Interview

読売ジャイアンツ 杉内 俊哉投手(鹿児島実高出身)

2014.07.23

 巨人の背番号18を背負う杉内 俊哉

 杉内の特徴といえば、余計な力が入らない投球フォームから繰り出すキレ味鋭い直球と、打者の手元で大きく沈む変化球。この2つのコンビネーションで、2005年には最多勝、さらに過去3度、最多奪三振など数々のタイトルを獲得し、現在通算132勝をマーク。
そんな杉内投手に、今回はフォームの作り方や球種の話など、ピッチングに関するアドバイスをたっぷりと伺った。

高校時代

読売ジャイアンツ 杉内 俊哉投手

――1998年、夏の甲子園にも出場した杉内投手ですが、高校時代の試合で記憶に残っている試合といえば何でしょうか?

杉内 俊哉(以下「杉内」)最後の夏、鹿児島大会決勝の鹿児島川内・木佐貫 洋(現・北海道日本ハムファイターズ)との戦いです。今まで勝っていなくて、ずっと負けているチームだったので、最後に対戦をして勝てたことは印象に残っています。木佐貫は、高校時代から良いライバルでした。

――高校時代の練習で、印象に残っている練習はありますか?

杉内 特別なことではなくて、昔も今も、どこでも行われている練習だと思うんですけど、たとえば、ランニングとか、ポール間を走ったりとか、タイヤを引いたりなど。そういう練習は、今でも本当に大事だったと思っていますし、だからこそ高校球児たちも真剣に取り組んで欲しいメニューだなと思っています。

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[page_break:高校時代から大きく変わったフォーム]

高校時代から大きく変わったフォーム

読売ジャイアンツ 杉内 俊哉投手

――杉内投手は、高校時代のフォームと、今のフォームは、大きく変わっていますが、どんなことをポイントにしてフォームを作り上げていったのでしょうか?

杉内 高校の時は身体をひねって投げていました。当時は、カーブを重点に置いて投げていたので、当時のフォームではとても良く曲がりました。より鋭く曲げたいという意識が強かったのですが、身体をひねりすぎると、やはり肩への負担が大きかったんです。
ケガをしてからは、肩に負担がかからないフォームにして、真っ直ぐで勝負が出来るような組み立てで、試合が作れるようなフォームにしました。

――ケガというのは、社会人野球の三菱重工長崎時代でしょうか?

杉内 高校の時からきつかったですね。入社して1年はプレーができなくて、期待されて入って、1年目から投げたいという思いがあったんですけど。
投げられなかったのは悔しかったですね。チームは、僕が入社1年目の時に都市対抗準優勝したんですけど、その姿をスタンドから見ていて、『投げたい!』という思いを強く持ちました。

――それからフォームについても見直されていったのでしょうか?

杉内 そうですね。1試合だけならば高校時代のフォームで投げることも出来ましたが、1年間のリーグ戦で、高校時代のフォームでは絶対にもたないと感じました。どうすれば、肩に負担が掛らないかを考えて、今のフォームになりました。

――連投しても肩を壊さないフォームというのは、どんな視点を持って、見出していけば良いのでしょうか?

杉内 多くの高校生がそうだと思うんですけど、やっぱりピッチャーはスピードを求めてしまう傾向があるんですよね。それだと体全体が力んでしまって、負担も大きくなってしまうんです。
自分はプロ入りして5年目でやっと、力んで投げるのも、リラックスして投げた状態で投げるのも、球速はそれほど変わりないんだなと思えるようになりました。

 
でも、高校や社会人の時にそれには気付かないですよね。150キロを投げたいとか、今までのスピード記録を更新したいとか、そういう気持ちが先行してしまうんです。もちろんスピードを求めることも大事ですよ。でも、それで余計なところに力が入ってしまう可能性が高いと思うんです。

――現在の杉内投手は脱力したフォームで投げていますが、どうしたら、あのような力の入り過ぎないフォームで投げることが出来るのでしょうか?

