目次

[1] 捕手豊作年となった第96回選手権大会
[2] 聖地で輝いた投手たち
[3] 眠っていた才能を引き出した甲子園での熱戦

捕手豊作年となった第96回選手権大会

優勝し歓喜する大阪桐蔭ナイン 写真提供:共同通信

 先日幕を下ろした第96回選手権大会を、個人に焦点を当てて振り返ってみたい。

 安樂 智大済美)・髙橋 光成前橋育英)・小島 和哉浦和学院)など注目選手が予選で敗退し、「主役不在の夏」と言われていた第96回選手権大会。しかし、一方で今年の夏も甲子園で輝いた逸材たちがいたので紹介しよう。1回戦17試合の中で目立ったのは野手である。とくに捕手は強肩が集まり、攻守交代に合間に行われるイニング間の二塁スローイングを見るのが楽しかった。どんな捕手がいたのか見ていこう。


試合日名前高校名学年投打身長体重
8/11守屋 元気春日部共栄3年右右174/74
岡田 耕太敦賀気比3年右右173/80
8/12堀内 謙伍静岡2年右左175/80
内藤 大貴大垣日大3年右左173/71
8/13柘植 世那健大高崎2年右右175/73
太田 光広陵3年右右177/72
8/14清水 優心九州国際大付3年右右185/88
8/15吉田 高彰智辯学園3年右右180/78
横井 佑弥大阪桐蔭3年右右174/74

 このうち、イニング間の二塁送球で1.8秒台を計測したのは守屋、岡田、清水、吉田の5人。
さらに実戦(二盗を阻止するスローイング、離塁の大きい走者けん制するスローイング)で2秒未満を計測したのは内藤の1.88秒(藤代戦の3回表)、太田の1.95秒(三重戦・(試合レポート)の4回裏、二塁けん制で)の2人もいた。プロでも実戦での2秒切りは難しいので、「強肩揃い」という表現に誇張はない。

 彼らの多くは中心打者でもある。守屋、内藤は3番、岡田、堀内、太田、清水は4番、柘植は5番をまかされている。この打順で、たとえば岡田は5打数3安打2打点を挙げている。第5打席の2点タイムリーは、1ボール2ストライクからの変化球に対してヒザをクッションにしてタイミングを取り、左手のリードでレフト線へ運んだものだ。パワーとともに高い技術を併せ持たないとこういう打ち方はできない。

特徴的な攻撃を見せた敦賀気比、健大高崎、三重

 捕手以外では敦賀気比の上位打線が驚異的な破壊力を見せた。とくに目立ったのが好球必打の姿勢。
1回裏の攻撃では4番岡田の二塁打が1ボールからの2球目、5番峯の2ランホームランが2ボールからの3球目、3回裏の7番平沼 翔太のタイムリー二塁打は初球ストレート、5回裏の1番篠原 涼の2ランホームランも初球ストレートと徹底している。技術云々を言う前に、積極的に打っていく姿勢を高く評価したい。

峯 健太郎(敦賀気比)

 大会3日目に登場した健大高崎も見事な攻撃を見せた(試合レポート)。
2回までに3点先行される苦しい立ち上がりだったが、3回に2点、4回に1点、5回に2点と、短い間に得点を集中させた。2回の攻撃では1番平山 敦規、2番星野 雄亮が二盗を成功させ、「健大は走る」というイメージを岩国バッテリーの頭にしっかりと刷り込み、その後の攻撃を有利に運んだ。

 やはり3日目の三重広陵戦(試合レポート)は見事な走り合いが演じられた。
盗塁は両校合わせて1つしかないが、ここで言う走り合いとは打者走者の各塁到達。俊足の目安「一塁到達4.3秒未満」が、三重が5人8回、広陵が4人4回記録し、一塁へ5秒以上かけて走る不心得者も両校とも0人と、今大会で最も見応えのある走り合いとなった。

 このうち1人で3回、4.3秒未満を計測したのが三重の1番長野 勇斗。第2打席では1-1からのストレートを強烈に叩いてライト前に弾き返し、この振り抜いた打球で一塁到達は4.20秒という速さだった。健大高崎脇本 直人と並んで今大会を代表する外野手と言っていいだろう。

第96回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

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