城西大城西陸上部「速く走れるフォームとは?そのコツと練習法を紹介!」【後編】
後編では城西大城西陸上部が薦めるトレーニングメニューを紹介!また速く走るための考え方はぜひ学んで、日々のランメニューから取り入れていきましょう。
速く走るための基本的な考え方
長座になっての高速腕振り(城西大城西)
野球ではよく「攻守走三拍子揃った選手」なる表現が用いられる。裏を返せば、本来野手は「打つ」「守る」「走る」の3つの要素が求められていることになる。だが、打撃や守備の技術は磨いていても、走り方については、案外無頓着な選手が多いのでは。もしかしたら「野球を始めてから走るフォームは1度も気にしたことがない」という選手もいるかもしれない。しかしそれは、山村 貴彦監督に言わせると「もったいないですね」となる。
「体の使い方次第で打球の勢いが変わってくるように、走るスピードも理に適った、正しい体の使い方をすれば速くなる」からだ。ストライドが伸びるなどして、一塁への駆け抜けがコンマ1秒速くなれば、出塁の確率もそれだけ高まる。ではどうすれば速く走れる正しい走り方が出来るのか?
「まずはそのための基本的な考え方を知ってほしいですね。正しい走りをするためのカギは、体の中心部分をいかに早く進めるか。体の中心部から移動して、でん部(お尻)を動かすことで自然につま先が出てきます。わかりやすく説明しましょう。着物を着ている女性が走る姿を想像してみてください。着物が邪魔になるので、スムーズに走れないですし、チョコチョコとつま先だけを使う感じになりますよね。しかしその女性がズボンを履けば、スムーズに走れる。なぜか?ズボンなら足の付け根を動かせるからです。ここが動くなら、ヒザから下の動きを一切意識する必要はありません。ムチに例えるなら、足の付け根は持つところ。そこを動かせば自然にヒザから下は動くのです」
野球の投球・打撃フォーム同様に、上下の連動もポイントだという。
「腕振りだけでは、足を早く動かすだけでは速く走れません。上と下の動きがかみ合ってこそ速く走れるのです」
打撃が漠然と本数を重ねてもなかなかレベルアップにつながらないように、ただ走っているだけではなかなか速くならない。基本的な考えを知ることが、速く走るための第一歩だ。
野球選手も取り入れたい陸上のトレーニングメニュー
腹筋で体幹を鍛える(城西大城西)
取材日はハードルを使っての腸腰筋(ちょうようきん=簡単に言うと、走る時に足を引き上げる筋肉だ)を鍛えるメニュー、腹筋などの体幹メニュー、シャフトを使って肩甲骨周りを鍛えるものなど、補強種目を中心とする14種類のメニューを組み合わせた「サーキットB」が行われていた。山村監督は「スペースが限られていますからね。普通は別々にやるメニューを組み合わせ、サーキットにすることで心肺機能も高めるわけです」と説明する。
ちなみに「サーキットB」はA、B、Cと3つあるサーキットメニューの1つ。テニスコートほどのスペースを1周する形で14種類のメニューを行い、2周で1セット。この日は4セットだった。オフ期は量をこなすことに重点を置くが、シーズン中は種目数を減らして、いかに早くと、こなしていくスピードに重点を置くという。それにしても「サーキットB」は密度が濃い。むろん陸上選手向けではあるが、野球での動きも強化できるので、このままそっくりオフのトレーニングメニューにしてもいいように感じる。
練習メニューは「サーキットB」の他にもいろいろあったが、これも含め、取材日に行われていたものの中から、野球選手にもお勧めのトレーニング種目をいくつか紹介してもらった。
●ミニハードル(「サーキットB」の種目)
大きくジャンプする種目と、小さくジャンプする種目の2種類を行っていた。ともに瞬発力を高めるのが目的だが、後者では主に足首を鍛える。
体幹や様々な筋肉を鍛えるトレーニング
●ダイナマックス(「サーキットB」の種目)
5㎏ほどのメディシンボールをスクワットの体勢から下半身を使って、パートナーに向けて一気に投げる。腕で投げるのではなく、下半身で投げるのがポイント。内籐先生によると、このダイナマックスは、スタートダッシュのパフォーマンスを高めるのが目的だという。一方、ボールをキャッチする側は、その際に体幹が鍛えられるそうだ。
この体勢以外にも背面から投げたり、足にはさんで相手にボールを送ったり、ボールを高く放り投げたり…「投げる形を変えることで、スタートダッシュに必要な様々な筋肉を鍛えていきます。例えば、高く投げることで太腿の裏側の筋肉(ハムストリング)を強化します」(内籐先生)
●ハードル柔軟(前後、左右)=(「サーキットB」の種目)
ハードルを手で支え、足を前後、あるいは左右に、ハードルの高さを超えるところまで振り上げる。股関節の可動域を広げるとともに、走る時に足を引き上げる役目をする腸腰筋を鍛える。
●ハードルジャンプ
並べられたハードルを、足を閉じて、または足を開いて、順番に跳び越えていく。ポイントはより高く両足でジャンプするのと、いかに接地時間を短くするか。ハードルジャンプは、ジャンプをしながら前に進むので、重心移動の要素もあるという。内籐先生は「競技力がある、瞬発力が高い選手は、トントントンと着地の音をあまり立てずにリズム良く進んでいきます」と教えてくれた。
限られた環境下の中で、城西大城西陸上部は練習の取り組む意識を改め、そしてメニューも工夫し、全国レベルの陸上部へ成長していった。山村監督が話すように、まず正しい走り方を知らなければ、プレーの可能性は広がってこないというのが分かる。ライバルに差をつけるのならば、まず走り方から見直していこう。
(取材/文・上原 伸一)
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