岐阜・中京高時代は高校通算60本塁打。亜細亜大でもリーグ通算15本塁打を積み重ねた松田 宣浩。2006年の福岡ソフトバンクホークス入団後も、豪快なフルスイングと50メートル走6秒1の快速で、ヤフオクドームの大観衆を沸かせてきた。
しかし、その「豪快さ」を支える彼の「緻密さ」については今まであまり語られていない。昨年はWBC日本代表も経験。脂の乗り切った31歳が、高校野球にも活かせるグラウンド内外での「緻密さ」の作り方について語ってくれた。
「100%振る」から「ミート」を入れ、作り上げた松田流フルスイング

福岡ソフトバンクホークス 松田 宣浩選手
――まず、松田選手といえば「フルスイング」が印象的ですが、自分で長打力を出すために中京高校時代はどんな練習をしていたのですか?
松田 宣浩選手(以下「松田」) 高校時代は形どうこうよりも、フリーバッティングで遠くに飛ばすことだけを考えてバットを振っていました。
――まず「振っていく」ことに取り組んだわけですね?
松田 そうです。1球1球を無駄にせずに振っていました。そこから大学、プロと進むにつれて、より正確性を求められていると感じるようになっていきました。でも、高校時代は「まずバッターとして遠くに飛ばしたい」。そのことをずっとやっていました。
――ということは高校時代については「量」を重要視したと。
松田 はい。量も振りましたし、練習もよくしていたイメージがあります。
――そんな3年間を経て、大学は練習量の多さでは定評のある亜細亜大学に進むわけですが、そこで気付いたこととは具体的にどんなことですか?
松田 「対応力」です。高校から1つ上に来て、相手投手のストレートやスライダーなどの変化球は当然、高校時代に対戦した投手と比べて精度も上がる。キレもある。ストライクコース・ボールコースの出し入れもしてくる。そこに対応するために、少しフォームがシンプルになってきました。
――「シンプル」を、もう少し噛み砕いて頂くと、どんなイメージになるのでしょう?
松田 高校時代は来たボールに対して100%の力でスイングをしていました。それが大学に入ると「力を抜いて打つ」。技術的に言うと振り幅を小さくしたりしたんです。
100%の力で振るとバットにボールが当たった時は飛んでいくんですが、当たらない確率も大きくなる。そこを80%で振って、残りの20%をミートに徹していく。そんな感覚に少しずつ変わってきました。ちなみにプロに入った今は「60%で振って40%でミートする」感覚で、前さばきで打ち返すようになっています。
――そうなると、構え方も変わってきますよね?
松田 (バットを手に実演しながら)高校時代はバットのヘッドを入れて、先も立てている感じ。後ろを大きくして遠くへ飛ばそうと思っていました。ただ、プロではその構えや振り方だと投手の変化球に対応できない。だからヘッドを倒してシンプルに打つことを心がけています。
――その振り方だと、ツーシームやカットボールといった手元で変化するボールにも対応できるわけですね?
松田 高校時代の構えではそういったボールは打てません。高校時代に対戦する投手は真っ直ぐとカーブが基本。ましてや金属バットなので大きな構えでも打てましたが、それではプロの世界では通用しませんね。