智辯学園高等学校 尾田 恭平 投手
智弁学園は4番打者・岡本 和真選手が注目されていますが、エースの尾田 恭平投手も好投手。抜群の制球力、ストレートのキレの良さで勝負する尾田投手からコントロール、キレ、牽制など投手のスキルを高める練習法、選抜へ向けての抱負を語ってもらいました。
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右投げで始まった野球人生
智辯学園 尾田 恭平 投手
――尾田投手が野球を始めたきっかけを教えてください。
尾田 恭平投手（以下「尾田」） 3歳年上の兄が野球をやっていた影響で、小学校に上がると同時に地元の少年軟式野球チーム「曽大根ベースボールクラブ」に入団しました。兄が右利きで、家にあったお下がりのグラブが右利き用だったことや、右利きのほうが守れるポジションが多いという理由で、野球を始めた当初は右投げ左打ちだったんです。
――本来の利き手は左なんですよね？
尾田 そうです。でもやはり生まれつきの利き手じゃないせいか、投げることがあまり思うように上手くならなくて。そこで小2の後半くらいの時期に親とも話し合って、左投げに変更したんです。最初こそ違和感があって、しっくりこなかったのですが、やはり練習するうちにしっくりき始めて、だんだんいいボールがいくようになった。小3になるとピッチャーを任されるようになり、以来、今日までずっとピッチャーです。
――小2で下した決断が投手人生を呼び込んだんですね。その後、中学硬式クラブの「香芝ボーイズ」を経て、智弁学園に入学するわけですが、高校野球の舞台として智弁学園を選んだ理由はなにかあるのですか？
尾田 憧れの存在だった2学年上の青山 大紀さん（現・トヨタ自動車）、中道 勝士さん（現・明治大）がいるチームというのが大きかったです。中道さんはキャッチャーとしてもすごい方でしたし、キャッチングも抜群。自分のボールをぜひとも中道さんに捕ってもらいたいという思いで入学しました。
――尾田投手は、1年夏にベンチ入りを果たし、登板もしているので、その夢は叶ったんですよね？
尾田 叶いました。マウンドで緊張している自分に向かって中道さんの、『どんとこい！ 打たれてもいいから、結果なんか気にせずに思い切り投げてこい！』という言葉で、すごく気持ちが楽になったことをよく覚えています。
――さすが中道先輩ですね。
尾田 ぼくは身長が166センチと小さいですが、中道さんからは『バッターを上から睨み付けるくらいの気持ちで行け！ 常にマウンドで自分を大きく見せろ！』といつも言われていました。この言葉は今でも常に意識しながらマウンドに上がっています。
目指す投手像
2013年秋の大会 平成25年度秋季近畿地区高等学校野球大会 準々決勝（対龍谷大平安）で力投する智辯学園 尾田 恭平 投手
――ピッチングにおいて最も強く意識していることはなんですか？
尾田 小学生の時に投手を始めて以来、一番意識しているのはコントロールです。自分の狙ったところへ投げられれば、打ち取ることもできるし、ボールが特別速くなくても三振だってとれる。小坂監督からも「一番大事なのはとにかくコントロール！」と常々言われています。
――昨秋の公式戦の成績を見ても41回1/3を投げ、与四死球はわずか9。制球力の安定度はピカイチです。コントロールをよくするために効果のあった練習法などはありますか？
尾田 高校に入ってからは、ネットピッチングをする際に、ストライクゾーンの四隅にタオルをくくりつけ、そこを狙って投げる練習をよくしました。
――ネットにくくりつけた4つのタオルをインハイ、インロー、アウトハイ、アウトローに見立てるわけですね。
尾田 そうです。この練習はコーナーを強く意識する上でも効果のあった練習でした。あとは股関節の柔軟性を高めることがコントロールの向上につながるので、股関節のストレッチングは毎日欠かさずやっています。
――印象に残っている指導者からアドバイスなどはありますか？
尾田 小坂監督に『ヒットを打たれてもホームに還さなきゃいいんだぞ』と言われたことがあって、それからは、ピッチングをいい意味で楽に考えられるようになったんです。
連打を食らっても、三塁ベースまで相手の走者が進んだとしても、ホームベースさえ踏ませない限り、点はとられない。少々打たれてもバタバタしない、粘り強い投球ができるピッチャーになりたいと思うきっかけとなったアドバイスでした。
持ち味である「球のキレ」を出すコツとは？
智辯学園 尾田 恭平 投手
――尾田投手のストレートは伸びとキレがすごいですよね。スピードガンの数字以上の威力を見ていて感じます。
尾田 最速は136キロなのですが、そのことはよく言われますね。自分の長所のひとつだと思っています。
――キレを出すためのコツのようなものはなにかあるのでしょうか？
尾田 自分は巨人の杉内 俊哉投手が好きなのですが、杉内投手がよく『ゆったりとした力みのないフォームから、リリースだけに力を入れることが大事。0から100という感覚が理想です』とおっしゃっています。
このイメージは自分も意識しているのですが、余計な力を入れずに、リリースの瞬間にだけ力をこめるとボールの質はよくなる感覚はありますし、バッターを差し込めるようなボールが投げられる割合も増えました。バッターからみても、力みのないゆったりしたフォームからキレのあるボールを投げ込まれることが一番打ちにくいんだと思います。
――奪三振へのこだわりはありますか？
尾田 ありますね。でも、奪った三振の数にこだわるということではなく『三振が欲しいピンチの場面できっちりと三振が取れるピッチャーになりたい』という意味合いです。やはりランナーを三塁に置いた場面などでは三振がほしいですし、フェアグラウンドにはじき返されないことが、一番リスクが少ないアウトのとり方だと思うので。
――なるほど。尾田投手の現在の持ち球はなんですかか？
尾田 ストレート、カーブ、スライダー、フォークです。フォークは去年の春頃にマスターしたのですが、三振が欲しい場面で三振がとれる確率が上がったのはフォークのおかげですね。ピッチングがかなり楽になりました。でも投げる比率からいえば、ストレートの次はやはりスライダー。カーブはゴロを打たせたい場面で投げることが多いです。
――尾田投手はクイックモーションやけん制の技術にも定評があります。クイックモーションはどういったところを意識しているのでしょうか？
尾田 ポイントは軸足側の股関節ですね。ぼくの場合だと左の股関節。ここにカチンと体重をはめこむイメージで投げると、足を高く上げられないことによって生み出せない力を補える。結果、足を上げた時とあまり変わらないボールを速いタイムで投げられるようになりました。
――けん制において尾田投手が意識している点も教えていただけますでしょうか。
尾田 ぼくは左投手なので、右投手の参考にはならないと思いますが、ホームに投げる時もけん制の時も足の上げ方を変えないことですね。あとはランナーをしっかりと見ること。ランナーの目をしっかりと見続けるだけで、走者にすればかなり嫌な気分になるらしいので、そのことは強く意識しています。
――選抜大会がいよいよ開幕します。大会に向けての尾田投手の抱負、意気込みをお聞かせください。
尾田 甲子園で優勝したいです。個人的には球のキレと伸びをさらにアップさせた上で、140キロという数字を甲子園の電光掲示板に点灯させたい。『高校生ナンバーワンサウスポー』と呼ばれる存在になりたいですし、いつの日かプロ野球の世界に進みたい。そのためにも今以上の努力を日々続けていきたいと思います。
尾田投手、技術的なことを細かく丁寧に教えていただきましてありました。同世代の球児たちにも参考になるお話でした。選抜では勝利に導く投球を期待しています！
（インタビュー・服部 健太郎）
