江崎 龍成選手 (東筑)

寸評

　3番・捕手として、チームを攻守で牽引してきた選手。特に安定した下半身を生かし、全く開かず捌ける内角打ちは特筆もの。打撃の技術の素晴らしさは、2011年度の福岡球界でも屈指のものがあった。 （ディフェンス面） 　ミットを投手にしっかり示すので、投手としては的をつけやすいと思います。またグラブをけして地面に下げないで構え常に腕先が緊張状態にあるので、グラブ捌きなどには、あまり柔らかさを感じません。そのためキャッチングには、それほど光る選手ではありませんでした。また小柄ではあるのですが、けしてフットワークを活かすタイプではなく、ワンバウンド処理などに機敏さは感じません。地肩に関してはよくわかりませんでしたが、ことディフェンス力という意味では極普通の高校生捕手かなという印象です。打撃ではガンガンチームを引っ張りますが、ディフェンスでは投手の気持ちを察しながらプレーする配慮型の捕手でした。 （打撃内容） 　完全に光るのは、打撃の方にあります。ボールをよ～く引きつけて叩き、自分のポイントまでボールを呼び込みます。打球も、右にも左にもセンターへも打ち返します。少し体格は小柄ですが、智弁和歌山時代の武内晋一（ヤクルト）に何処となく似ております。 ＜構え＞ 　スクエアスタンスで、グリップを高く添えた強打者スタイル。腰がどっしり据わり、非常に下半身に安定感があるのが、この選手の素晴らしいところ。全体のバランス・両目で前を見据える姿勢などは平均的、もう少し自分のリズムなどを刻めると、なお柔らかさが出て良いのではないのでしょうか。 ＜始動＞ 　始動は、長距離打者が採用するような遅いタイミングで始動。ボールをよ～く手元まで引きつけて、一気に振り出すスタイルです。上背はないのですが、本質的にボールを遠くに運べる資質があります。将来的には、もっと長打力が光ってきても不思議ではありません。 ＜下半身＞ 　足を引き上げて降ろすまでの「間」は限られているので、あらかじめ狙い球を絞って叩くタイプ。この選手の場合、その多くがストレートに合わせているようでした。強打者らしく、ベース側にインステップして踏み込みます。それでも内角の捌きは窮屈にはならず、全く開かないでボールを捌ける技術は一級品。踏み込んだ足元もブレないので、外の球でもきっちり叩けます。 ＜上半身＞ 　あらかじめトップの位置にグリップを添えているので、始動は遅くても速いボールに立ち遅れる心配はありません。上からボールに向かって、一気に振り下ろされて無駄がありません。強くしっかり叩けており、最後まで振りきれています。ボールを捉えるセンスも悪く有りませんし、動作に無駄なものが全くないのが凄いと思います。特に内角の球でも、全く開かずに捌いてヒットになるのだと驚かされました。フォロースルーなどが使えるようになる、更に長打力がついて来るのではないのでしょうか。 ＜軸＞ 　足の上げ下げも静かなので、頭の動きが極めて小さいです。そのため目線は、ほとんど狂いません。体の開きも我慢できておりますし、軸足にも崩れが見られません。安定した下半身を元に、実に狂いの少ないスイングができています。本当に打つことに関しては、ほとんどいじるところがないぐらいです。

将来の可能性

　捕手として並ですし、上背もあるタイプではありません。そのためドラフト候補云々というタイプではありませんが、アマチュアのどのレベルに混ざっても通用するのではないかと思わせるほど素晴らしい資質の持ち主です。 　ぜひ強豪・名門と呼ばれるところに入って、もっともっと好い投手と対戦して経験を積んで欲しいですね。この選手が、その打撃で何処まで突き進むのか、個人的には大変興味があります。特に打撃の比重が大きいので、長打力が出てくると存在感を増すと思います。自分の可能性を信じて、ぜひ野球道を追求して頂きたい！