Interview

関西大学入学 久米建夫選手 (大阪桐蔭出身) ※仮文字入れ

2014.03.09

 

森に勝つチャンスは十分あると思っていた

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――久米選手が野球をはじめた時期はいつですか?

久米 建夫選手(以下「久米」) 小2の時に地元の軟式少年野球チーム「熊野ライオンズ」に入団しました。高校に入ってからわかったのですが、同じ市のチームに入っていた森友哉のチームとも対戦してたんですよ。森の家に遊びに行ったときに小学生時代の試合のDVDがあったので、二人で観たのですが、ピッチャーとして森と投げ合ってる映像が映っていてびっくりしました。

――小学生時代はピッチャーだったのですか?

久米 投げない時は、キャッチャーもやってはいましたが、上級生になるとピッチャーをやることのほうが多かったですね。

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――中学に上がると、ボーイズリーグの「和泉ボーイズ」に入団します。

久米 投手として入団したのですが、すぐにキャッチャーにコンバートされました。以来ずっとキャッチャーです。

――中学時代、森選手の存在は知っていたのですか?

久米 知ってました。森は当時から有名でしたし、何度も対戦したことがあったので。

――大阪桐蔭に進学を決めた際、同じ高校に森選手がくることはわかっていたのでしょうか?

久米 ぼくが決めた時には、森はまだ正式には決まってなかったんです。

――「大阪桐蔭に来なくていいぞ~」という気持ちはなかったですか?

久米 中学の時の森は主にピッチャーだったので、ポジションがかぶるから来たら困る、という気持ちは特になかったんです。森が同じ高校にいくと決まった時も、自分の中では森に負ける気はしなかったんです。中学で有名だった選手でも、中学野球を引退してから高校に入学するまでの数か月の期間で、練習不足から力が落ちてしまい、高校では中学時代ほど活躍できない選手も多いので、森もそうなるかもしれない、なんて思ってました。自分は中学野球を引退してからも、日々練習を積んだので、森にだって勝てるチャンスは十分あるんじゃないかと。ところが実際に高校に入学したら、森が学年の中で飛びぬけてましたね。特にバッティング。もう一人だけ、打球の強さも飛距離もずば抜けていた。中学野球引退後に、力が落ちるどころか、中学時代よりも数段アップした状態で高校に入ってきていました。

――その時の心境は?

久米 その時には既に森はキャッチャーでいくことが決まっていましたし、1年生が走らされてばかりの時期に、上級生に混ざって練習も参加していた。レギュラーを獲るのも時間の問題だろうと思いましたし、「森がいる限り、キャッチャーとしてレギュラーを獲るのは厳しいな」という気持ちは、正直芽生えました。でも当時の自分は、毎日の苦しい練習についていくことに必死で…。最初の一年間は、森がどうこうというよりも、日々、練習にくらいついていくことだけを考えていた気がします。

――そんな必死の日々の中、久米選手の中にあった目標とはどのようなものだったのでしょうか?

久米 その当時の目標は、ベンチ入りメンバーとして背番号をもらうことでした。最上級生になった時には絶対にベンチには入ってやるんだと。その一心でしたね。

――最上級生になり、新チームが結成されると、森選手がキャプテン、久米選手が副キャプテンに就任しました。高校入学後、森選手とは仲良かったのですか?

久米 1年生の時はそうでもなかったんですけど、2年生になったあたりから仲良くなり、キャプテンと副キャプテンという関係になったことで、さらに仲が深まりました。

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[page_break聖地で巡ってきた大きなチャンス]

聖地で巡ってきた大きなチャンス

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――新チーム結成後、センバツ出場をかけた秋の公式戦での久米選手の出場機会はわずか1試合。目標だったベンチ入りメンバーに入ることができたとはいえ、森選手が同じポジションにいる関係上、なかなか思うように試合に出れない状況が続いていました。久米選手は打撃にも定評がありましたし、「もしもほかのポジションに移ったらもっと試合に出られるかも…」という気持ちは起こりませんでしたか?

久米 正直、そんな思いもありました。バッティングの調子がいい時なんかは特にそういう思いが湧いてきました。実は一度、西谷(浩一)監督にその思いを伝えたことがあるんです。キャッチャー以外のポジションで勝負してみたいと。

――西谷監督からはなんと言われたのですか?

久米 「おまえはキャッチャーというポジションが一番合ってる。このチームでは森の控えが続くかもしれないけど、今後も続く野球人生のことを考えたら絶対にキャッチャーを続けた方がいい」といった内容のことを言われました。チームのためにも、僕自身のためにもキャッチャーで頑張ることがベストだと思う、と。尊敬する監督にそう言われたらすごく納得できて。それ以来、他のポジションにいきたいななどと思うことは一切なくなりました。

――しかし、試合に出る機会が少ない状況は変わらない。気持ちが切れるようなことはなかったですか?

久米 くさったら負けだと常に自分に言い聞かせてました。試合に出る、出ないといったことでなく、日々、努力し続けることに価値があるんじゃないのかと。森もいつケガをするかわからないですし、突然出番がやってくるかもしれない。出番が訪れた時に自分の力を100パーセント発揮できるよう、日頃から、誰よりも努力しよう。そう自分に誓いながら、日々の練習に取り組んでいました。

――2013年の選抜大会。3回戦の県立岐阜商との試合。前日に森選手が練習中に打球を足に受け、負傷したことで、スタメンマスクの機会が訪れました。

久米 前の日の夜に西谷監督の部屋に呼ばれて、「明日はおまえでいく」と伝えられました。森のケガはチームにとっては痛い出来事でしたが、自分にとってはやはり大きなチャンス。甲子園で実際にプレーしたことはなかったのでやはり緊張はしましたし、「自分が出ることで負けてしまったらどうしよう」という気持ちもありましたが、それ以上に甲子園でマスクをかぶれる嬉しさの方が勝ってましたね。

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――スタメン出場するにあたり、森選手からはどんな言葉をかけられたのですか?

