試合レポート

浦和学院vs聖望学園

2014.05.05

小島連投。浦和学院、春季大会連覇

浦和学院vs聖望学園 | 高校野球ドットコム 

先日に続きリリーフで登板した小島(浦和学院)

 これほど本気度の高い春の決勝はいつ以来であろう。

 本来春の県大会決勝は既に関東大会出場を決めているだけに新しい選手を試す勝敗を度外視したいわゆる消化試合になりがちである。

 だが、この日は違った。両チーム共に勝ちにこだわった采配を見せる。

 浦和学院聖望学園両チームの対決、先発は浦和学院が2年生左腕・岸、聖望学園は前日同様中村(碧)で試合は始まる。

 先制したのは聖望学園だった。浦和学院・岸の立ち上がりを攻めたてる。初回先頭の菊池がレフト前ヒットで出塁すると、続く津田が送り一死二塁で3番・大野を迎える。ここで大野が右中間へタイムリー2塁打を放ち幸先良く聖望学園が1点を先制する。さらに二死後この日5番に上がった中村(郁)が四球で出塁すると、すぐさま盗塁に成功し二死ニ、三塁と追加点のチャンスを広げるが、この日スタメンの6番・坂本は三振に倒れ、初回の聖望学園の攻撃は1点で終わる。

 

 一方、聖望学園・中村(碧)は連投となるが、前日は3回途中で降板しているため、スタミナ面での不安もない。むしろ、テンポ良く、前日よりも良い投球を見せ序盤から浦和学院打線を寄せ付けない。岸も2回以降は落ち着きを取り戻し、1対0のまま中盤まで進む。

 浦和学院の反撃は5回裏だった。一死からこの日打順が6番に上がった秋山がセンター前ヒットを放ち出塁すると、続く酒本のカウントがフルカウントとなった所で浦和学院ベンチはエンドランを仕掛ける。これが決まりショートは逆を突かれ、何とか飛びついて止めるのが精一杯、内野安打となり一、二塁とする。8番・岸はきっちりと送り二死ニ、三塁とすると、続く石森がしぶとくセンター前へ逆転2点タイムリーを放ち、本塁送球間に二塁を奪う。さらに1番・だい(吉室)の打球は平凡なレフトフライであったが、これを4回からレフトに入った綿貫が落球し浦和学院に3点目が入る。

 対する聖望学園もすぐに反撃を開始する。6回表、この回先頭の津田が死球で出塁すると、続く大野が送り、一死二塁とする。二死後、5番・中村(郁)がレフト線へタイムリー2塁打を放ち1点を返し3対2とする。


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延長11回、サヨナラで春の埼玉を制した浦和学院

 ここで浦和学院ベンチは岸を諦める。浦和学院投手陣には他に酒井や宇野などがいるが、ここで登場したのは前日9回を完投した小島だった。

 小島は代打・野瀬を三振に取るが、キャッチャー田畑がその球を後逸し一塁送球のボールが大きく逸れる。その間に二塁走者中村(郁)が一気に本塁を奪う。まるで前日のリプレーを見るようなシーンで3対3の同点とする。さらに、続く小金井もセンター前ヒットで続くが、センター石森の好返球で一塁走者の三進を阻止し6回表が終わる。

 対する聖望学園も、浦和学院7回裏の攻撃、二死二塁で1番・だい(吉室)のカウント3ボール1ストライクとなった所で、前日ロングリリーフした松本を投入する。松本はだい(吉室)は歩かせるが、後続を抑え3対3、同点のまま最終回を迎える。

 9回表、聖望学園は一死から小金井のセーフティーバントが小島のエラーを誘い出塁する。だが、続く松本が送れず三振に倒れる。二死後9番・松並がレフト前ヒットでつないだが、続く菊池はファーストのグラブを弾く強い打球を放ったが間一髪アウトとなり無得点に終わる。

 その後も浦和学院・小島、聖望学園・松本の投げ合いが続き試合は延長へと進む。

 迎えた11回裏、二死一塁で7番・途中出場の木村が左中間へサヨナラタイムリー2塁打を放ち、最後は浦和学院が4対3で聖望学園を振り切り優勝を飾った。


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マウンドに集まる聖望学園ナイン

 浦和学院はここ10年どの代も秋・春・夏そのいずれかで必ず優勝してきたそうだ。この代は絶対的エース小島こそいるが、打線は浦和学院史上稀に見る貧打でそれが途切れる可能性があった。だが、結局この代もきっちりとその最低限のノルマは達成した。
これで、このチームにも勝ち癖はついてくるであろうが、春の大会で小島をやや酷使したことが夏どう出るのかは未知数だ。まだ6割,7割の状態と言いながら、今大会も自責点1で乗り切った小島に夏いかに負担をかけないかがポイントとなりそうだ。そのためにはもう少し打線の爆発力が欲しい。夏は前評判の高い新1年生などと現状のスタメンとの入れ替えが必須であろう。

 対する聖望学園も前日の大宮東戦でのレポートでも触れたが、秋地区大会で敗退しただけに選手の経験値を高めるべく春は一戦でも多く戦うことを目標とし結果を出した。前の試合で相手に執拗に多くの球数を投げさせたり、二塁から一気に本塁を奪うなどチームにしたたかさが出てきた。主砲・中村(郁)も調子を上げてきただけに夏も浦和学院と並び優勝候補と言って良い存在であろう。あとは、絶対的なエースが欲しい所か。

 いずれにせよ、今年の埼玉に絶対的な本命がいないことは事実だ。いわゆる、浦和学院花咲徳栄聖望学園春日部共栄本庄第一など私立の強豪校も決め手を欠き花咲徳栄本庄第一に至っては今大会早期敗退したことでノーシードで夏を迎える。昨夏準優勝の川越東埼玉栄浦和実などもノーシードだ。

 これに対し公立高校が元気だ。今大会ベスト4進出の大宮東市立川越は共に絶対的なエース中田(浩)、上條を擁しており、打線も悪くない。この2チームは、ここ数年のような春の大会で良い結果を出して研究され夏早期敗退していった公立高校とは一味違い地力を感じる。夏も十分チャンスはありそうだ。

 また、昨夏に続き、今大会も西部地区のチームの活躍が際立っていた。昨夏もそうであったが、今大会もベスト8の中半数が西部地区のチームだ。今大会活躍した所沢、[team]川越工業、狭山ヶ丘西武文理はもちろんだが、地区予選で敗れた、山村国際富士見所沢北、所沢商業なども地力はある。この勢いが今後も続くのか、それとも他の地区がこのパワーバランスを破るのか?ちなみに秋はベスト8中3校が東部地区の高校だった。東部地区の高校の巻き返しはあるか?別の側面からみても楽しみな夏になりそうだ。

(文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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