Interview

福岡ソフトバンクホークス 松田 宣浩選手(岐阜・中京高出身)

2014.06.27

 岐阜・中京高時代は高校通算60本塁打。亜細亜大でもリーグ通算15本塁打を積み重ねた松田 宣浩。2006年の福岡ソフトバンクホークス入団後も、豪快なフルスイングと50メートル走6秒1の快速で、[stadium]ヤフオクドーム[/stadium]の大観衆を沸かせてきた。

 しかし、その「豪快さ」を支える彼の「緻密さ」については今まであまり語られていない。昨年はWBC日本代表も経験。脂の乗り切った31歳が、高校野球にも活かせるグラウンド内外での「緻密さ」の作り方について語ってくれた。

「100%振る」から「ミート」を入れ、作り上げた松田流フルスイング

福岡ソフトバンクホークス 松田 宣浩選手

――まず、松田選手といえば「フルスイング」が印象的ですが、自分で長打力を出すために中京高校時代はどんな練習をしていたのですか?

松田 宣浩選手(以下「松田」) 高校時代は形どうこうよりも、フリーバッティングで遠くに飛ばすことだけを考えてバットを振っていました。

――まず「振っていく」ことに取り組んだわけですね?

松田 そうです。1球1球を無駄にせずに振っていました。そこから大学、プロと進むにつれて、より正確性を求められていると感じるようになっていきました。でも、高校時代は「まずバッターとして遠くに飛ばしたい」。そのことをずっとやっていました。

――ということは高校時代については「量」を重要視したと。

松田 はい。量も振りましたし、練習もよくしていたイメージがあります。

――そんな3年間を経て、大学は練習量の多さでは定評のある亜細亜大学に進むわけですが、そこで気付いたこととは具体的にどんなことですか?

松田 「対応力」です。高校から1つ上に来て、相手投手のストレートやスライダーなどの変化球は当然、高校時代に対戦した投手と比べて精度も上がる。キレもある。ストライクコース・ボールコースの出し入れもしてくる。そこに対応するために、少しフォームがシンプルになってきました。

――「シンプル」を、もう少し噛み砕いて頂くと、どんなイメージになるのでしょう?

松田 高校時代は来たボールに対して100%の力でスイングをしていました。それが大学に入ると「力を抜いて打つ」。技術的に言うと振り幅を小さくしたりしたんです。
100%の力で振るとバットにボールが当たった時は飛んでいくんですが、当たらない確率も大きくなる。そこを80%で振って、残りの20%をミートに徹していく。そんな感覚に少しずつ変わってきました。ちなみにプロに入った今は「60%で振って40%でミートする」感覚で、前さばきで打ち返すようになっています。

――そうなると、構え方も変わってきますよね?

松田 (バットを手に実演しながら)高校時代はバットのヘッドを入れて、先も立てている感じ。後ろを大きくして遠くへ飛ばそうと思っていました。ただ、プロではその構えや振り方だと投手の変化球に対応できない。だからヘッドを倒してシンプルに打つことを心がけています。

――その振り方だと、ツーシームやカットボールといった手元で変化するボールにも対応できるわけですね?

松田 高校時代の構えではそういったボールは打てません。高校時代に対戦する投手は真っ直ぐとカーブが基本。ましてや金属バットなので大きな構えでも打てましたが、それではプロの世界では通用しませんね。

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[page_break:全力プレーすることで必要な筋力を付けていく]

全力プレーすることで必要な筋力を付けていく

福岡ソフトバンクホークス 松田 宣浩選手

――ただ、高校球児は概してスイングスピードを求めたがります。先ほど松田選手がおっしゃった「遠くに飛ばしたい」にもつながる話だと思うんです。そこで松田選手から高校球児にスイングのアドバイスを与えるとしたら、どんな点に気を付けたらいいですか?

