Interview

植田 海選手(近江高等学校)

2014.10.16

 今年、甲子園で一気に評判を高めた植田 海選手。小柄ながら走・攻・守の三拍子揃ったプレースタイルはスカウトから高く評価されている。植田選手から今までのエピソード、自身がウリとする走塁、守備にちて、そしてドラフト目前に迫った心境を語ってくれた。

力を全て出し切れた最初で最後の甲子園

植田 海選手(近江高校)

――滋賀県甲賀市で生まれ育った植田選手。野球をはじめた時期はいつですか?

植田 海(以下「植田」) 小2のときに「甲南第二スポーツ少年団」という地元の軟式少年野球チームに入団しました。

――小学校のときのポジションはどこだったのですか?

植田 ピッチャーとショートですね。

――中学時代は硬式クラブチームに所属していたんですよね。

植田 そうです。硬式チームでやりたいという思いがあったので、学校の部活ではなく「湖南ビックボーイズ」というチームでプレーしていました。

――中学時代のポジションはショートですか?

植田 中学以降はショート一本です。

――高校は山梨・日本航空高校に進学しますが、一身上の都合で1年生の2月に自主退学。2年生の4月に近江高校に入学します。

植田 野球ができなくなるかもしれないという不安があったので、近江高校で野球を続けられることになったときは本当に嬉しかったです。転向した選手は一年間、公式戦に出られないことはわかっていましたが、野球ができる喜びを思えば、小さなことでした。公式戦に出られるようになる3年春に絶対にレギュラーを獲るんだという気持ちで、日々取り組みました。

――そして3年の春、レギュラーを獲得し、夏の甲子園大会にも出場。植田選手自身にとっては、最初で最後の甲子園のチャンスを見事にものにしました。

植田 何が何でも3年の夏に甲子園にいきたいと思っていたので、よかったです。あれだけの大観衆の前でプレーできたことは財産。緊張はありましたが、楽しさのほうがはるかに勝っていました。甲子園で自分の力を全部出し切れた感覚がありました。

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[page_break:高校時代に盗塁を刺されたのは一度だけ]

高校時代に盗塁を刺されたのは一度だけ

植田 海選手(近江高校)

――走攻守3拍子揃ったプレースタイルが光る植田選手。強いて挙げるなら、3つのうち、どの分野が一番自信ありますか?

植田 走ですね。

――50メートル走のタイムは?

植田 今年の春に記録した5秒8がベストです。

――幼少の頃から、足は速かったのですか?

植田 小学生の頃のタイムは覚えていませんが、中2の時点で6秒4、中3で6秒フラットでした。速くなるために特別なにかをしたというわけではないのですが、子どもの頃から周りと比べたら常に足は速かったです。

――走り出してから、トップスピードに入るのがものすごく速いですよね。

植田 それはよく言われます。50メートル走よりも30メートル走のほうが走力をより発揮できるみたいです。

――多賀監督は、高校生活で植田選手が盗塁を試みてアウトになったシーンを見た記憶がないとおっしゃっていました。

植田 練習試合で一度だけ刺されたことがあります(苦笑)。

――それでも一度だけ! 相手投手がクイックモーションを仕掛けてこようが、果敢に走っていく?

植田 はい。スタートさえ遅れなければ、セーフになれるという感覚はありました。

――植田選手に盗塁のサインはなく、基本的にいつでも走っていい「ノーサイン」の扱いだったそうですね。

植田 ノーサインでした。でもバッターのことを考えると極力、2,3球目までには走ろうと思っていました。

――リードはそんなに大きくとるタイプではない?

植田 基本リードは5歩くらい。そんなに大きくないです。相手から見ると「走る気ないのかな?」と思われるようなリードだと思います。

――二塁へ向かう意識と帰塁の意識はどちらが強いですか?

植田 二塁へ向かう意識がほぼ100パーセントを占めますね。帰塁への意識はないといっていいです。

――帰塁への意識がなくても、きちんと帰塁出来るようにあえてリードをあまり大きくとらないという発想ですか?

植田 そうです。二塁へ向かう気持ちを100にしつつ、戻れる距離となると、やはり5歩くらいのリードになりますね。

――植田選手はスライディングも巧いですよね。スピードが落ちずに足がベースへすっと入っていく。スライディングの際に意識しているのはどういったことですか?

植田 なるべく地面との接地面積を少なくしたいので、お尻は地面につけず、ヒザだけで滑るイメージですね。そのほうがスピードが落ちにくいので。

――なるほど。いろいろ考えているんですねぇ…。

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[page_break:植田 海が目指すショート像とは?]

植田 海が目指すショート像とは?

植田 海選手(近江高校)

――植田選手はショートの守備にも定評があります。一歩目のスタートも実に速いですが、構える際にどういった意識を持っているのか、興味があります。

植田 がちっと構えず、ゆるく、楽に構えることを意識してますね。そしてバットとボールが当たる瞬間に一歩前に出るイメージを持つようにしています。

――捕球から送球にかけて意識していることはどういったことですか?

