坂出vs英明
松本竜也(英明)
“ドラフト候補 vs 急成長株。「珠玉の投手戦」制したのは坂出!”
プレーボールの声がかかるときには時ならぬ激しい雪。その後、試合途中には強い日差しに覆われるも、試合終了と同時に再び空からは雨が・・・。天気は激しく移ろいゆいたものの、それとは対照的にこの試合における両先発の安定感は際立っていた。
昨夏甲子園出場・英明の先発マウンドに立ったのは最速145キロの直球を誇る190センチ左腕の松本竜也(3年)。昨秋県大会では制球難を意識しすぎたことと、スタミナ不足により終盤は120キロ台にまで球速が落ちるなど課題山積の状況だった。
が、この日の松本は冒頭に記した悪天候にもかかわらずストレートは最速141キロ、常時130キロ台後半を計測。さらに、冬に起伏に富んだグラウンド周辺を走りこんだことにより、球速以上に力強さを増したボールが低めにビシビシと決まっていた。
この試合、松本は10回を完投し、9安打を浴びるも11奪三振1四球2失点(自責点1)と粘り強さも披露・これまでは大型左腕というフレーズの下に話題先行の感があった松本であるが、この調子と精神力であればドラフト候補のみならず、上位指名候補として名があがっても必然の出来であった。
石井俊成(坂出)
ただし、対する坂出先発右腕・石井俊成(3年)の状態は松本以上。球速こそ最速136キロと松本には及ばなかったものの、「去年まではスライダーだけだったが、この冬にカットボールとツーシーム系を覚えたことで投球に幅が出てきたし、本人にも欲が出てきた」と搆口秀敏監督も語ったように、「ストレートから握り方を少し変えた」フォーク系のボールで強打・英明打線を翻弄。
終わってみれば「真っ直ぐに威力があったので、(4番)の中内(大登)に対してもインコースを攻めさせた」大山史晴(3年)の好リードもあり、2安打6四死球10奪三振1失点。石井は昨秋までエースもけがで離脱中の最速138キロ右腕・森岡祐介(3年)の穴をいくばくも感じさせない活躍を見せたのだ。
かくして試合の凱歌は、延長10回に1番・多木祐介(2年)が大学日本代表の兄・裕史(坂出→法政大3年を思わせる逆方向に落とすレフト線決勝2塁打により「勝ってこそ意味のある試合」(搆口監督)を制した坂出の側に。
とはいえ、「珠玉の投手戦」という一言では片付けられないほど内容濃き一戦は、勝敗を問わず両チームにとって大きな収穫となったに違いない。
(文=寺下友徳)
とはいえ、「珠玉の投手戦」という一言では片付けられないほど内容濃き一戦は、勝敗を問わず両チームにとって大きな収穫となったに違いない。
(文=寺下友徳)