2010年07月12日 いわきグリーンスタジアム

東日大昌平vs学法福島

2010年夏の大会 第92回福島大会 2回戦
印刷する このエントリーをはてなブックマークに追加   


雄たけびをあげる引地(東日大昌平)

喜怒哀楽のマウンド

 「オゥリャー!!!」
何度、雄叫びをあげたことだろう。東日本国際大昌平のエース左腕・引地航(3年)のボルテージは回を追うごとに高まっていった。6回まで学法福島打線を内野安打1本に抑えるピッチングを披露。マウンドで鋭い目つきと、トレードマークの笑顔を交互に使い分け、スコアボードにゼロを並べていった。

 学法福島の4番・菅原源稀(3年)に左翼線二塁打を許し、5番・平間亮(3年)から空振り三振で2死を奪ったが、6番・原田清也(2年)にレフト前に運ばれた。2死1、3塁となり、東日本国際大昌平は、この日最初のタイムを使った。
この時、引地は「いじられて」いた。セカンドを守る青木慶弘(3年)にほっぺたをムニムニほぐされていたのだ。「笑顔が悪くなっていたので」と青木。引地の頬が緩んだ。そして、タイムの輪が解かれると、引地はグローブを左脇にかかえ、天に右手の人差し指を立てた。心を落ち着かせて投じた初球。相手の先発・松谷鷹也(2年)の打球は引地のグラブにノーバウンドで納まった。全身に力をこめて、腹の底から叫んだ。何度も何度も叫びながらベンチに戻った。

 

8回にもピンチがあった。この回先頭の大居力哉(3年)にレフト前ヒットを打たれ、さらに、キャッチャーのパスボールで進塁を許した。無死2塁。ここで2回目のタイムをとった東日本国際大昌平。引地はまたも、青木にほっぺたをムニムニされた。気合を入れなおし、菊地啓聖(1年)をスリーバント失敗で打ち取る。その後、ショートゴロ、ファーストゴロでしのいだ。

 9回表、ポンポンと2死を奪う。勝利まで、あとアウト1つだったが、ここでセカンド・青木がエラー。今度は引地がなだめたが、「うるせぇ」と言わんばかりに頭をポンとはたかれた。最後は、またも青木のところに打球は飛んだ。が、今度は落ち着いて裁き、それを見届けた引地は両手を突き上げた。ピンチを凌いだときの雄叫びはなかったが、「してやったり」といった感じの表情で仲間とハイタッチを繰り返した。

 

吉田幸祐監督は「見た目は幼く見えるんですけど。自分らしくできますよね。気持ちが乗っていましたよね」と褒めた。
緊張の初戦を4安打完封で飾った引地は「弱気を強気で抑えられた」と振り返った。試合中、見えない敵と戦っていた。それは、弱気の自分と強気の自分。ところどころ出てくる弱気な自分を、胸を叩いたり、声を出したりすることで押さえ込んでいた。そうすると、強気な自分が現れて、相手に立ち向かっていけた。引地は言う。「野球は喧嘩だと思っているんで」。悪い意味はない。「バッターとの1対1の勝負が楽しくてピッチャーやっているんで。相手はノリがよくて、向かってきてくれた」。男の1対1の勝負。孤独なマウンド。いくら仲間が守っていても、試合を左右するボールを握っているのはピッチャー。全員で戦う競技ではあるけれど、ピッチャーはそれくらいの気持ちがないといけないのかもしれない。

 

感情を出すことに歓迎されない風潮があるが、それは「態度」によると思う。
むしろ、昨今、感情のコントロールができずにいる人間が多い中、こうして喜怒哀楽を表現できるのはいいことではないか。人を小ばかにしたような態度はいけない。でも、勝負を楽しむ中で、互いに意地と意地をぶつけ合う中で生まれる感情は、抑えてどうなるものか。
静かに淡々と投げるタイプの選手に叫べとは言わない。だけど、声を発することで能力を出せるのなら、それを抑えるのはもったいない。
特に引地の場合、全く嫌味ったらしく見えないのは、彼の人間性かもしれない。マウンドを降りれば、素朴な少年だ。

(文=高橋 昌江




この記事についてTwitterでつぶやく この記事についてFacebbokに投稿する
【関連記事】
本日発表日!選抜候補全131校を振り返る! 【ニュース - 高校野球関連】
選抜出場候補131校決まる 【ニュース - 高校野球関連】
第206回 佐々木・奥川らドラフト上位候補だけではなく、ブレイクに期待がかかる逸材投手リスト90名!【ドラフト特集コラム】
第931回 聖光学院の13連覇に待ったをかけるチームは現れるか?福島県の戦歴を振り返る!【大会展望・総括コラム】
仙台育英vs東日本国際大昌平【2019年春の大会 第66回東北地区高等学校野球大会】
第527回 【福島展望】夏11連覇の聖光学院を阻むのは?今年は多くの実力校が集う!【大会展望・総括コラム】
八戸学院光星vs東日本国際大昌平【2017年春の大会 第64回(平成29年度春季)東北地区高等学校野球大会】
東日本国際大昌平vs大船渡東【2017年春の大会 第64回(平成29年度春季)東北地区高等学校野球大会】
第339回 【福島 抽選後 展望】10連覇を狙う聖光学院に対抗できるチームが続出!歴史的な1年になるか?【大会展望・総括コラム】
第21回 聖光学院の一人勝ち状態が、いつまで継続されるのか(福島県)【47都道府県 高校野球勢力図の変化】
坂戸西vs東日本国際大昌平【2015年 練習試合(交流試合)・春】
花巻東vs学法福島【2011年秋の大会 第64回東北地区高校野球大会】
学法福島 【高校別データ】
東日本国際大昌平 【高校別データ】
第92回福島大会 【大会別データ】

応援メッセージを投稿する

福島県地域応援スポンサー

福島県の地域スポンサー様を募集しております。

試合記事トップに戻る サイトトップに戻る