2009年07月25日 いわきグリーンスタジアム

聖光学院vs東日大昌平

2009年夏の大会 第91回福島大会 決勝
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左:日下君/右:石田君

聖光学院強さの秘密

 横山博英部長が「戦うマネージャーなんですよ」と教えてくれた。
聖光学院の石田剛士(3年)は、高校に入学後、運動をすると頭痛が起きるようになった。さまざまな病院に行ったが原因がわからない。夢と希望を抱き、聖光学院野球部の門を叩いたが、満足に練習をすることはできない。気持ちはもやもやする。甲子園どころではない。最後に訪れた病院で病名がはっきりした。「キアリ奇形」。

 健康管理.com(http://www.kenkokanri.com/)によると、
「キアリ奇形は脳細胞が脊柱管にまではみ出している症状のことを言います。キアリ奇形は頭蓋骨の一部が異常に小さかったり、変形していたりして、脳を下部に圧迫していることが原因です。キアリ奇形は一般的な病気ではありませんが、画像検査技術の向上により、最近ではキアリ奇形と診断されることが多くなっています。キアリ奇形は、通常、先天的に発症しますが、子どもが生後に発症するケースもあります。成人になるまで症状は発生しないことが多いです。脊柱管にはみ出している脳細胞の量、脳や脊髄の発育異常が起きているかどうかに応じて、医師はキアリ奇形をいくつかのタイプに分類しています。

それほど深刻ではない場合が多く、深刻であるケースは稀です。キアリ奇形の治療は症状の深刻さや特徴によって異なります。定期的に観察、投薬することや手術を行うことが、治療の選択肢となります」ということだ。

本心は「選手でやりたかった」が、病名がはっきりと分ったことで石田は「サポートしよう」と決心した。それが、1年の冬のことであった。

マネージャーになって「いろんなところを見られるようになった」という。マシーンのボール入れなど、練習のサポートをしている。

 試合では、相手の配球を見抜いて選手にアドバイスを送る。「スコアを付けているので、どういう配球してくるか分かる。“次、こういうのから入るよ”と教えています。打ってくれると嬉しいです。打てなかったら?打てなかったら、また、配球を考えます」。ビデオなどで研究はしない。「試合に入ってからです。当日の配球、その選手に対する配球です」。これでは、相手も警戒のしようがない。

 松本剛主将(3年)は「最高の存在です」と胸を張る。「試合でも一人の戦力として戦ってくれている。その代、その代で素晴らしいマネージャーがいました。石田は“戦うマネージャー”って言われています」。

 斎藤智也監督に石田について訊ねると「左腕かな~?」という答えが返ってきた。思わず、「右腕ではないのですか?」と聞くと、「右腕は松本(主将)。石田、左腕」ということだそうだ。監督にとっては頼もしい、キャプテンとマネージャーである。

 こんな話しを聞いたことがある。「強いチームには、素晴らしいキャプテンとマネージャーがいる。優勝するときというのは、そこがしっかりしているときだ」と。

練習風景(聖光学院)


 斎藤監督は言う。
「気が付くし、気が利くし、かゆいところで手が届くっていうのかな。選手を厳しい態度で鼓舞する勇気も持っているし、ありがたい存在だよね。こっちが言わなくても“こんなデータが出ました。使ってください”って持ってくる。”お前、よくそんなことに気付いたな”って何回褒めたかわかんない。甲子園(の日程)は最初に余裕があるからね、どこのチームも。ある程度データは出せるんだけど、それでも試合中に見つけるんだよ。石田の感性はズバ抜けている」。

 本当にズバ抜けている。
聖光学院のグラウンドを訪れた日は、太陽光が痛いくらい、よく晴れて青空が広がっていた。みんなが甲子園に向けてボールを追う横で、石田を中心に数人が、こちらも甲子園に向けて準備をしていた。

 水道のところでゴシゴシやっている。一目で何をしているのか、想像はついたが、何をしているのかを聞いてみた。
「バスの座席の頭のカバーを洗っているんです」。校舎の前にある大量のグレーの物体。バスの椅子か?と思いつつも確認のため聞いた。

「バスの椅子です。取れるんですよ!」。そうか、聖光学院は毎年、こうして甲子園に向かうのかと思ったが、「多分、初めてです。バスが来てから初めてだと思います」ということだ。気付く目、素晴らしい心遣い。斎藤監督が「かゆいところに手が届く」と言いたくなるのも頷ける。福島から甲子園までは長時間の移動となる。天日干しにされたフカフカの椅子に腰掛けて、香りのいい枕カバーが頭のところにあって、気持ちのいいバス移動となったはずだ。

 日下裕也(3年)は石田と同じ3年生のマネージャーである。2年の夏にマネージャーになった。「マネージャーの先輩。見本です」と尊敬しつつも、そこは同じ学年。周りからは「喧嘩している」と言われるそうだ。「大事な意見の言い合いとかじゃなくて、ほんとに言いたい放題」と日下。二人とも、枕カバーを洗う手はもちろん、口もよく動く。だが、これは、お互いにとって大事なやり取りのように見えた。

石田は「ベンチからパワーを送る立場。選手の体調とかもしっかり見ていきたい。目標?全国制覇をしたい」とキッパリ。時間も場所も異なったが、日下は「スコアとか書く立場なので、相手のデータとか見抜いてほしい。選手にパワーを送ってほしい」と、石田にエールを送った。石田も日下も考えていることは一緒だ。日下自身は「場所は違えど、気持ちは一緒。同じ気持ちです。選手にパワーを送って、応援で力になりたい」と話した。

中学生の頃、ピッチャーとサードを守った石田。いわき市の中総体で準優勝。県中総体では初戦敗退だった。甲子園でプレーすることを夢見て、聖光学院野球部に入部するも、その夢は絶たれた。今、思い切ってダイヤモンドを駆け回ることはできないが、石田だって、甲子園でプレーする。それも、1打席や2打席なんてものじゃない。丸々1試合だ。最高だと6試合、戦うことになる。
聖光学院のグラウンドに、こんな言葉が張ってあった。横山部長の好きな言葉だそうだ。


【人は宿命に生まれ 運命に生き 使命に燃ゆ】


がんばれ!聖光ナイン!

(文=高橋 昌江



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