Interview

駒澤大学 今永 昇太選手(北筑出身)

2014.05.02

今春、東都大学野球リーグで3試合連続完封を成し遂げた駒澤大今永昇太投手。高校時代は練習時間が2時間半しかない進学校でした。その環境からどうやって140キロ左腕へ成長し、そして東都大学野球を代表する投手へ成長したのか、今永投手の取り組み、投球に対する考えを伺いました。

練習時間は僅か2時間半。考える習慣をつけた

北筑高時代の今永昇太選手

――今永 昇太投手は中学時代、軟式野球でしたよね。高校に入って硬式に慣れるために工夫したことを教えてください。

今永 昇太選手(以下「今永」) チーム自体はそんなに強くなくて、北九州の市長杯では最高で4回戦でした。中学の部活を引退してからはずっと受験勉強をしていたので、自分が硬式球を握ったのは高校の野球部に入部してからなんです。多くの人は中学の部活が終わってから硬式の練習をする人が多いと思うんですけど、自分はその時間がなくて、高校に入って、練習を重ねながら慣れていきました。

――北筑を選んだ理由を教えてください。

今永 自宅から自転車で往復15分で行ける近い学校でした。北筑は進学校で、僕はスポーツ推薦でしたが、それでもそれなりの学力がないといけないので、必死に勉強をしました。野球では無名校ですけど、その中でも強豪校を倒せば、学校の名前も知られるので、その思いで高校野球を始めました。

――進学校だと、勉強との両立は大変だったのではないでしょうか?

今永 自分の学校は最終下校が19時半と決まっていました。16時、または16時半からスタートするとなると、練習時間は3時間出来れば良い方で、1時間ちょっとで終わってしまう時もあったので、練習時間が制限されていたのは大変でした。
また週3回の朝テストがありました。そこで合格点をもらわないといけなくて、また金曜が終わると、週末課題を渡されます。テストで赤点を取ったら部活動には参加できないので、高校時代は勉強と練習の両立が一番大変でした。

――北筑の上下関係はどうでしたか?

今永 ガチガチに厳しい上下関係ではなかったですけど、1年生、2年生、3年生という当たり前の上下関係はあって、1年生はグラウンド整備などの雑用をやっていました。

――練習制限がある中で、どうやって今永投手は、投手としてのスキルを高めていったのでしょうか?

今永 高校の環境というのもあるんですけど、自分は他の人のように死ぬほど走ったとか、そんな猛練習をやった経験はありません。何を大事にしたかというと、体幹の強さ、肩甲骨の柔らかさなど投手として大切なモノを見極めて、その大切なモノを磨いていける練習をしていきました。

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[page_break:制限があるからこそ、正しいモノを見つけられる]

制限があるからこそ、正しいモノを見つけられる

――そういうトレーニングはどうやって調べたのでしょうか?

今永 部長さんが体幹トレーニング、股関節のトレーニングなどを調べていろいろ教えてくれて、継続することをやっていました。体幹トレーニングは基本的なモノでしかやっていなくて、腹筋、背筋、あとは一定の姿勢を維持するトレーニングなどを毎日欠かさずやっていました。この時に大事なのはこのトレーニングはどこを鍛えているのかを考えながらやること。目的意識があれば、継続出来ました。

駒沢大学 今永昇太選手(北筑出身)

――今永投手の投球フォームはどうやって作り上げましたか?

今永 投球フォームで気を付けていることは、テイクバックを取ったときは大きく取るのではなく、しっかりと身体に隠して投げることです。そうすると打者は打ちづらいと思います。自分が打席に立っていても、テイクバックが見難い投手は打ちづらいですよね。自分もその経験を活かして、身体に隠して、前を大きくするフォームにしました。

自分が考えるフォームをモノにするために練習をするのですが、フォームを固めるために取り組んだことはビデオを撮ってもらうことです。ビデオで自分の動きを見て修正を重ねながら、一番しっくりくる感覚で、コントロールも、スピードも出るフォームを見つけて、フォームを固めました。

――最後の夏、福岡大会4回戦まで進出しましたがいかがでしたか?

