Interview

シアトル・マリナーズ 岩隈 久志 投手

2014.02.05

 シアトル・マリナーズで2年目のシーズンとなった2013年、岩隈 久志投手はメジャー移籍後初の二桁勝利となる14勝を挙げました。防御率2.66はリーグ3位。1イニングあたりの投球数はリーグ1位の14.12と、少ない球数で相手打者を次々と打ち取る投球は、日本のみならずアメリカの野球ファンにも驚きと興奮を与えました。また、開幕から18回連続無四球を記録するコントロールの良さや、23回連続無失点の安定感で、チームの大黒柱として大活躍。そんな実りあるシーズンを過ごした岩隈選手に、MLBで結果を残せた理由や、高校球児がすぐにでも真似したい冬のトレーニングについてお話を伺ってきました。

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オフの体幹トレーニングが2013年の活躍を生んだ

――大活躍の2013年。改めてシーズンを振り返っていかがでしたか?

シアトル・マリナーズ 岩隈久志選手

岩隈 久志投手(以下「岩隈」) すごく充実したシーズンでした。2年目で、自分のポジションを1年間守りたいという気持ちがあって投げた結果、それが結果になって繋がってきたので、本当に自信になった1年だったと思います。

――どうしてここまで結果を残せたと思いますか?

岩隈 一つは、1年目である程度やり方をつかんでこられた経験値があったので、これを2年目に生かしながら最後まで継続して行けたということがあるんだと思います。
 その中でオフシーズン、体幹トレーニングで体をしっかり作ったということもあると思います。ピッチャーだったら走ってばっかりとかウエイトして、とか多かったんですけど、それをちょっと変えてランニングを増やすよりも体幹トレーニングをちょっと加えて、など。
 地味にやりながら下半身のトレーニングも入れたり、走るというよりはそういうことをやりながら、あとはジャンプ系を取り入れました。
 ジャンプは足首だけで跳ぶよりも、お腹から全体から跳んでいくようなイメージを作って、つながっているようなイメージを作りながら、跳んでいきます。もし、何か器具を使いたい場合は、縄跳びで50回とかでも良いですね。

――ジャンプですか。器具も使うとしても縄くらいですし、すぐ出来そうですね。

岩隈 そう。大掛かりじゃなくていいんです。高校生は実際すごい身体能力あると思うんですよね。なんでもできる。でも一つのものばかりやってしまうと偏ってきてしまうと思うので、基本に返るじゃないですけど、自然な動きを意識していくことが大切かなと思います。

――では高校時代にやったトレーニングで、一番きつかったな、でもやってよかったなというものはありますか?

岩隈 まあランニングですかね。それしかしてないですね。僕らのときはウエイトトレーニングはまだやっていなかったので。グラウンドの中でも外でも。長距離や中距離を走ったり、1人になって100mくらいダッシュしたり。キツかったというか、ピッチャーとしてためになったのは、やっぱりランニングでしたね。

――走る量は、当時から多かったですか?

岩隈 いえ、プロに入ってからの方がランニングの量も増えましたし、フォームとかも意識して走るようになりました。しっかり足を高く上げて走ったりとか、そういう意識をしてやることがすごく大事だなと思います。

――高校の時に冬だけ行っていたトレーニングってありますか?

岩隈 とにかくランニングですよね。ボールを使わないですから。ボールを使わないで下半身のトレーニングだったり、上半身のトレーニングを意識してできれば、それが良いと思います。
 高校生だとどうしてもボールを投げたくなっちゃいますから。それはしない方が良いと思いますけどね。シーズンオフというか、冬の間だけでもそういう期間を作って休ませることも大事だと思いますね。

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[page_break自分のためと思えばモチベーションは上がる]

自分のためと思えばモチベーションは上がる

――トレーニングでやる気が起きない時にどうモチベーションを高めますか?

岩隈 トレーニングは自分のためと思うこと。結局、高校生の頃って、チームワークだとか、チームメイトと一つになるため、といってみんなと同じことやるんですけど、意外とやらされてやっている形が多くて、それだと自分のためにならない。
 やるならば自分のために体がどう動いているのかとか、どう使われているのかだとか考えた方が良い。チームのためにとか考えるより、自分のためにどうトレーニングをするか。全体で一緒にやらなきゃいけない中でも、自分がどういうふうに、何を意識してやるべきかということを考えていくと、自分のためになります。

――フィジカルだけでなく、メンタルを鍛えるために大事なことはありますか?

