Interview

東京ヤクルトスワローズ 石川 雅規投手「大きい人に負けたくないという気持ちが一番の原動力」

2014.11.27

 東京ヤクルトの石川 雅規選手。2001年にドラフト自由枠でプロ入りし、1年目から12勝を挙げ、新人王を獲得。2年目以降も二桁勝利を続け、実働13年で、二桁勝利は10回、さらに規定投球回の達成は12回と、先発投手として一流の実績を残し続けた石川 雅規選手から、今回はケガに強くなる秘訣を教えていただきました。

ケガに強い身体作り、ケガをしにくい投球フォームを追求した高校時代

――先発投手としてこれほど実績を残している石川投手に高校時代を振り返っていただきたいのですが、周りの選手と比べると体は丈夫な方でしたか?

石川 雅規選手(以下「石川」) 小さい時から大きなケガをしたことはないですね。体が小さい分、練習についていくのはしんどかったので、身体を強くしたい気持ちは常にありました。

――高校野球は中学と比べて非常にハードなスケジュールをこなすようになります。その中で、石川さんがケガに強くなるために、取り組んでいたことを教えてください。

石川 当時はケガをしない体作りという意識は全くなく、ただ体を強くして、ベンチ入りだったり、エースになりたいという思いが強かったですね。
そういった部分で、他の選手に負けない身体作りをしていました。僕の時は年間通して長距離、短距離問わず走っていました。雪が降っても、長靴を履いて走ったりしていました。

 また、技術の習得については、プロ野球選手が話している内容や実際のフォームを見て参考にしました。僕は体が小さく、ボールも遅かったですが、当時からプロ野球の投手でも、ストレートがあまり速くなくても、活躍している選手がたくさんいたので、そのような投手になりたいと思っていました。
また、工藤 公康さん(2009年インタビュー【前編】【後編山本 昌さんは、テレビで投球フォームを見ながら、身体の使い方を真似たり、参考にしていましたね。

東京ヤクルトスワローズ 石川 雅規投手

――高校時代は、連投する機会も多かったと思います。短い登板間隔で、ベストコンディションで臨むためにどんな工夫をされていましたか?

石川 高校の時は、連投を想定して、日頃の投球練習では量を意識して投げることで、体に染み込ませていました。量をたくさん投げるには、肩、肘に負担が少なく、バランスの良いフォームで投げる必要がありますが、それは投げ込みながら覚えていきました。それを意識するだけで、考えながら投げることができますよね。ただ、力一杯に投げるだけでは、疲れますし、負担も大きいです。

 負担が小さいフォームは100球投げた後でもボールが生きている感じがするんです。ケガを恐れて練習量を少なくするのは、ケガの予防にはなりますけど、ケガに強い体を作るのは難しいと思います。ケガをしない投球フォーム作りは意識しながらやっていたと思います。それが、力を入れなくても、キレの良いスピンが効いたボールを投げることにもつながります。

[page_break:今の基礎を作った大学時代]

今の基礎を作った大学時代

――高校を卒業して、青山学院大に進学後は、週1~2回の登板を2か月続けるために、どんな調整をしていきましたか?

石川 大学野球は本当に連投が多かったです。そういう意味でも、投球練習、ランニングの量も高校時代と比べれば桁違いでした。

ハードな練習についていくために、僕はしっかりと食べることと休息を意識していました。大学時代の練習量は今でも思い出したくないですが、でもそこでケガに強い体が出来たと思いますし、今があると思います。

――実際の量としてはどのくらいでしょうか?

東京ヤクルトスワローズ 石川 雅規投手

石川 キャンプでは、1日500球投げることもありました。500球を軽く投げるのではなく、下半身をうまく使うことを意識しながら投げることで、肩、肘にかかる負担も少なくなると考えていました。

 体重移動、下半身を意識して、腕は勝手に振られる感覚で投げると、力みのないフォームで投げることができました。そうすることによって、球速も上がり、さらに変化球のキレも増しました。そういったフォームを身につけられた大学時代に、僕は大きく成長したと思います。

 またランニングは、ただ走るのではなく、秒数を決めてやっていましたね。目標秒数で走れないと、1本にカウントされないなど、本当に追い込んでやっていました。
長距離、中距離、短距離といろいろやりましたが、練習後は、しっかりと寝ることを意識して、休養をとる時間は作りました。

――また、大学時代にテクニカル面で磨いてきたものは、どんなところですか?