今永 真っ直ぐは良かったですけど、変化球がダメで、最後の夏は直球が打たれてしまいました。速球は140キロに達していましたが、高めに浮いていましたし、高校生はそれを見逃してくれないですよね。

――高校野球3年間を振り返ってどうでしょうか。ここまで今永投手自身、高校3年間で、140キロ台を出すのは想像できたでしょうか?

今永 全く思わなかったですね。高校を選んだ理由も、自宅から近いというものですから。でも北筑の環境は、勉強もしなければならない。練習時間も制限されている環境だからこそ、何かを優先して取り組まなければなりませんし、北筑で学んだ考える習慣というのは今でも活きていると思います。

――高校野球の魅力は何かありますか?

今永 やはり何が起こるか分からないことですよね。9回二死から逆転劇と、見ている側も予測できないことが起こるじゃないですか。

これは自分ではなく、目の前で見た経験なんですけど、楽天でプレーしている小関 翔太捕手がいる東筑紫学園と対戦したことがあって、8回まで2対1でリードをしていたんですが、9回表に逆転2ランを打たれて、2対3で逆転されました。でも、その裏に、僕らのチームが逆転2ランでサヨナラ勝ちをしたんです。
その姿を見て、僕らのような無名校がドラフト候補を擁するチームに勝てることに感動をして、自分も強豪校を倒すような活躍を見せたいと思いました。

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[page_break:テーマをもって取り組んだから階段を上るように成長できた]

テーマをもって取り組んだから階段を上るように成長できた

――駒大進学後、今永投手は1年春からデビューし、その時から最速145キロを計測していました。入学するまでどんな準備を行っていましたか?

今永 特に変わったことはしてはいませんが、現役時代と比べて結構自由に練習ができましたので、グラウンドにいる時は現役の時から続けていた体幹トレーニング、軽いダンベルを持ってインナーマッスルを鍛えるトレーニング、階段ダッシュ、自宅に帰宅してから走り込みなどを繰り返していました。現役が終わってからも練習量は変わらずに取り組んできましたので、その積み重ねで1年春に145キロを投げられたのだと思います。

また大学に入ってからは、午前も午後も練習がありますし、練習時間も長くなりました。制限があった分、やっと思い通りに練習できるようになり、投げ込み、トレーニングを集中してやってきたので、より球が速くなったと思います。

駒沢大学 今永昇太選手(北筑出身)

――1年目は勝ち星なしでしたが、大学2年春では6勝を上げる大活躍でしたね。活躍した要因や、1年目にこんな課題が出たから修正をして取り組んだ、というようなことを教えていただければ幸いです。

今永 1年生の時はリリーフで、ただ先輩捕手のミットに向かって、一生懸命腕を振っていたと思います。その時は力でねじ伏せてやろうという思いで投げていました。相手は格上ですし、力を試すつもりで、しっかりと腕を振って、打たれても次に生かせればと良いと思っていました。

大学2年から先発になったので、リリーフのように力でねじ伏せる投球では通用しないので、打者の力量によって力の入れ加減を変えたり、また昨年に対戦した打者のデータを整理して、苦手なコースを攻めるだけではなく、どういう投球をすれば、相手から嫌がられるのかを追求していきました。勝つごとに階段を1つ1つ登るような感覚で成長できましたし、一戦一戦勝っても、冷静になることができました。

――今永選手は高校時代、変化球が苦手だったと伺いましたが、飛躍の要因として変化球のキレを磨いてきたということもあるのでしょうか?

今永 大学1年までストレートとスライダーのみでした。まず2年になって課題にしたのはスライダーの制球力を高めること、そしてチェンジアップとカーブを覚えようと思いました。
2つの変化球は他の投手から握りを教えてもらったり、動画で変化球の握りを見ながら、自分にフィットする握りを編み出して、練習を繰り返して、実戦でようやくマスターすることができました。

――2年秋は1勝5敗と不調に終わりましたが、この春は3試合連続完封と好調を見せています。秋勝てなかった原因と春にここまで勝てている理由は自分の中ではどう振り返られていますか?

