Interview

中日ドラゴンズ 小笠原 道大選手【前編】 「フルスイングを築き上げた土台」

2014.12.17

 代名詞の“フルスイング”を武器に、昨季も勝負強い打撃をみせた中日ドラゴンズの小笠原 道大選手。現役2位の通算打率をマークしつつ、通算本塁打も378本(いずれも14年シーズン終了時点)と、高い次元での確実性と長打力を併せ持つ。これまで首位打者2回、本塁打王1回、打点王1回など、数々のタイトルを獲得したほか、2011年には大打者の証しである通算2000本安打を達成した。

 ただ、そんな小笠原選手も、高校時代は非力で、1本もホームランを打てなかったという。では、どうやって現在の地位を築くまでに至ったのか?今回は、小笠原選手にトレーニングに関するお話しと、あの“フルスイング”の秘密など、打撃に関するお話しも伺いました!

これまでやってきた全てのことが土台になっている

――小笠原選手は暁星国際高時代、現在は木更津総合高で監督をされている五島 卓道監督のもとでプレーされていました。千葉西リトルシニアに在籍されていた中学時代同様、高校でも複数のポジションを経験されたとお聞きしていますが。

小笠原道大選手(中日ドラゴンズ)

小笠原 道大選手(以下「小笠原」) そうでしたね。中学では内野も外野もといくつかのポジションをやって、高校に入ってから二塁に落ち着いたのですが、2年夏の大会前にいきなり捕手にコンバートされまして。大会では背番号「2」を付けていました。

――その2年夏は千葉県大会で準優勝されましたね。

小笠原 ただ、守っていたのはセカンドだったんです。決勝戦の時、少しだけマスクを被りましたが、捕手として試合に出るようになったのは、この大会の後からです。

――高校時代はどんな選手を目指していたのですか?

小笠原 こうなりたい、というハッキリしたビジョンはなかったですね。ですが、上手くなりたいと思ってましたし、ホームランも打ちたかったし、率も残したかった。向上心を持って日々の練習に取り組んでいたのは確かだと思います。

――高校時代から筋力トレーニングはされていたのですか?

小笠原 自分の知識が少なかったので、ベンチプレスをしたり、スクワットをしたりと、初歩的なことしかやってなかったですね。それで目に見える筋肉だけを鍛えていたような気がします。

――当時はどんな体型をされていたのですか?(現在は178センチ84キロ)

小笠原 体重は70キロなかったと思います。身長も高校に入った時は165センチくらいしかなくて、在学中に10センチくらい伸びました。

――高校時代の経験で、現在の小笠原選手のベースになっているものはありますか?

小笠原 自分なりに考えてやっていたということでしょうか。守備のポジショニングも、監督のアドバイスもあって、自分なりに考え、バッターを見ながら、判断してました。それで失敗しても、五島監督から叱られることはなかったですね。

 あと、これも中学生の頃からの継続で、片手打ちや早打ちでのティー打撃もしてましたね。片手打ちは今のように右手・左手両方やるのではなく、右手だけだったのですが、こうしたことの積み重ねで、バットをしっかり振れるようになったのかもしれません。“これが現在のベースになっている”と言い切れるものはありませんが、継続してやってきたこと全てが、土台になっていると思います。

【1月特集】変身!パワー系球児

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野球に必要な筋肉は野球の動きに合った筋肉

小笠原道大選手(中日ドラゴンズ)

――意外にも高校時代の通算本塁打は0本です。長打力は社会人(NTT関東、98年限りで解散)に入ってからついてきたのですか?

小笠原 僕らの頃は社会人も金属バットでした(社会人野球は79年~01年まで、国際大会に対応するため金属バットを使用)。ある程度、体が出来てきて、それで金属だったので、自然と打球が飛ぶようになったのでは。高校時代とは違って、専門家からトレーニング指導を受けてましたからね。

 でも、ウエイトトレーニングが全てかというとそうではなく、社会人になって、練習量も走る量も増えましたし、そういう中で長打力もアップしていったのだと思います。“これ”というのはなく、全てのバランスでそうなったと言えるでしょう。そもそもウエイトをしただけでは、ボディビルダーになってしまいますからね。プレーに必要な筋力が強くないと…

 ですから、ウエイトした後にスイングをするなどして、野球の動きにつなげるようにしてました。もっとも、プロでそのまま通じたかと言うとそうではなく、まだまだ足りないところがありました。金属に頼っていた部分もあったと思うし…ただ、基本線は変わっていないですね。

――プロに入ってから木製バットになりましたが、すぐに対応できましたか?

小笠原 はじめのうちは“結果を出さなければいけない” “アピールしたい”という気持ちが力みにつながっていたところもあって、なかなか内野後ろの芝生の切れ目までも飛びませんでした。それで、木製に対応するために、やれることは全てやりました。しっかりバットを振り込みましたし、走ったし、体幹も強化しました。

 その結果、木製でもサク越えを打てるようになりました。感覚と動きが一致してきたのと、振り込むことで体が木製に馴染んできたのでしょう。つまるところ、ずっと継続してきたことが、木製の打撃にもつながったんだと思いますね。

【1月特集】変身!パワー系球児

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[page_break:木製バットに対応するための取り組み方とは?]

木製バットに対応するための取り組み方とは?

――高校から大学、あるいは社会人に進む選手の中には、なかなか木製バットに対応できない選手が少なくないようです。そういう選手にアドバイスをいただけますか?

小笠原 僕は中学の時は竹バットで打ってましてね。金属はどうしても消耗しやすいので、そうそう買えなかったのもありまして。竹バットは折れにくく、長く使えるのですが、きちんと芯でとらえないと手が痛い。いや、芯で打っても痛い(笑)。ですから、普段の練習は竹バットで打つといいのでは。

 金属より飛ばない分、木製になってもスムーズに対応できるでしょう。もっともこれは、軸と言いますか、基盤がしっかりしているのが大前提になります。当然ですが、走り込んで下半身を鍛えたり、体幹を強くすることも並行してやっていかなければなりません。

小笠原道大選手(中日ドラゴンズ)

――突飛な質問になりますが、もし小笠原選手が経験や知識は今のままで高校生に戻ったら、どんな取り組みをされますか?

小笠原 どうでしょうね。やはりしっかりバットを振り込むのと、走り込みをするでしょうか。ウエイトもやりますが、筋肉を付け過ぎてしまうと、成長を妨げてしまうところもあるので、その点は気をつけると思います。それと筋肉をつけるのなら、やはり野球の動きに合った筋肉、硬い筋肉ではなく、関節の可動域が使える、しなやかな筋肉をつけるようにする。そのためにも、投げるために必要な筋肉もウエイトではなく、遠投をすることで培うようにすると思います。

――強い体を作るためには食事も大切でしょうか?

小笠原 やはり食べた方がいいでしょうね。それもバランス良く。サプリメントには頼らないでほしいですね。朝から晩まで運動すると、食事だけでは摂取できないものもあるようなので、サプリメントも必要だとは思いますが、サプリメントは、ご飯、味噌汁、野菜、肉、魚をきちんと取った上での補助食品という位置付けかと。いろいろな選手を見てきましたが、しっかり食べる選手は体が強いです。

 前編ではフルスイングが出来る身体作りについて答えていただきました。そのために日頃の食事、素振りなどの地道なトレーニングが重要になってきます。後編では、小笠原選手が考えるフルスイングの意味について答えていただきました。お楽しみに!

(インタビュー・上原 伸一

【続きを読む】中日ドラゴンズ 小笠原道大選手【後編】 「フルスイングの本当の意味とは?」

【1月特集】変身!パワー系球児

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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