LINEによるリモート指導で成長する西野田工科(大阪) 選手たちとの密なコミュニケーションで再開待つ
1日で150、200件のやり取りが行われるLINE上のコミュニケーション
選手たちが取り組む日誌の一部
昨年、1年生だけのチームで秋の大会に挑み、初戦で近大付に敗れたものの5回まで接戦を演じた西野田工科。夏、そして秋と公式戦に舞台を経験した1年生が進級し、春からは後輩たちを迎え入れて上位進出を考えていたが、新型コロナウイルスの影響で活動が止まった。
3月に入ってすぐに自粛となり、全体練習が一度もできないまま5月の長期休みも終わった。6月15日から部活動再開予定だが、「今はコロナ感染の第2派が押し寄せてくることなく、6月15日に無事再開できることを願っています」と電話取材で語ったのは部長の中村亮先生。
公立校は一律活動ができていないため、横一線で再開することには決まっており、「ウチをはじめどこも体力や技術が落ちてしまうと思うんですが、そこを何とか最小限に。理想は維持してきてほしい」と選手たちがきっちり練習をしてきてくれることを祈っている。
その願いを伝えるべく、西野田工科は3月からLINEを駆使したコミュニケーションを開始。選手と監督が毎日グループLINE上でコミュニケーションをとっており、「1日150とか200件くらいやり取りするので、鳴りやまないですね」と活発に活動していることがわかる。
では肝心のやり取りの中身はどうなっているのか。自粛前に渡した体幹や素振りといった練習メニューから選手たちが練習を選び、自主練習で取り組む。その時に何を意識して、どれくらい取り組んだのか。さらに食事の回数など野球だけではなく、食生活までノートに記入して写真で取って提出。チームを指揮する山本聡士監督がそれを見て、細かなところまでアドバイスや指摘をする。それを選手21人全員とやり取りをしているのだ。
今回の事態を受けて、「選手の状態を確認したかったですし、任せておくのが不安で」ということで初めて取り組み始めた。最初の時期は報告のやり方から指導をし、なかなか野球の話まで進まなかったが、3週間たった3月下旬ごろからスムーズにコミュニケーションが取れるようになり、LINEでリモート指導が軌道に乗り出した。
「自分がやった練習を報告する分、再開した時は練習量にあった成長をしないとおかしいので、選手たちは緊張感をもって過ごせているように思えます」
実際にチームを指揮する山本監督にもお話を聞くと、今回の野球日誌の取り組みについてこのように語る。
「改良を重ねて4度目になるのですが、昨年から振り返りシートなど書く習慣がありましたので、その延長になります。最初は書くのが苦手だった選手も、少しずつ出来るようになってきましたね」
リモート指導の弱点も克服し、再開を待つ
山本監督が送るLINEでのやり取り
だがリモートでの指導だと、その場で伝えられない分、指導するのが難しいという弱点がある。時折練習の様子を映像でもらって指導しているそうだが、それでも限界がある。しかしその点に関しては「こちらからのメッセージが伝わっています」と手ごたえがある。なぜ手ごたえがあるのか。それは日ごろの指導に隠されていた。
「素振りや捕球に関してはチェックポイントや、基本の型みたいなものを1年間通じて監督から選手に伝えていました。選手はそれを理解しているので、言葉だけのやり取りでもわかるんですよ」
常に伝えてきた指導のツボを選手と監督が共有できたから、西野田工科はリモートでもしっかりメッセージを送ることができているのだ。山本監督も1年間通じて選手たちの成長を感じている。
「最初は練習試合でも5回で打ち切りにしてもらったりすることもあったんですが、秋季大会の近大付戦など昨秋から少しずつ伸びてきまして、1年間やってきた細かな部分まで身についてきたと思います」
ここまでは主将である温川大駆をはじめとした投手を中心として守備中心のチームだったが、平均でも700、800回の素振り。多い選手は1000回の素振りをこなすなど、打力も少しずつ追いついてきた。この期間を活かして引き続き体力強化とスイングを中心に取り組み、再開を待つ。
今年から入ってくる新入生も、20名前後が予定されている。山本監督はこの言葉を残した。
「選手や保護者にも話はしていますが、ウチで野球をやる1番の目的は人間的成長。2年と4ヵ月で高校野球は終わりますが、その期間に身に付けた人間力はその後何十年も活き続けます。だから野球だけでなく人として成長していくよう指導しています。人間的に成長したいと思ってくれる子が1人でも多く入って来てくれたらと思っています」
甲子園予選である地方大会は中止となり、「直接会ってから今回のことは選手と直接顔を合わせて話ができればと思います」と語った山本監督。現在は山本監督自ら日めくりカレンダーも送るなど、モチベーション維持に努めながら再開日の6月15日を待っている。大阪独自大会が開催されることを信じて、西野田工科も一歩ずつ前へ進んでいく。
(取材=田中 裕毅)
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