<春季千葉県高等学校野球大会:習志野10-0東海大市原望洋>◇26日◇3回戦◇千葉県野球場

 千葉を代表する名門・習志野が3回戦で東海大市原望洋相手に6回コールド勝ち。打線は14安打10得点。エースの向井 脩人投手(3年)が6回無失点の好投を見せて投打ともにスキのない試合運びだった。習志野の県大会でベスト8以上は23年秋のベスト4以来、4季ぶり。昨年は春2回戦、夏3回戦、秋3回戦敗退といずれも早期敗退に終わり、習志野にとって悔しい1年だった。

 小林徹監督にとって雪辱を晴らすために上位を狙うという考えはない。ただゲーム数をこなしたいという思いはある。

「選手たちには、『試合数が足りないから、試合慣れしていない、試合運びが上手ではない、うまくなるには公式戦の数をこなすしかない』という話をしていました。『試合をして、経験値を上げたいよね』というのをずっと話をしていて、そのためには公式戦で勝つしかありません。準々決勝に勝ち進みましたが、次もゲームができるのは子どもたちにとっても大きいと思っています」

 完勝したかのように見えるが、1回裏には試合慣れしていないと思われるプレーがあった。無死一、二塁で3番岡田 諒介内野手(3年)がライトオーバーの長打を放った。すぐにボールはフェンスに到達したため、ライトが素早く中継の内野手に返したが、二塁走者のスタートが遅れて、本塁に還ることができなかった。また、本塁を狙うために素早くスタートを切っていた一塁走者が二塁走者の近くまで走ってしまい、挟殺プレーで一死を献上してしまったのだ。その後、内野ゴロの間に1点を先制したが、うまく走塁が決まっていれば、複数得点ができていたプレーだった。

 主将・岡田も試合慣れしていない故に起こったミスだったと語る。

「試合慣れしていないからこそ、初回の攻撃、守備で地に足がついていないプレーが見られました。もっと試合数をこなして試合前半で勝負を決められるチームになりたいと思いました」

 上位に勝ち進む時の習志野は、ここぞという場面で必ず巧みな走塁で点を加え、守備では相手の勢いをかき消す泥臭いプレー、投手の力投が光るチームだ。そんなとき選手は何をするべきか、どんな戦術が効果的なのか、理解をしながらプレーができていた。しかしそれは公式戦で修羅場を経験しなければ、生まれてこない。小林監督は「経験」こそ選手たちの自信と成長につながると考えている。

「やはり経験というのはなかなかお金では買えないので、試合数が多くなれば、緊張した場面もそうですし、プレッシャーのかかる場面も経験ができるので、自信にも落ち着きにもつながります。そういう経験値が今年のチームは低いですね」

 そして監督はこの試合の分岐点として、初回のピンチをしのいだ場面を上げた。エースの向井はいきなり一死満塁のピンチを招く。昨秋の拓大紅陵戦では初回のピンチの一打をきっかけに大量の9失点を喫している。向井は「昨秋、自分が崩れて大量失点につながったので気合を入れました」と遊ゴロ併殺に打ち取り、小林監督も「打たれたら昨年と同じままでしたが、成長が見えた」と目を細めた。

 今年の習志野ナインは秋からこの試合まで公式戦は7試合目。センバツ準優勝した時の2019年は秋の地区予選・県大会だけで8試合をこなした。秋の関東、センバツを含めれば、16試合だ。

 当時のチームを取材した時、小林監督は「本当に力のないチームだったが、試合を重ねて経験値を積めたことが大きかった」と語っていた。19年と比べれば経験値の差は歴然としている。

 課題を見つけながら次の試合に臨めるのは勝者の特権。習志野は名門復活へ向けて一歩ずつ歩みを見せている。