杉内 確かに、力を抜いた状態で100%の球を投げることは難しいですよね。自分も、そういうフォームが出来上がったのは2005年ぐらいで、やっと感覚が掴めました。それまではすごく力を入れて投げていましたね。

 
力を抜く方法は、人それぞれだと思うんですけど、自分の場合、投げる前に、『俺、やる気ない、やる気ない』と、自分に思わせてから一気に力を入れて、投げています。
なるべくゼロから100にしたいので、マウンドでも、『やる気ない』とブツブツ、ブツブツつぶやいていますよ。逆に『三振取りたい、抑えたい!』と思ってしまうと力が入ってしまうんです。

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[page_break:カーブ・スライダーのコツを探る]

カーブ・スライダーのコツを探る

読売ジャイアンツ 杉内 俊哉投手

――続いて、球種について伺っていきたいのですが、まずはスライダーを投げるコツを教えてください。

杉内 真っ直ぐに近いイメージですね。スライダーは2種類使い分けていて、速いスライダーだったり、カーブのような曲がりの大きいスライダーの2種類で使い分けて投げています。

――カーブをマスターしたのは中学生になってからですか?

杉内 そうですね。小学校の時からゴムボールで投げたりして、カーブの練習はしていました。ゴムボールは結構曲がるので、そのイメージを自分なりに掴んで、中学校に入ってから、硬式だったんですが、そのイメージで投げて習得しました。

――カーブを投げるポイントを教えてもらってもよろしいでしょうか?

杉内 カーブと言っても人それぞれのカーブがあって、抜けるカーブだったり、速いカーブだったりですが、僕は速いカーブでした。握りは真っ直ぐでしたね。高校時代は最も自信を持っていた球種でした。

――カーブはどうやって磨いていったのですか?

杉内 遠投の中で、鍛えていきました。50メートルぐらいの距離から曲がりを意識して投げていたと思います。社会人のときは自分の目の前にネットをおいてカーブを投げる練習もやっていました。

――変化球を投げるにはイメージが大事なのですね。

杉内 イメージはとても大事ですね。カーブ、スライダーは投げるイメージがしっかりと頭に残っています。こうすれば、こう曲がるというイメージが、しっかりと頭にありますね。

――では、ストレートで、杉内投手が一番大事にしていることは何でしょうか?

杉内 もちろん空振りが取れる真っ直ぐを追求しています。真ん中に投げてもファールが取れるキレのあるストレートも良いですね。
練習法としては、30メートルの距離でのキャッチボールを大事にしています。自分の目線で追って、真っ直ぐに進むような球筋で投げる練習を中学校のときからやっています。

――コントロールに関しては、安定したリリースするために心掛けていることはありますか?

杉内 そこへ投げたいという強い意志をもって投げることが大事です。キャッチボールにしても、漠然とキャッチボールをしても身に付かないです。
自分もそこまでコントロールが良いわけではありませんが、良い投手を見ているとキャッチボールを大事にしているので、あそこへ投げたいと思って、自分も練習するようにしていますね。ブルペンでコントロールを身に付けようと思ってもなかなかコントロールできるものではありませんので。

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[page_break:杉内選手の用具のこだわり]

杉内選手の用具のこだわり

――続いて、用具のこだわりについてお伺いします。杉内投手の出身の鹿児島実高の久保監督は、道具の手入れにとても厳しい方と伺いました。杉内投手も用具は大事にしている印象がありますが、スパイクは年間で何足使われていますか?

杉内 一足だけです。長く使っていれば、自分の足がそのスパイクに合ってくるんです。すぐ新しいものにすると、革の硬さとかもあって、またそのスパイクを馴染ませないといけないので、なるべく壊れるまでは使い続けようと思っています。

――今はどんなスパイクを履いているのでしょうか?

杉内 今は革底から樹脂底のスパイクに変えて、履いています。革だと雨が降ったときに水分を吸収して、重くなるのが嫌でした。今のスパイクは水分を吸収しないので、いいですね。

――杉内選手がスパイクで一番こだわっていることは何でしょうか?

杉内 僕の場合は、軽さや、グリップ力などですね。あとは、踏み込んだ時に足がぶれないスパイクです。今、履いているスパイクは、ぶれにくく、投球動作においても大きな役割を果たしていると思います。スパイク選びでは、踏み込んだ時にしっかりと地面を掴むことができるかを、重要視していますね。

――ありがとうございます。では、最後に、全国の高校球児たちにメッセージをお願いします。

杉内 チームによって目指す目標、方針はそれぞれだと思うんですけど、大会では、味方を信用して、自分1人では絶対に戦えないので、チームメイトを信頼して、後悔しない戦いをしてほしいと思っています。

 杉内投手、ありがとうございました!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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