久米 「自分のやれることだけ考えたらいい。甲子園はいい場所やからとことん楽しんで、思い切ってやれ!」と言われましたね。

――実際、試合が始まって、どうでしたか?

久米 あの日はスタンドも超満員だったこともあって、初回はすごく緊張してしまって…。どうなることかと思いましたけど、次第に落ち着いてきて。途中からは「よし、もう大丈夫だ! いける!」と思いました。

――会心のタイムリー二塁打をレフト線に打ち返しましたよね? あの試合、三塁側のスタンドから見ていたのですが、二塁ベース上での嬉しそうな笑顔が印象に残ってます。

久米 あの試合は残念ながら負けてしまったんですけど、個人的にはあの試合でものすごく成長できたと思っています。

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[page_break「神様ってよく見てるなぁ」と思わされた!]

「神様ってよく見ているなぁ」

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――今回、特集のキーワードが「集中力」なんです。久米選手は集中力を生むためにどういったことを心がけていましたか?

久米 高校時代、西谷監督からは「野球以外のことが安定してこないと、野球も安定しない。野球を大事にするということは野球以外のことも大事にすること。野球だけやっててもあかん」と常々言われてきたんです。やはり野球以外にやり残したことがあったり、心配事があったりすると、肝心の野球に集中できない。野球以外の不安要素を全部消すことが、本当の意味で集中できる環境だと思うので、生活面、勉強面、授業態度といったことをすべてをおろそかにしないという意識で、高校時代はチームメート全員で取り組んでいました。

――大舞台で結果を出せる勝負強い選手になるためには、なにが大切だと思われますか?

久米 いろんな選手と一緒にプレーしてきて思うのは、大舞台で結果を出す選手は常日頃から目一杯努力しているということ。いっさい妥協しないし、人が見てようが見てまいが手を抜かない。逆にいくらいいものを持っていても、取り組み方に波のある選手はここぞという大事な試合で本来の力を発揮できず、思うような結果も残らないことが多いなと感じます。「神様ってよく見てるなぁ」と思わされることがよくあります。

――上達のスピードをあげるために大切なことはなんだと感じますか?

久米 やはり与えられた練習をただ漠然とこなしていても、周りと同じスピードでしか上達できないです。それじゃ差がつかないし、チーム内での競争にも勝てない。やはり上達のスピードがはやい人は練習メニューに対しても、常にいろんなことを突き詰めて考えてます。練習の意図はなんなのか? もっと自分に合ういいやり方はないか? といったことを常に考え、悩んだり、もがいたりしながら、人の見ていないところで通常の何倍もの量をこなしている。そういう人が試合に出てる機会が多いなと感じます。

そして大学野球へ

阪神タイガース 鳥谷 敬選手

――大学の練習に参加してまだ日は浅いですが、大学野球の印象はいかがですか?

久米 高校時代に比べると全体練習の時間は短いですし、やらされる練習という感じではないので、個々の意識が試される環境だなと思いました。ある意味、とことん頑張る自由もあるし、頑張らない自由もある環境。でも結果を出して試合に出ている方々は、そんな中、自分を追い込んだ厳しい練習ができているということもわかりました。

――高校野球引退後は森選手と一緒にトレーニングをする機会などはあったのですか?

久米 ずっと森と二人で練習してました。バッティングに関しても森からいいアドバイスをもらったので、高校野球を引退してからの方がバッティングがよくなりました。

――そうなんですか! どんなアドバイスだったのですか?

久米 自分は右打者にとってボールを押し込む役目の右手を使う意識が薄かったんですよ。そこで森から「右手でもっと押し込んでいく意識をもったほうがいい」と言われて。たしかに森のバッティングを見てると、後ろの手(左打者の森の場合は左手)を上手に力強く使ってボールを打ち返している。言われたイメージで打ってみると、打球の質がものすごくよくなったんです。森に言われたことはすべてメモしてあるので、大学に入ってからも見返したいと思っています。

――プロとしてのキャンプがスタートした森選手から連絡が入ったりしますか?

久米 しょっちゅうメールや電話でやりとりしてます。昨日も電話がありました。プロで頑張ってる様子が伝わってきましたね。

――それでは今後の抱負、目標を教えてください。

鳥谷 (最終的に)高校では二番手どまり。「大学では絶対に試合に出たい!」という強い気持ちを持ってずっと練習してきました。今の目標は、春のリーグ戦から試合に出ること。持ち味である、明るさ、元気の良さをアピールし、大きな声をガンガン出していきたいです。将来的にはプロを目指したいですし、その先には高校野球の指導者になりたいという夢もあります。そのためにも大学で是が非でも教員免許を取得して卒業したい。野球を続けながら単位を取得することは簡単ではないかもしれませんが、必死で頑張りたいと思います。

 久米選手ありがとうございました。
 大学でのリーグ戦出場、そして将来のプロと高校野球指導者の夢を叶えられるよう、応援しています。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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