石川 空振り三振を奪う以外にもアウトの取り方はあることを学びました。大事にしていたのは真っ直ぐのコントロールです。真っ直ぐを両サイドに自在に投げ込むことで、変化球も生きて、投球が成り立つと思います。あと困ったときはアウトローといわれますが、これは本当で、カウントを整えられますし、助けられた覚えも何度もあります。アウトローの制球力は大事だと感じましたね。

[page_break:故障の経験が、怪我を予防する意識を高めた]

故障の経験が、怪我を予防する意識を高めた

――プロ入りしてからは、1年目から12勝を挙げ、178イニングを投げましたが、1年間ローテーション守るためにどんな取り組みをして、未然にケガを防いできたのでしょうか。

東京ヤクルトスワローズ 石川 雅規投手

石川 僕は、大学4年春の優勝がかかったシーズンで肘を痛めてからは、プロ入りするまで一度も投げず、ずっとリハビリをしていたんです。その時感じたことは、ケガをしたあとは、自分に何が出来るかと考えるようになりました。

 たとえば、肘のここが張っているなと感じたら、この部位をトレーニングしようとか、そういう意識も高まってきました。ただ、半年間投げられないままプロに入り、肘の不安はあった中で、とにかくプロ入り後は必死にやっていました。1年目は、気付いたら12勝していたという感じでした。

――石川選手が今でも、ケガの予兆を感じることはありますでしょうか。

石川 プロ野球選手で、身体の全てが健康な人はいないです。皆さん、どこかしら、痛みであったり、不安を抱えているものです。ただ、痛みというのは、本人にしか分からないことがあります。だから本当に危ないと感じた時に自分から信号を出せるようには意識をしています。

僕は『無事是名馬』という言葉が一番好きで、元気だからこそ練習できると思っています。

―― 日頃からどんなケアをされているのでしょうか?

石川 僕は、肩は痛くならないのですが、肘の不安があって、治療は針、注射もします。ただ、まずはキャッチボールで状態を日々確認しています。シーズン中の練習の場合、練習7割、ケア3割でメニューを組んでいます。練習をして、不安が出るような体だったら、試合では間違いなくケガをします。しっかりと練習が出来る体作りをするべきだと思います。

―― プロの先発投手として長く続けるために大切にしていることを教えてください。

石川  プロの先発投手の仕事は、自分が絶好調ではない時にも、チームの勝利を導くことだと思っています。長期離脱が前提条件で、先発での続けての失敗は2回までと決めています。そのためには調子の波を小さくすることを大事にしています。波を小さくするためにも、コンディション管理は自分ができることをすべてやることが大事だと思います。

――また、これからキャンプも始まりますが、今シーズンに向けてはどんなモチベーションでオフシーズンのトレーニングに取り組まれるのでしょうか?

石川 来年に対しての自分自身への期待です。来年の自分はもっとできる、もっと成績を残せる期待をもって取り組んでいます。僕は練習メニューの考案も任されるので、自分で考えて練習が出来るのは楽しいんですが、12年、13年と二桁勝利を逃し、さらにチームは去年、今年で連続最下位。その責任は感じていますし、今は、やらなければならないという気持ちしかありません。

――最後に石川選手がプロ野球選手として、大切にしていることを教えてください。

石川  僕の場合、大きい人に負けたくないという気持ちです。ずっと身体が小さいことにコンプレックスを持っていました。だから、その気持ちが一番の原動力でもあります。

 また、これまで一緒にプレーしてきた仲間も、途中で野球をあきらめてしまう人もたくさんいました。だけど、僕には、やめるという勇気がなかった。そんな勇気があるならば、常に頑張れば良いと思っています。僕も、これまでしんどい思いはしましたし、逃げ出したいと思うことはありましたが、辞める勇気までは持てなかったです。もっと野球が上手くなれると思いながらやってきました。だから、これからも、そういう気持ちを持って、野球を続けていきたいなと思っています。

(インタビュー・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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