植田 まずはしっかり捕ること。ボールがグラブに入るところをしっかりと見る意識ですね。中学の頃までは捕ってから素早く投げることを意識しすぎるあまり、捕球ミスが多く、雑と言われることが多かったのですが、高校に入ってからは、投げることを焦らず、まずはしっかり捕る意識を大事にしようとコーチに言われて。そこから捕球の際のイージーミスはかなり減りました。

――とはいえ、捕ってから投げるまでの動作がものすごく速いですよね?

植田 結局しっかりとグラブの芯で捕ることがスムースなボールの持ち替えにもつながり、結果素早く投げられることに気づきました。

――スナップスローも実に巧い。捕ってから、「えいっ!」と投げるのではなく、流れの中ですっと、力みなく投げているように見えます。

植田 左肩を、投げる目標方向に向けるという意識はなく、捕った場所で握り替えたボールをすっと耳にもってくるイメージですね。自分の中では7割から8割の力で投げてます。投げる方向を見てから投げるというよりは、投げつつ、目標を見るという意識でやるとスローイングが速くなる気がします。

――スローイングも正確。ボールが高く浮くようなシーンがほとんどなく、低い送球を意識している印象を受けます。

植田 低く投げることは強く意識しています。その意識があれば、少しくらい浮いてもファーストが捕球できる範囲に収まってくれるので。

――既にプロレベルに達しているという声も聞かれる植田選手の守備ですが、ご自身の中で、なにか課題を感じることはありますか?

植田 三遊間深くに飛んだ打球を捕球した後の一塁送球ですね。やはり一塁までの距離があるため、どうしても力んでしまい、送球のコントロールがぶれてしまう。三遊間からでも8割くらいの力加減で送球できるようになれればいいのですが、なかなか難しい。今後の課題ですね。

――プロ野球選手で好きなショートはいますか?

植田 小学生の頃からずっと阪神の鳥谷 敬選手(2011年インタビュー・2014年インタビュー【前編】【後編】)です。[stadium]甲子園球場[/stadium]にもよく観に行きました。とにかく堅実でエラーが少ない。あんなショートになれたらなと思います。

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[page_break:打席での意識はあくまでも「センターより右」]

打席での意識はあくまでも「センターより右」

植田 海選手(近江高校)

――広角にヒットを打てるバッティングも光りますが、打つ方向のイメージを描いて打席に入っているのでしょうか?

植田 僕の場合、意識は常にセンターから右ですね。だいたい右中間のあたり。その意識で投球に向かっていった結果、レフト方向にもボールが飛ぶという感じです。

――レフト方向に飛んだ打球はあくまでも結果という感覚ですか?

植田 そうです。高校通算本塁打は10本ですが、すべてセンターから右を狙っていった結果、レフトのフェンスを越えたものです。中学の頃まではレフトへ引っ張ってやろうという意識がありましたが、サードゴロが増えたりして、あまりいい結果に結びつかなかった。やはりセンターから右を狙っていくことによって体の開きが抑えられるんでしょうね。その意識で打った結果、フェアゾーンのどこかに飛んでヒットになればいいと思っています。

――狙い球は絞っていくタイプですか?

植田 追い込まれるまでは絞っていきます。コースよりも球種で絞っていくことが多いです。

――狙った球種が打てるゾーンにきたらどんどん振っていく。

植田 そうです。そして追い込まれたらストレートに照準を絞りながら変化球に対応していくスタイルに切り替えます。

――現在、構えた時点で左足を三塁方向へひくオープンスタンスを採用していますが、このフォームは昔からですか?

植田 オープンスタンスは小学生の頃からですね。そこからすり足のようにスクエアに踏み出していくので、最初からスクエアに構えればいいと思われるかもしれませんが、オープンスタンスで構えたほうが投球が見やすい感覚があるし、軸足にも体重が乗せやすい。今後もこの打ち方でいこうと思っています。

――プロというレベルで鑑みた場合、打撃における課題はどのあたりにあると思いますか?

植田 スピードが全然違うでしょうから、スイングスピードをもっと上げていく必要はありそうですね。

――近江高校は筋力トレーニングにもかなり力を入れていますが、その成果はプレーする上でも感じますか?

植田 感じますね。ベンチプレスは高校に入った頃は60キロが精一杯でしたが、今は90キロが楽にあげられるようになりました。ダッシュを中心とした走り込みも徹底的に行われるので、打球の飛距離、走力を含め、体全体にパワーと強さが備わった感覚があります。

――金属バットから木製バットになるわけですが、そのあたりの不安はないですか?

植田 夏の甲子園が終わってからはずっと木製バットで練習をおこなっており、すっかり慣れました。大きな不安はないです。

――最後に今後の抱負をお願いします。

植田 もしもプロの世界に入れたならば、一軍にしっかり定着し、安定した成績を残していける選手になりたいです。自分はホームランバッターではないのはわかっています。ヒットも打て、フォアボールも選べて、出塁率の高く、盗塁もできる。そしてガッチリ守れる。そんな3拍子揃った選手を目指していきます。

――頑張ってください! 今日はありがとうございました!

(インタビュー・服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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