岩隈 それはみんなとの信頼関係なので、特にメンタルを意識したトレーニングをする必要はないです。試合をやっていく中で、勝たなきゃいけない場面やピンチの場面なんかが出てくると思うんです。
 けど、そう思えば思うほど硬くなるということが出てしまって、力が発揮できなかったりする。だからそうならないための練習は普段からしておくことですね。
 チームメイト、野手との信頼関係を作っておく。お前が投げているから安心だ、じゃないですけど、お前が頑張って投げているから俺も見ているし、守っているから、と言ってもらえるくらいの信頼関係を作っておく。それを勝ち取れるといいと思います。そうすれば、特別に何かをする必要はないですね。

――MLBでもそこは意識していますか?

岩隈 そこはまたちょっと違うところなんですよね。向こうはチームのことを日本のようにまでには考えられないんですよね。考えているのは、『自分のやるべきことをしっかりやってチームに貢献することが、一番のチーム力になる』ということなんです。だから簡単にいうと『個人力』なんですけど、でも一流の集まりなので、それぞれが一流のものを出していくということが強くなっていくことだと思っています。もちろん、戦っていく中で野球には失敗はつきものですから、野手のみんなとは信頼関係を損なわないようにはしています。みんなと一緒に戦っていく、という気持ちはあります。

――それでは開幕までのオフシーズンはどんなトレーニングをする予定ですか?

岩隈 新しく取り入れるものはあまりないんです。やっぱり基礎となる体幹のトレーニングや、体の中の方の筋肉を作り変えていくことでケガの防止になりますし、そういったところを意識しながら地味なトレーニングをしていきます。

――トレーニングの重要性は年々上がってきている感じですか?

岩隈 そうですね。自分の身体の今の状態と向き合わせながら何をやっていこうかとか。バランスがすごく大事なので、ちょっと状態が良くないな、となった時に、いつもと同じことをやっても効果が無いので、そこで効果の出る方法論を選んでいくといったやり方をしています。

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[page_break投手必見!冬の肩の作り方]

投手必見!冬の肩の作り方

シアトル・マリナーズ 岩隈久志選手

――トレーニングについて高校球児、特にピッチャーへアドバイスがあればお願いします。

岩隈 肩のトレーニングであれば、冬場に重たいものばっかりやってもあまり意味が無い。チューブトレーニングといった細かいトレーニング、細かい動きをしっかり作ってあげて、肩甲骨回りだとかその動きをしっかり出してあげる。そうやって違和感をなくしてから、重いトレーニングをやるようにした方が良いと思います。中がしっかりしてないうちから重いトレーニングばかりすると故障してしまうので、柔軟性を常にもった体作りしたほうがいいですね。

――高校時代からそのような考えをもってトレーニングしていたんですか?
じゃあ、もし今の知識をもって高校時代に行ったら…

岩隈 いや、高校時代はそこまで考えたことはなかったです。もしその知識が高校時代からあれば、藤浪(晋太郎)君(大阪桐蔭→阪神)くらいになってたかもしれないですね(笑)。
 直接見たことはないけど、プロに入る時に、すごい頭のいい子なんだろうなと感じましたね。1年目で10勝しましたし、能力プラス考え方や知識もしっかりしているんだろうなと。知識もあった方が良いと思います。僕はそういうのが無いまま高校時代を過ごしました。プロに入ってからですね、いろいろ勉強したのは。そこで、『ああ、こういうことをやって、そうするとこうなるのか』と分かったんです。それによって、力の出し方が分かってくるんですよね。

――ということは、高校球児も今のうちからトレーニングに興味を持っていたり聞いたりしたほうが、いいのかもしれませんね。

岩隈 大事だと思いますね。トレーニングっていうのは、ただ力をつけるだけじゃなく、自分の体と向き合いながら柔軟性とパワーをアップさせていく。それが一番いい形で体が出来てくるんじゃないですかね。

――それでは、岩隈投手が、2014年、今シーズンはここを見てほしい、というところをぜひ教えてください!

岩隈 僕は力のあるピッチャーじゃないと思っています。スピードがあるわけじゃないですし。
 じゃあ、いかにアメリカの舞台で戦っていくかっていう中で、攻めていく姿勢だとか、コントロール、間合いだとか、相手との駆け引きの部分を少しでも見てもらって、それが勉強になってくれたら嬉しいなと思います。

 ランニングや、体幹の細かいトレーニング。そういった、一見地味に見える地道なトレーニングの積み重ねがMLBでの大活躍を生んだんですね。
 岩隈投手、すぐにでも真似したいトレーニング法や考え方をアドバイス頂き、ありがとうございました。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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