具志川vs向陽
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具志川・仲本
<第69回沖縄県高等学校野球春季大会:具志川3-2向陽>◇21日◇1回戦◇[stadium]アグレスタジアム北谷球場[/stadium]
苦しみながらも勝利した具志川が2回戦へ進出
「最後までドキドキする良いゲームでしたね」。試合後、具志川の島袋 春樹監督は第三者的な言葉を発した。その真意は、練習をしたくてもできなかった選手たちが、苦しみながらも1点差を守り切って勝ったことの褒め言葉だろう。オミクロンという変異種が出て、部活全体が休止という長い期間を経てきたからこそ、どんな形であれ勝利したことで次の試合にも臨めることが、選手たちの何よりの良薬だと分かっているからなのだ。
先制した具志川。追いついた向陽
2回表、向陽は4番・諸見 謝拓が右前安打で出塁すると、犠打で二塁に進む。しかし、具志川の仲本 敬登投手が、連続見逃し三振に斬る抜群の制球力で走者を進めさせない。その裏、具志川は5番・玉城 大地が四球を選ぶ。向陽の諸見 謝拓投手は執拗な牽制をしたが、その中を潜るようにして、打者への投球1球目にすかさず盗塁を試み成功させた。玉城は果敢に三盗にも挑戦したが、ここは向陽バッテリーが落ち着き払って刺す。3回裏の具志川は中村の安打などで一、三塁のチャンスをつかむが無得点。前半は両チームともに守りで魅せてくれた。
均衡が破れたのは4回。具志川は3番・座間味 陽晃が安打で出塁するとベンチは手堅く犠打で進める。ここで5番・玉城 大地が期待に応える中越え適時三塁打で遂に先制。2死となるが7番・當銘 一志が左翼線を襲う二塁打で三走が生還。向陽野手陣のほんの少しの乱れを見た當銘 一志は、二塁から三塁を陥れる好走塁を見せた。向陽はここで投手交代。遊撃に入っていた上原海歩がマウンドへ向かうと、打者を中飛に斬り、具志川に流れを持っていかせず試合を引き締めた。
6回表、この試合初めて四球を与えた具志川の仲本敬登だったが、自ら奪った三振と座間味陽晃捕手からの二盗阻止の併殺で向陽反撃の芽を摘み取る。するとその裏、3番・座間味 陽晃はコツンと当てただけだったが左翼線ギリギリに落ちる安打。打ち取った向陽の上原 海歩も思わず首をうなだれた後、犠打で三塁へ。この試合乗っている玉城 大地の打球はセンターへ。タッチアップを狙った具志川だが、向陽のセンター西里 幸之助がツーバウンドで捕手の構えたミットへ収まるストライク返球。ここ以外アウトはないという完璧で美しい返球が、具志川追加点を阻止。この美技が向陽を元気付けることとなる。
向陽は7回表、この回先頭の2番・上原 海歩が投手を襲う中前への安打で出塁すると連打で無死満塁と千載一遇のチャンス。5番・上里 忠之はフルカウントから空振り三振。しかし具志川バッテリー痛恨のパスボールで三走が生還。その後、球が転がる間に一気に本塁を狙った二走の山田 匠馬が滑り込む好走塁で、向陽が同点に追い付いたのだ。
具志川はその裏、6番・岸本 心が緩い変化球を上手くためて左前へ安打。犠打を確実に決めてくる手堅い具志川はこれまで同様二塁へと進めると、8番・安里 元輝は四球を選ぶ。その後、捕手からの送球に挟まれランダンプレーから1人の走者がアウトに。打席の仲本敬登は三振振り逃げとなるが、一塁への送球が逸れた間に二走が生還した。
立ち直った仲本敬登にはもう、この1点で十分だった。8回を三者凡退に斬ると、1番から始まる好打順の9回表向陽の攻撃をも完璧に3人で抑えてゲームセット。苦しみながらも勝利した具志川が2回戦へとコマを進めた。
敗れた少人数の向陽だが、相手に勝るとも劣らない技を魅せ、父母らを感動させた。同じように少人数の進学校である開邦を率いて、2013年の夏ベスト16入りへと導いた大城 盛隆監督を信じ、自分たちの可能性を信じ切るなら、同じようにベスト16入りすることは十分可能。そう思わせるナイスゲームであった。
(取材=當山 雅通)
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[page_break:試合シーン]具志川・當銘
向陽・山田
向陽先発・大見謝