2025年高校野球の春季大会が全国各地で行われている。すでに九州では地区大会も終わっているが、関東、近畿を含め、それ以外の地区ではこれから後半戦から終盤戦に突入。北海道では支部予選の抽選がスタートするなど、春の大会は花盛り真っ最中だといえる。

 ここまでの戦いを振り返ると、全国各地で公立校の活躍が目立つ。神奈川では川和が初のベスト8入りを果たした。昨年秋に横浜清陵が公立で唯一8強に入る活躍で、今年のセンバツ21世紀枠にも選出された。今年の春は川和が主役だった。プロ注目左腕、最速144キロを誇る濱岡 蒼太投手(3年)を中心に、藤沢翔陵日大藤沢といった県内有数の強豪私立を撃破。センバツに出場した同じ公立の横浜清陵を破ってのベスト8入りは、胸を張っていい結果だろう。準々決勝で敗れはしたが、川和の快進撃は神奈川ならず、全国の公立校の球児を励ましたに違いない。

 川和は神奈川でも屈指の進学校と言われているが、静岡でも、進学校・磐田南が32年ぶりの4強入りを果たした。予選で浜松開誠館にコールド勝ちしてから始まった快進撃。県大会で2試合連続完封ゲームで勝ち上がると、準々決勝では名門・浜松商にも勝利した。エースで4番の山田 堅正投手(3年)を柱として、守りからリズムをつかむ野球が花開いている。5月3日の準決勝では聖隷クリストファー相手に決勝進出を狙う。

 兵庫でも、公立校が輝きを放った。この春、初めて県大会出場を果たした網干が、2戦連続1対0のスコアで勝ち抜き、この夏の第1シード権を獲得した。惜しくもベスト8入りはならなかったが、学校の歴史に大きな業績を残した。網干は、学校再編により、姫路南家島とともに統合されることが決まっている。27年3月閉校予定で、今春からは新入生の募集を停止。この春は3年生10人と2年生7人の17人で戦った。網干の名前が消える前に、この夏にさらなる歴史を刻むことが期待される。

 この春、奈良での「ジャイアントキリング」が全国に響き渡った。春夏合わせて36度の甲子園出場を誇る智弁学園が3回戦でコールド負け。「主役」を演じたのは、県内でも有数の進学校・畝傍(うねび)だった。過去、甲子園出場がない進学校が大きな偉業を成し遂げ、ベスト8入りを決めた。実は1941年に1度だけ、夏の奈良県大会で優勝を果たしたが、戦争のために甲子園大会が中止に。それ以後、準優勝は5度あるが、甲子園には届かなかった。不運な過去を払拭するかのような出来事に、夏のシードがかかる、5月3日予定の準々決勝・奈良大付戦に期待が高まる。

 福岡では昨年の春日に続き、今年は東筑が優勝を果たし、2年連続で公立校が春の福岡を制した。東筑は春夏合わせて9度の甲子園出場を誇る名門ではあるが、激戦区の福岡の頂点に立つのは容易ではない。埼玉では大宮北がベスト16に入って夏のシード権を獲得すると、60年ぶりのベスト8入りも果たした。快進撃はどこまで続くのか。

 夏の「準備期間」のように捉えられて、強豪たちが「本気を出さない」とも言われがちな春の大会ではあるが、夏のシード権をかけた「本気」の争いのなかで、公立校が快進撃を見せるのは実力がある証拠ともいえる。ここでは取り上げられなかった公立校も含め、快進撃中の公立校のこの春の行方と、勝負の夏にますます期待が高まる。