山梨学院が29年ぶりに秋の関東大会を優勝し神宮大会へ

山梨学院が29年ぶりに優勝
<第75回秋季関東地区高校野球大会:山梨学院9-3専大松戸>◇30日◇決勝◇県営大宮
山梨学院(山梨)vs専大松戸(千葉)の決勝で勝った方が明治神宮大会への出場が決まる。
両校とも不動のスタメン。先発は山梨学院が前日に初完投した背番号10の林 謙吾投手(2年)が連投、一方の専大松戸は最速141キロ右腕、1年生の梅澤 翔大投手(1年)が登板し試合が始まる。
試合は山梨学院が序盤から常に試合を優位に進める。先制したのは山梨学院であった。
山梨学院は2回表、この回先頭の髙橋 海翔内野手(2年)が左中間への二塁打を放ち出塁すると、続く佐仲 大輝捕手(2年)がきっちりと送り1死三塁とする。ここで6番・大森 燦内野手(2年)がきっちりと犠飛を放ち幸先良く1点を先制する。
山梨学院は3回表にも2死から1番・星野 泰輝外野手(2年)がセンターへライナー性の打球を放つ。この打球をセンターが取れず二塁打となり2死二塁とすると、続く進藤 天内野手(2年)が中前へ適時打を放ち2対0とする。
山梨学院は6回表にも、この回先頭の進藤が右前安打を放ち出塁すると、専大松戸は流れを変えるべく2番手に最速151キロ右腕のエース平野 大地投手(2年)をマウンドに送る。だが、この日はこれが誤算となった。
山梨学院は専大松戸・平野の代わり端を攻め、続く岳原 陵河外野手(2年)がきっちりと送り1死二塁とすると、4番・高橋が左中間へ適時二塁打を放ちまず1点。さらに続く佐仲も左中間へ適時二塁打を放つと、6番・大森も四球を選び1死一、二塁とチャンスを広げる。2死後、8番・林も中前適時打を放つなど、結局、山梨学院がこの回一挙3得点を奪い5点差をつける。
試合の主導権を完全に握った山梨学院は、7回表にも1死から2番・進藤が左翼席へソロ本塁打を放ち6対0とし、専大松戸のエース平野はマウンドを降りる。試合の大勢は決した。
それでも専大松戸は8回裏に7回途中からマウンドに上がった山梨学院の2番手、エースナンバーの左腕・星野を攻める。この回先頭の広川 陽大内野手(2年)が四球を選び出塁すると、1死後、9番・宮尾 日向内野手(2年)が右前安打を放ち1死一、二塁とチャンスを広げる。さらにここで続く大森 准弥内野手(2年)が中前安打を放つと、二走・広川は一旦、三塁で止まるが、センターがジャックルしたのを見て本塁へ生還する。一走・宮尾もその間に三塁を狙うと、センターからの三塁送球が逸れベンチに入り宮尾も生還、結局2点を返し、打者走者・大森も三塁まで進み1死三塁とする。ここで、2番・清水 友惺外野手(1年)も犠飛を放ち6対3と3点差まで追い上げる。
だが、山梨学院は9回表、7回途中からマウンドに上がった3番手・渡邉 翼投手(2年)に対し、2死から3番・岳原が三ゴロエラーで出塁すると、続く高橋も申告敬遠で歩き2死一、二塁とする。ここで5番・佐仲が左翼席へ3ランを放ち9対3とダメを押す。
結局、山梨学院が9対3で専大松戸を下し、29年ぶりに秋の関東を制覇し明治神宮大会へ駒を進めた。
専大松戸はこの日、山梨学院の先発・林の前に5回ノーヒットに抑えられるなど打線が沈黙。8回裏に2番手・星野から3点を返すのが精いっぱいだった。とはいえ、既にセンバツ出場ラインといわれるベスト4進出を決め、決勝まで勝ち上がった。その状況で持丸監督がこの日試合開始からフルスロットルで戦ったとは考えにくい。
エース平野も元々万全ではないだけに、まずはエースが万全な状態で来春以降を迎えること。幸い、関東大会レベルの相手でも梅澤、渡邉 翼、青野 流果投手(2年)の3投手がある程度通用する目処が立ったことは今後へ向け収穫であろう。打線も上位、下位共に粘りがあり主軸には1発もあるが、一冬を越しセンバツで打線がさらにパワーアップした姿を見届けたい。
山梨学院は旧チームから野手が多く残り、この日も連投でやや疲労の残る平野とはいえ、難なく捉えてみせた。140キロほどの癖のない直球であれば現時点で難なく捉える力を持っている。むしろこの代の課題は投手力であった。今大会のMVPは林であろう。吉田監督も
「一番は林の成長。投手のいない学年だったので関東を勝ち切ることは難しいと思っていたのですが、4試合勝ち切れたのはピッチャーの力。林は良さでもあり欠点でもあるのですが、少し神経質でストイックなところがある。フォームが安定して固めるという作業を繰り返し何度もやる子なので、それが良い方に出たかな。ストロングポイントは緩急。136キロの直球を140キロに感じさせることができる」
と絶賛。県大会ではあまり安定感がなかったそうだが、
「林はフォームは良いが、県大会ではカーブとカットに球速差がついていなかった。なので、3週間でカットのスピードを上げたことで球速差がついた」(吉田部長)
と、部長と二人三脚で修正したことが功を奏し関東大会では見違えるような投球を披露した。
「林は直球が右打者のアウトコースに決まる時は低めから伸びてくるので。相手がストレートを狙っている場合はカットボールでかわす。制球は関東にきて良くなりました」と、正捕手の佐仲も認める。とにかく制球が安定していたこともあり、外野のシフトも大胆に敷くことができる。本人も「カウント作りは相手の土俵ではなく自分のリズムで自分の土俵で行うことを意識している。カウントを悪くして力勝負になるとかなわないので、常にストライク先行で。腕を畳むフォームは、部長先生と作りこんで、ああいうフォームだと榎谷さんのようなカットボールを投げやすいようなフォームを意識している」(林)と、ここへ来て投手陣に柱が生まれた山梨学院。監督も部長も声を揃え「旧チームより力は落ちるが、伸び代があり夏型のチーム」と評する山梨学院が今後どこまで伸びるのか。今から楽しみだ。
(取材=南 英博)