今永 秋に勝てなかったのは、春に6勝をしたから相手にマークされると思いましたし、甘いコースは打たれると思ったので、より厳しいコースへ投げよう、より打者の手が出ないコースへ投げよう、変化球も膝元へ絶対に投げなければならない、と自分を追い込んでいたんです。でもギリギリな所へ投げようとすると腕が振れなくなってしまうんですよね。修正しようとしても、悪循環にはまってしまってなかなか直せなかったです。

秋の失敗から学んだことは回転の良いボールをしっかりと投げ込んで、その上で、ボールを散らせていくこと。自分のベストボールを投げることが出来れば、打たれても凡打になるだろうし、それが自分の投球スタイルだと認識しました。今では3球で2ストライク1ボールにすることを心掛けています。2ストライクは投手にとって優位なカウントですので、そこからいろいろ遊び球が使えますよね。自分が好投出来ているときというのは2ストライク1ボールになる割合がとても多いですので、それが結果として現れていると思います。

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[page_break:調子が悪くても試合に勝てる投手になりたい]

調子が悪くても試合に勝てる投手になりたい

――今永投手といえば、やはりキレのあるストレートだと思うのですが、よりキレのあるストレートを投げるために大切にしていることは何でしょうか?

今永 よくストレートを磨くためにトレーニングしようという人がいますが、あくまでトレーニングは身体の弱い部分を補強するためのものであって、それを活かす技術がなければ意味がないですよね。自分の場合、腕を高い位置に持っていて、ムチのようにしならせて振るイメージでやっています。調子が悪い時は肘が下がった状態で腕を振っているので、それをバロメーターとして、次はしっかりと肘を上げるように意識をする。自分が良いフォームで投げられる確率を少しでも上げていくことが大切です。野球の技術は野球で磨くしかないと思っています。

駒沢大学 今永昇太選手(北筑出身)

――ここまでストレートに拘る理由は何でしょうか?

今永 僕が入学した時に、2人の4年生投手から学んだことが今でも生きています。特に直接教えてもらったわけではありませんが、2人は困ったときに投げられる武器がありました。1人の先輩は2ストライクからカウントを取れる外角スライダー、もう1人の先輩もスライダーなんですけど、横へ滑るキレの良いスライダーがありました。自分の場合、何があるかなと考えた時、やっぱりストレートだと思って磨いていきました。

――ここまで取り組み面についてお話をしてきましたが、今永選手の用具選びについても伺いたいです。野球用具や普段身に付けるアンダーシャツなどで、こだわっている部分はありますか?

今永 そうですね、試合中などのアンダーシャツなどは、今、僕が着ているのは汗をかいたときにだらっと汗をかいても、速乾性がある、少し緩さがあるアンダーシャツを選んで着ています。競泳選手のようなピチピチしたものは嫌なんですよね。速乾性と着やすさということに自分はこだわっています。

――今後はプロ野球を目指していくと思いますが、それに向けて、どんな投手になっていきたいですか?

今永 プロへ行きたいと思いますし、その世界で活躍するためには、調子が悪くても勝てる投手になれるかどうかだと思います。スカウトの皆さんは調子が悪い時にいかに試合を作れるかを見ていると思います。今の自分の課題は調子が悪くても試合が作れて勝てる投手になることです。

――最後に高校3年間、自分の目標、チームの目標を達成するために今からでも準備した方が良いことを教えていただければ幸いです。

今永 人から応援される選手になってほしいと思います。そのためには普段から怠らず、さぼらずに練習すること。その姿勢をチームメイトはみんな見ています。優勝がかかったマウンドになったとき、普段から練習に手を抜く選手では、「あいつじゃ大事なマウンドは託せない」と思われますし、勝負の一瞬の差はそこで出ると思うんです。

見えない力だと思うんですけど、自分はそういうのは信じてやってきました。だまされたと思って、普段から手を抜くことなく、取り組んでほしいと思います。

――今永投手、ありがとうございました。投球理論には奥深いものがあり、思わず唸らされました。今後の活躍を期待しております!

(インタビュー・河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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