北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之投手【後編】 「フォークを覚え、飛躍のきっかけを掴む」
前編では、高校時代のエピソードを振り返った。ここからはプロ入り後の話が中心。1年目、ファームでは10試合に登板して、1勝も出来ず、大きくプロの壁を思い知らされた上沢投手。そこからどうやって立ち上がって、飛躍のきっかけを掴んだのだろうか。
【上沢 直之選手インタビューバックナンバー】
第89回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手
第240回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手【前編】
体を進化させて臨むも結果が出なかった2年目
北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手
プロ入り1年目、上沢投手は「プロのカベを思い知らされた」という。
「高校時代は通用していたコースに投げても、通用していたボールを投げても、打たれてしまうんです。はじめは、たまたまかと思ってたんですが(苦笑)、そうではなく必然だったんです。特に打たれたのがストレートですね。コースが甘くなくても打たれましたから」
その原因が、体の強さが足りないことにあると悟った上沢投手は、走り込みとウエイトで体を強化する。特に腹筋を徹底的に鍛えたというが、高校時代は、ウエイトをやったことはなかった。
「まだ身長が伸びていたこともあり、持丸監督から『今やらなくても上でやれば十分に間に合う』と言われていたんです」。そのため「ウエイトに慣れるまではかなりきつかった」そうだが「成長期が終わってからウエイトを始めたのは、僕にとっては正解だったと思います」
プロ仕様の体になった上沢投手は2年目、2軍でローテーション入りを果たす。上沢投手は、「体も鍛えましたし、ある程度やれると思ってました」
だが、結果は思い描いたものには遠かった。
「実戦の機会が増えた中、どうすれば抑えられるかわかってきたんですが、まだまだ抑え切れない試合が多かったのです。意気込んでいただけに、2年目の方が悔しかったですね」
この2年目、上沢投手は代役ではあったものの、フレッシュオールスターで先発する。
二番手の予定が、予告先発の森 雄大(東北楽天)にアクシデントがあり、急きょ先発になったのだ。重圧を感じてもおかしくないところだが、「自分は運がいいと思いました」
こうした前向きさもプロで生き残っていくために必要な部分なのかもしれない。
【上沢 直之選手インタビューバックナンバー】
第89回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手
第240回 北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手【前編】
フォークを覚えたことが3年目での飛躍につながる
3年目の昨年、上沢投手は初めて1軍でキャンプをスタートさせる。そして、新しい変化球の習得に挑む。
北海道日本ハムファイターズ 上沢 直之選手
「プロを2年経験して、ここという場面で三振を奪えないと、勝てる投手にはなれないと痛感したからです。右左関係なく三振が取れるボールが必要だと。それで、ヘッドコーチの阿井 英二郎さん(元つくば秀英、川越東監督)の勧めもあり、フォークを投げる練習を始めたのです。僕には落ちる球がなかったというのもありました」
フォークを覚えたことで、投球に幅が出来た上沢投手は、一軍初登板・初先発のチャンスをつかむと、見事勝利投手に。昨シーズンは8つの勝ち星を積み重ねた。上沢投手は3年目の飛躍について「フォークを覚えたことに尽きるでしょう」とキッパリ。ただ「8勝は、年初めに設定した目標を大きく上回りましたが、負けも同じ数だったですし、成績が良かったという気持ちは全くない」という。
「特に後半戦ですね。なかなか調子が上がらず、同じフォームで投げられませんでした。スタミナ不足だったと思います。1年間ローテーションを守るには、フィジカル面をキープしつつ、パフォーマンスの波を作らないことが大切だと学びました」
夏場くらいには、疲れが取れないためか、夜中に1度起きてしまうことが多かったそうだ。
3年目の経験を踏まえ、このオフ上沢投手は「とにかく体を鍛えている」という。
「スピードもアップさせたいですね。それと、僕は調子が悪い時は、下半身が安定せず、顔が突っ込んでしまうのですが、そういう時を極力減らし、1年間同じフォームで投げられる体力をつけたいと思っています」
とは言うものの、冬場の練習は上沢投手でも「正直、なかなかモチベーションが上がらない時もあります」
「高校生もそうでしょう。ですが、やらなければ必ず自分に跳ね返ってきます。高校生も目先の練習をツライとか思わないで、その先にある大きな目標を思い描きながら、トレーニングに励んでほしいですね。高校時代を振り返ると、もう少し自分で考えて練習すれば良かった。そんな思いもあります」
上沢投手は昨シーズン終了後、サムライジャパンの21Uに選出され、第1回21Uワールドカップに出場。2試合に先発登板し、2次ラウンドの韓国戦では7回を無失点に。チームの準優勝に貢献するとともに、大会のベストナイン(先発部門)に選ばれた。この国際経験も来るシーズンの大きな糧になるだろう。インタビューの最後に今年の目標を、力強く披露してもらった。
「二桁勝利と貯金を作ることです。もう、そういう立場だと思います。そのためにも1年間しっかりローテを守って、規定投球回数に到達するつもりです」
そう力強く語った上沢投手の今シーズンの活躍がとても楽しみです。
前回登場時の写真を見ると、まだ少年という感じで、あどけなさが残っていた上沢投手。3年を経て、目の前に現れた上沢投手は、別人のように、すっかりプロ選手としての風格が漂っていました。
また、お話しを伺った中で、印象深かったのは、何より、専大松戸の持丸監督との出会いです。名将からの教えを受け、真っ直ぐに育っていった上沢投手。もちろん、まだ野球を本格的に始めて丸5年しか経っていないということを考えると、今後の成長が実に楽しみな投手です。
昨シーズンは、後半戦でスタミナ不足だったと気付いた上沢投手。夏場には疲れが取れず、夜中に起きてしまうこともあったと語っていましたが、プロアスリートも多く愛用している寝具「Air(東京西川)」に変えたり、コンディション作りを自ら見直す中で、そういった悩みは改善していったと答える場面も。
これから、まだ体を作り上げていく投手なだけに、日頃から、コンディショニングへの意識はとても高いようでした。
また、2月からキャンプが始まりますが、さらなる活躍を楽しみにしています!
(インタビュー・上原 伸一)