徳島インディゴソックス・入野 貴大投手&殖栗 正登トレーナー 対談 Vol.3
殖栗 正登トレーナーが考案したトレーニングにより、入野 貴大投手は150キロを出すまでに。
最終回は、あまり触れられていない、長期のシーズンでもパフォーマンスを落とさないトレーニングプログラム、またNPB入りへ向けて入野投手の現在の思いを聞きました。高校球児のみならず、1年通して活躍したいと願う投手も必見の内容です。
「150キロ」後の調整と新たな発見
入野 貴大投手
――最初に150キロが出たのは5月10日の[stadium]マドンナスタジアム[/stadium]での愛媛戦でした。
入野 思ったより早い時期に出ましたね。
殖栗 「出たね!」という感じでしたね。1回出したらポンポン出るようになりましたね。昨年の井川もそうでしたけど。
入野 自分でも力の入れるコツが判ったので、どんどん出せるようになりました。
――そんな入野投手の活躍で前期は優勝。後期は中継ぎや抑え役を務めていた時期もありましたが、後期で150キロを出し続けるために留意したことはありますか?
殖栗 先発と違い、抑えは全試合チーム帯同になるので、そこは気を遣いました。それでも9月になるとやはり疲労から球速が落ち出したので、力を瞬間的に出せるようにメディシンボールのメニューを追加したんです。
入野 僕は7・8月でも試合に関係なく強化トレーニングを入れる日を作ってもらったんです。その中で中継ぎや抑えで投げる場面があっても調子が良かったんです。「俺、トレーニングしても投げられるやん」と。これは新たな発見でしたね。だから、9月の連戦中にトレーニング後に試合に入るようなことがあっても、全くへばることがなかったですね。
――この経験はNPB入団後のアドバンテージにもなりますね。
殖栗 大きいと思います。入野もそうですし、山本 雅士(中日ドラフト8巡目指名)もそうです。厳しいトレーニングをしながらシーズンを闘うことができたことはよかったと思います。
山本選手インタビュー(2014年12月公開)は以下から!
第1回 僕が築き上げた「1人ボトムアップ」
第2回 練習生時代に学んだ「プロフェッショナル」
第3回 練習生から胴上げ投手、NPB入りへ
徳島で得た「NPB仕様」と責任を背負い、東北で輝く
――こうして四国アイランドリーグplus所属7年目で、念願のNPB指名を東北楽天ゴールデンイーグルスから受け、晴れて次のステップに進む入野投手ですが、この一年間の経験を、どのように感じていますか?
入野 貴大投手
入野 僕が経験したトレーニングメニューは、NPBに入ったら当たり前になると思います。NPBに入る前に殖栗さんのメニューを経験できたことは、これからへの自信になりますし、本当によかったと思います。
――逆に殖栗トレーナーが入野投手に思うことは?
殖栗 何よりも、NPBに入ってくれたことが一番嬉しかったですし、年長投手としてチームを引っ張ってくれた投手キャプテンの入野・富永(一)・ブース(2014年インタビュー)、この3人には本当に感謝しているんです。彼らが背中で見せてくれたことで、投手陣の主力が軒並み抜けて開幕前は下馬評が低かったチームが……。
入野 僕も最初は「ヤバい。迷惑かける」と思っていました(笑)
殖栗 5冠(シーズン前期優勝・後期優勝・ソフトバンク杯優勝・総合優勝・独立リーグ日本一)を達成し、入野と山本がリーグ10年目で初の複数NPB本指名選手になれた。これはすごいことだと思います。入野はずば抜けた成績を残したこともすごかったですが、NPBに行く気迫と投手リーダーとしての経験も大きかったと思います。
又吉 克樹(中日ドラゴンズ)ばりの活躍を見せてほしい
――入野選手は、チームとして引っ張る立場でしたが、リーダーとしてどんな思いでチームを引っ張っていきましたか?
入野 昨年までは「誰かについていく」方でしたが、今年投手キャプテンになったことで「みんなのお手本にならないといけない」ことを強く意識しました。
僕は「キャプテンは一番いい選手がやらなければいけない」と思っています。ですから僕は投手の中で一番いい成績を残して、言葉よりも結果や成績を残すことでわかってもらいたかった。今年成績がついてきて東北楽天からドラフト指名を受けたことで、その部分では投手の後輩たちにいい影響を与えられたとは思っています。
殖栗 正登トレーナー
殖栗 「25歳・26歳でもNPBに行けるんだ」ということを示したことも大きかったです。
人間は20歳から22歳までのハイパフォーマンス期を超えると体力は伸びない傾向にある。野球であればそれ以降は戦術や技術を学ぶことで、27歳前後にピークを迎えることが多いのですが、入野は25歳でさらに体力を上げ、フィジカルを上げ、球速を上げてNPBに進む。
これは独立リーグにいるこの年齢の選手たちに対しても「まだまだトレーニングを頑張れば俺たちでもやれる」と希望を与えたと思います。
そして望むことはただ1つ。又吉 克樹(香川オリーブガイナーズ~中日ドラゴンズ2013年ドラフト2位・昨季67試合登板9勝1敗2セーブ81回3分の1を投げ104奪三振・防御率2.21)(2013年インタビュー【前編】【後編】)ばりに、一軍で7・8回を任される投手になって、144試合コンディションをキープしてほしい。願わくば新人王を狙ってほしい。
僕としても入野には前期はメニューの指示をしましたが、後期からはNPBでの自主トレーニングも見据えてポイント・意識すべきことだけを言っていたので、これを少しでも来年以降活かしてくれれば幸いです。
あとは愛媛でも徳島でも7年間の間、色々な方に支えてもらったと思うので、元気な顔を映像で見せてほしいですね。
――では、それを受けて入野投手。今後の意気込みをお願いします。
入野 僕はこの徳島での一年が、今までの7年間の中で一番伸びた要因は、練習内容を変えたからだと思っています。僕自身はもっともっと伸びると思っているので、この練習方法は来年以降も続けていきたいですし、もし迷ったときには今年練習したことを思い出して、東北楽天では「絶対的エース」を目指してやっていきたいと思います。
――最後に。入野投手にとって殖栗トレーナーとは?
入野 僕は「○○とは?」と言うのは得意じゃないんですけど……。今年成長できたのは殖栗さんの力もあると思っていますし、感謝しています。
殖栗 僕はずっと厳しいことを言ってきたんですけど、こう言われると涙が出そうです。僕もいい一年でした。チームのみんなに感謝しています。
――今回はお二人とも、ありがとうございました!
殖栗・入野 ありがとうございました!
普段は想いを内に秘め、マウンドですべてを出すことを頑ななまでに貫いてきた入野 貴大。実は四国アイランドリーグplusでの7年間で野球のことをこんなにしゃべったのははじめてといってよい。それができるようになった彼の引き出しにも筆者は成長を感じた。
様々な人たちと出会い、積み重ね、そして今年、その関連性をつなぐ方法を知る殖栗トレーナーと出会い受け入れて取り組んだことで、ついにつかんだ「NPB」。来年以降もその想いを忘れず、東北の地で精進に励めば、きっと入野 貴大はもっと、もっと高みに昇ることができるはずだ。
(インタビュー・寺下 友徳)