Column

集中力の高め方

2014.03.03

遠藤友彦の人間力!

 試合中、選手から「集中しよう」指導者から「集中していけ」という言葉が飛び交います。集中という言葉が試合中に出るときは負けているときが多いのですが、ここから試合を盛り返し逆転するまではかなり難しいでしょう。

 普段の練習でも、だらけてきたときに指導者は「集中しなさい」と言いますが、なかなか思い描くような動きに選手はなってくれません。

 なぜ、「集中」という言葉を使ってプラスの方向に行かないのでしょうか。私が秘密塾という指導者向けの講座を全国で実施していますが、参加される指導者の方々に必ず「集中」と「意識」の話をします。チーム指導を行うときに選手にも同じように話します。試合に勝つためにはかなり重要なことなのです。

何に集中するのか

ボールを一つずつ乗せて集中力を鍛えるトレーニング

 集中は【主語】がないとプラスの方向に絶対にいかないのです。冷静に考えると当たり前のことですが、野球の世界は抽象的な言葉をよく使います。言葉は分かりますが、抽象的過ぎて選手は動けないのです。

 私は、集中を「意識」という言葉に置き換えます。選手は、試合中・練習中「何を」意識するのかが重要なのです。

 野球は「事が起きてから」反省しても試合はもう負けています。大抵は、終わってから「こうすればよかった」「ああしておけば」と思うものです。プロ野球みたいに「次」があればいいのですが、アマチュア野球は「負ければ終わり」の厳しいトーナメントです。

成果を出すための3つの流れ

(写真:酒田南 三浦颯大選手)

 事が起きる前に、防げるマイナスの種を摘まないといけないのです。ここまでは何となく理解されたでしょうか。事が起きる前に「何か」を意識しながら野球をすると成果が出やすいのですが、この「何か」がほとんどの野球選手・指導者が間違っているのです。

 能力があっても発揮できない選手、準備万端でコンディションを整えたのにも関わらず、試合での意識の仕方が悪くて勝利に近づいていかないチーム。能力が劣っていてもチームを勝利に導くのが私の十八番、集中の仕方(意識の仕方)で弱者が強者に勝ったりできるのが野球です。今回は、秘密塾で公開しているものを一部抜粋していきましょう。

 試合になると選手は、何を頭の中で描いているのでしょうか。99%の選手は【結果】です。最終回0対1で負けていて二死満塁の場面、打席に入っている選手は「絶対にランナーを帰す」「タイムリーで逆転勝ち」を考えます。

 結果を考えると「できなかったら」の不安がよぎり、身体が思うように動きません。心と身体が一対になっているので無理もありません。普段は簡単に打てる球もミスショットします。成果の出す流れは3つあります。

(1)球種を読む
(2)ボールを見極められる形を意識する
(3)思い切り(積極性)

この3つが揃ったときに結果が生まれます。

 野球選手が最終的に戦う相手は【結果思考】という魔物です。結果を描けば「結果的に結果が出ない」流れになります。選手は結果を意識するあまり、考えるべきこと((1)~(3))を考えられないのです。

 私が携わったチームで昨年(平成25年春)甲子園ベスト4まで進出した高知高校で取り組んだことを紹介しましょう。

 試合数日前の練習で、バントを全員でやっていました。練習中ミスを繰り返す中で、選手から「しっかり」という声が飛びます。残念ながらこれは「事が起こった後の言葉」です。野球は終わった後に何か言ってもダメなのです。大事なのは、事が起こる前にミスを防がないといけないのです。選手とのミーティングの中で、次のような言葉を投げ掛けました。

「バントを成功するために必要なことは何か。ストライクゾーン高めにバットを構え、バットの後ろから覗き込むように力を抜いて待つ。自分がイメージしているストライクゾーンが来れば、軸足を引きながら柔らかく合わせる。全員が知っていることだが、選手は”その時になれば”絶対に頭から意識事項が飛んでしまう。じゃ、どうする!?」

 終わってからこうすればいいと指摘し合っても試合は終わっています。高知高校の春の甲子園では「言葉の仕組みづくり」を裏でしていたのです。試合に出ている当人が意識できなくなるのだから、事が起こる前に「●●を意識しよう」「●●に集中しよう」という【動作】の言葉を周囲が飛ばします。すると、緊張のあまり忘れていた選手が、事が起きる前に思い出し打席内で意識できるようになります。

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[page_break:成果を出すための3つの流れ]

意識して出来なければ技術不足

「今までの意識と行動を変えるノート」 沖縄尚学高校

『意識して出来なければ技術不足。』

 これはしょうがない領域です。でも、意識しないで失敗したあとに「こうすればよかった」は後悔に繋がります。その後悔が尾を引いてプラスの流れになりにくくしているのです。練習でも、バントする前に周囲から「●●を意識」と声をかけるのです。事が起きる前に使う言葉で、選手の動きが大きく変わっていきます。

 言葉に耳を傾けて動作を意識することは、言い換えると【余裕】を持ってプレーしていることになります。

 集中は「無になる」と勘違いしている人もいます。私の考え方的には無でやるよりも、頭の整理をしつつプレーするのがエントモイズムの根幹、それが成果に繋がっていきます。

 動きに意識(集中)したほうが、身体はスムーズに動きます。先ほどの【結果思考】も起きにくくなるのです。秘密塾では、10講座25時間かけて「何に意識を傾けるのか」を公開しています。ポジション別、場面ごとに目安があるのです。大事なのは、抽象的にならないで具体的に「何」を明確にすることです。

 漠然と「集中しよう」と言葉を使っても意味がないのは理解された思います。

 野球は防げるミスを最大限に防いだチームが最後に勝利します。結果の出やすい考え方は、結果を考えずに「動きに集中」することです。

相手の目線で考える

マウンドに集まる龍谷大平安高校 内野陣

 自分に矢印を向けすぎるとどうしても結果を描くのが野球選手です。ピンチのときに【相手】を考えるのが、プラスに考えるコツです。相手目線で「今、何を考えているのか」に集中すると見えてくるものがあります。

 2ストライクに追い込んだ投手は「決めよう」と力が入ります。力が入ればコントロールミスが置きやすくなります。状況は打者が追い込まれていても、チャンスボールが来るかもしれないのです。結果に意識を置いて「やばいやばい」と自分に矢印が向いている打者は、チャンスボールを仕留めきれません。

「力んでコントロールミスするぞ!」

 相手目線でプラスに考えて待っていたほうが、身体はスムーズに動きます。何に集中するかで大きく成果が変わってくるのです。こういった「ちょっとした集中の仕方」で結果が変わることを選手向け野球講演や指導者向け講座(秘密塾)で公開しています。

 事が起きる前に発する言葉(何に集中させるか)を研究してみましょう。今までと違う世界が見えてくるに違いありません。

(文=遠藤 友彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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