名将も絶賛。明秀日立、選手考案の機動力野球と大エースの快投で4年ぶりの関東大会出場



猪俣駿太(明秀日立)

<春季茨城県大会:明秀日立3-1水戸商>◇3日◇準決勝◇J:COMスタジアム土浦

 2季連続、そして春季に限ればセンバツ出場した2018年以来の関東大会出場がかかる明秀日立が伝統校・水戸商と対戦した。

 水戸商の好投手・平山に対しても強打を発揮した。1回、1死から四球で出塁した本坊 匠が盗塁を仕掛け、二盗を成功後、さらに暴投で三塁へ。打撃好調の佐藤 光成外野手(3年)が左前適時打を放ち、1点を先制した。さらに石川 ケニー外野手(3年)の適時打も飛び出し2点目を挙げた。3回裏も、3番佐藤の安打からチャンスを作り、盗塁を仕掛け、4番・石川が右翼線を破る適時二塁打。140キロ前後の速球を投げ込む平山に対しても、しっかりと振り抜いている。これまでは、緩い球を投げる投手対策のために打席の前方に立っていた明秀日立ナインは、この試合では後ろの方に立つなど、しっかり対策を取っていた。

 得点には盗塁が絡んだ。金沢監督は
 「この場面について私は何も指示をしていません。選手たちが相手投手のモーションが大きいのを見抜いて、盗塁を決断したようです。盗塁の場面についてはノーサインでした。選手たちが考えて動ける。チームの勝利のために動くことが実践できています」と盗塁を絡めて得点した場面を高く評価した。

 準決勝の先発マウンドに登った石川 ケニー投手。金沢監督は今大会について複数投手を起用すると決めており、腰に不安があったケニーだったが登板できる状態になったことで、準決勝で先発となった。

 左腕から常時130キロ〜135キロ(最速137キロ)の直球を両サイドにテンポよく投げ分け、スライダー、カーブなどの変化球も駆使し5回まで無失点の投球だった。金沢監督は「まだストレートは本調子ではありませんでしたが、ケニーはうまく試合を作ってくれたと思います。ケニーはこのくらいやって当然の投手。今日は及第点点を与えられる投球でした」
 求めるハードルは高いが、それだけケニーの投打のポテンシャルの高さを評価しているのだろう。

 6回表、右サイドの高橋遼投手(3年)が1点を失ったところで、右翼手でスタメン出場だったエース・猪俣 駿太投手(3年)が3番手として、マウンドに登る。

 この日は全力投球した。常時130キロ後半〜140キロの速球には角度があり、120キロ前半のスライダー、120キロ後半のフォークの精度も高い。テンポも良く、速球、変化球ともに無理なくストライクが取れるようになった。
 ハイテンポで、ストライク先行の投球ができる。甲子園の経験をしっかりと糧にして、打者を見下ろす投球ができるようになっている。

 金沢監督は猪俣の成長をこう語る。
「センバツ甲子園が終わると、状態を落とす選手が多くて、気力も上がらない選手もいる。ただ、猪俣はその中で、人一倍悔しさを糧に、それが練習姿勢にも表れていた選手でした。現状のチーム状況から考えれば、猪俣は唯一の光といえる選手です」

 猪俣は投球練習後のあとにも人一倍トレーニングに励み、スタミナ強化に励んだ。その結果、平均球速が上がり、常時130キロ後半を出せるレベルまでになった。この試合では、3回、38球、5奪三振、無安打、無失点の投球だった。金沢監督も「見ていて頼もしさを感じる投球でした」と大絶賛。猪俣は「直球、変化球をうまく使い分けができて、前の日から調子もよかったので、コントロールよく投げられました。打者の雰囲気を見て、テンポよくストライク先行でいけました」と好投を振り返った。

 猪俣以外の投手を起用して育てるという方針のもと、始まった今大会。エースの成長も実感できる準決勝で関東大会出場をつかんだ。あとは打線の状態をどこまで上げることができるか。主砲・武田一渓内野手は今大会故障のため、ベンチを外れているが、こうした試行錯誤する時間も明秀日立を強くしているかもしれない。