松田 やはりスイングの「量」は必要ですね。もちろんベースの部分での筋力・ウエイトトレーニングは大事ですが、野球選手としてバットを持っている以上、バットを振る筋力はバットを振ることで付けた方がいい。バットを振ることで体全体にスイングの筋力を身に付けてあげる。それをやっていけばスイングは自然とよくなるんじゃないかと思いますね。

――「振ることで自分に必要な筋力を知る」利点もありますね?

松田 そうなんです。バッターなら「振る」筋力。野手・投手ならば「投げる筋力」。ウエイトトレーニングだけをしていても140キロは超えませんし、投手であれば投げる感覚を通じて筋肉に覚えさせることで球速も速くなってくる。プレーすることで筋力を付けることが大事だという点は、野手も投手も同じだと僕は思います。

――現在、松田選手は三塁手でプレーされていますが、そこで必要な筋力はあったりしますか?

松田 打者であれば上半身・下半身・体幹のバランスが大事になりますが、それは野手にも通じる点ですね。

――そしてもう1つ、松田選手の得意分野である「走る」部分ではどうでしょうか?

松田 盗塁への意識は常に持っています。その中で「走る」部分には今でもこだわっていますね。走る量を落としたら絶対に脚は遅くなりますし、その中で全力で走る本数を、少なくてもいいから毎日続けていくことが大事。それを怠るとすぐに脚力は落ちます。ここは高校生にも通じる部分だと思います。

――要するに1日5本でも、3本でもいいからまず全力で走った方がいい。

松田 そうですね。「全力で振る」こと。「全力で走る」こと。「全力で投げる」こともそうです。自分が今持っているうちの「全力」を一日のうち何回か出しておかないと、ダメだと思います。50%の練習を50%の力で2時間やるよりは、100%の力を出すことを短い時間でもいいからやっていった方がいいですね。

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[page_break:効率的・効果的な休養の取り方]

効率的・効果的な休養の取り方

――その一方でこれは見逃されがちなところですが、「休養」も大事な要素ですよね?特にNPBではナイトゲームの翌日にデイゲームなどということもあります。効率的に効果的な休養を取ることが必要になりますが…

松田 まず寝ることです。高校生でも朝早いゲームがあるでしょうから、そこから逆算して寝る時間を確保していく。寝ることができず試合をすることはやはりキツイと思います。
例えば第1試合で朝5時に起きなくてはいけないときは、前夜は21時に寝た方がいい。そこを23時や24時まで起きているようでは難しくなってくる。睡眠だけは取った方がいいと思いますね。

――眠りの「質」も大事な要素ですよね。

松田 ただ高校生については若いから、寝れば眠りの深さや浅さは関係なくいい睡眠は取れるはずです。これが、おじさんになってくると(笑)、いい睡眠を取ろうとしてもそうでない場合もあると聞いているので。
高校生の話に戻ると、寝れば絶対に回復する。僕自身も高校時代はそんな感じだったと思います。時間だけを確保すればいいと思いますよ。

――ちなみに今、松田選手はどんなスタイルで睡眠を取られていますか?

松田 僕自身は東京西川エアーマットレスなどを色々と使いながら睡眠を取っています。昔はそんなことは気にしませんでしたが、この2~3年で、いい枕やマットを使い始めたら、ぐっすり眠れるし、実績も残ってきています。「エアーマットがあると、やっぱりいいなあ」とは思っていますね。

あの感動をもう一度

福岡ソフトバンクホークス 松田 宣浩選手

――松田選手自身もヤフオクドームでの優勝・日本一を経験しているだけに、想いはひとしおだとい思います。

松田 2011年のリーグ優勝・日本一は現在いる選手の半分くらいしか経験していないんですよ。ただ、自分にあのイメージがあるからこそ、「今年も優勝したい」という想いになってきます。

――「いいイメージ」これも大事な要素ですね?

松田 そうですね。悪いイメージを持つと体が動かなくなるし、気持ちの部分でも大きく左右してくる。2011年と照らし合わせていけば、いい方向へ進むこともできると思うので、そこへ向かっていきたいと思います。

――貴重なお話、ありがとうございました!

松田 ありがとうございました!

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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