山田 大貴選手 (古川工)
寸評
甲子園初出場の原動力になった山田 大貴。しかし初の甲子園は、山田にとって大いなる試練となった。初回に7失点をきして計9失点、それでも最後まで投げきった。何故そこまで打たれてしまったのか、改めて考察してみたい。 (投球内容) 175センチの中背から投げ込まれるフォームは、どことなく同じ宮城・仙台育英出身の由規(ヤクルト)投手を彷彿とさせる。球速は、常時135キロ前後~130キロ台後半ぐらい。そのボールの勢いや質は、そこまで打ち込まれるような球には見えなかった。変化球は、スライダーとのコンビネーションが主で、これにカーブやチェンジアップをたまに織り交ぜて来ると言うオーソドックスなスタイル。 両サイドにしっかりボールを投げ別ける制球力もあり、マウンド捌きも悪くない。実際対戦相手の唐津商の各打者達は、かなりコースギリギリの難しい球をヒットにしている。それだけ、ボールが見やすいということなのだろう。牽制、フィールディング、クィック等も基準レベルであり、投球に大きな欠点は見当たらない。3回から9回までは無失点で抑えたように、自分のリズムが掴めない間に大量失点を重ねてしまったようだ。 (投球フォーム) 足の横幅を広くとってから、ワインドアップで地面をぽ~ん叩いて踏み出して来る。引き上げた足を地面に向けて伸ばすので、見分けの難しいカーブの修得や縦に鋭く落ちるフォークのような球種の修得は厳しい。そのため今後は、スライダーやチェンジアップなど球速のある変化球を中心に、投球を磨いて行くことになりそうだ。 グラブは、最後まで体の近くにあるので、両サイドへの制球は安定。足の甲の押しつけも悪くないので、中背だがボールがそれほど上に抜けない。振り下ろされる腕に、少し無理があり、負担が大きいばかりではなく、腕の回旋のスムーズさを損なっている。若干腕の角度を緩和した方が、彼の体の回転には合っていそうだし、故障へのリスクも減るだろう。 「着地」までの粘りに欠けるため、体の「開き」が早くボールが見やすい。せっかくコースを突いても、相手に早く球筋を見破られ打ち込まれることが多い。「球持ち」に関しては平均的で、それほど指先まで力を伝えてと言うほどの繊細さは感じられない。それでもしっかりボールをコントロールできているので、その点は悲観しなくても好いのかもしれない。ただむしろ気になったのは、序盤戦あまり腕が振れておらず、体に巻き付いてこなかった。やはり投手と言うのは、腕を強く振ることが基本であり、これによって速球と変化球の見極めを難しくする。「体重移動」は、思ったよりもしっかり出来ているが、更に打者の手元まで勢いのある球を目指すならば、グッと体重が乗って行くぐらいの重心の乗りを身につけたい。
更新日時:2011.08.14
将来の可能性
序盤戦は、緊張のせいか?体の前への突っ込みが顕著だった。彼の最大の課題は、この突っ込みを常に意識しつつ、「着地」までの粘りを投球フォームに作って行くことだろう。そうすれば、おのずと「開き」の早いフォームも修正されて行くはずだ。 投手としての総合力はしっかりしたものを持っているので、大学などでも野球を続けて行ける素材だろう。まだ細かい部分で改善が必要だが、そこをしっかり指導してくれる環境と、自らが欠点に向き合う姿勢や意識を持ちたいところ。そうやって一つ一つ野球を深く探求して行けば、また次の段階へと進んで行けるはず。まだまだ見違えるほどよくなる可能性が秘めている投手、この経験を明日につなげて欲しい。
更新日時:2011.08.14
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