Column

ホームランを打つ

2013.10.22

遠藤友彦の人間力!

 

 「ホームランを打つ」

 どんな野球選手でも「ホームランを打ちたい」と思うことでしょう。フルスイングするけど遠くに飛んでくれない・・、飛ばそうとしてこういった経験をしていることと思います。

 カキン!

「ホームランを放ったあとに、スランプのどつぼにはまって打てなくなってしまった・・」、
この経験も多いのではないでしょうか。

 今回のコラムは「飛ばす」ということに焦点を絞って話していきます。高校野球を指導していると「スイングスピード」にこだわる指導者がいます。スピードガンで選手のスイングスピードを計測し「速くしよう」と練習していきます。

 残念ながらブンブン振れるようになっても「飛ばない」「当たらない」という現象が起きます。どうしてもスイングを速くしようと思うと、上体ばかりに力が入りエントモイズムで一番大事な「柔らかさ」から遠ざかっていきます。

“合わせ力”とは何か?

 私の考え方では打撃で一番大事なのは【合わせ力】です。ストレートでも変化球でも、いかに合わせるかが重要です。その合わせ方にもコツがあります。

 例えば、車同士の事故が起きるとします。直進していた車が、横から突っ込んできた車と衝突したとします。スピードにもよりますが、横から突っ込まれたときに大破するまでの事故にはなりません。

 では、同じスピードで正面での事故だったらどうでしょうか。正面衝突であれば、お互いの車が大破しグッシャリいくことでしょう。

 私が選手に指導するときに「正面衝突」を意識しようと言います。右打者が左投手と対戦しているとします。左投手が大きなカーブを投げてきたとします。右打者がドアスイングで外から巻き込んで振れば「横からの衝突」となります。ファールになるか、もしくはスイング軌道とカーブの軌道が噛み合わずに空振りになります。

 どんなにフルスイングしても、横からの衝突だったり、噛み合わない軌道のスイングをしているとホームランどころか凡打の山になることでしょう。

 左投手のカーブを右打者が打つためには、身体の内側からインサイドアウトの軌道で正面衝突させたほうがヒットゾーンに飛びますし、角度が良ければ遠くに飛んでいきます。

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[page_break:小さな身体でもホームランは確実に打てる!!]

小さな身体でもホームランは確実に打てる!!

 遠くに飛ばさないのが、遠くに飛ばすコツ

 この文章をみてどう思いますか?

 野球選手であれば遠くに飛ばしたいのはわかります。私も高校のときに「飛ばそう」と考えて打撃をしていた時期もありました。社会人野球に進み、投手の精度が上がれば闇雲にフルスイングしても、ドアスイングで思い切り振っても結果が出せないことに氣づきました。

 どう合わせるか・・が重要で、しっかり軸足側に持っている力をためて、タイミングよく正面衝突すれば【結果的に】飛んでくれるのです。ここ重要なポイントです。

 結果的に飛ぶ!

 私の中で合わせられる打撃の形はあります。かなり細かいポイントがありますが(考える野球ノートに書いています)、簡単にポイントを書くと、

1 ためる

2 インサイドアウトで正面衝突

 テクニック的にはこの2点が代表的です。この「形」だけでは成果は出せません。エントモ的考える野球の醍醐味でもある「読んで打つ」ことで、合わせ力を高めます。

 私が言う「読む」ということは「ヤマ勘」と違います。何らかの根拠で相手投手の球種を選定し、100%思考で振ります。100%思考とは、「この球種だけ」と100%迷いなく打ちに行くということです。

 普通であれば打席の中で「ストレートかな、いやスライダーかな」と迷いがあることでしょう。迷いはカウントによっては不安へと変化していき、自分の動きを悪くしていきます。チャンスで身体が動かない、ピンチで出塁できないのは【迷いと結果思考】が原因です。

 エントモイズムで成果を出す秘訣は、徹底した行動思考ができるかどうかです。「この球種を狙う」という100%思考と、柔らかくトップを作ってためて、インサイドアウトで正面衝突することだけを考える・・

 ガツン!

 頭の整理をしながら、行動に集中すればホームランも夢じゃありません。

 社会人野球の選手は、身長160センチ程度の小さな選手でも都市対抗全国大会の東京ドームでホームランを打ち込みます。

 高校生であれば、「俺は身体が小さいから飛ばすのは無理」と最初から思っています。もう一度言います・・

 腕力で飛ばそうとすれば、絶対に小さな打者はホームランは難しくなります。相手の球が速ければ”きっちり当てれば”反発していくので飛んでいきます。反発が少ない遅い球は遠くに飛ばすことは厳しいのです。相手の速球は、飛ばす大チャンスなのです。

 小学生、中学生のときに「身体の大きいやつがホームランを打つ」ということはあったと思います。同じ年代の投手がそんなに良くなかったら力任せに飛ばすことも可能です。でもそんな身体の大きな打者が高校生になったら、全然打てなくなることもあるのです。

 力より合わせ力です!

 投手の精度が上がれば「合わせ力」が求められます。中学までの成功体験で「ブンブン振れば飛ぶ」と勘違いしている打者は、高校クラスの好投手にはまったく・・ってことは良くあります。

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[page_break:飛ばそうとしないで飛ばすコツをおさらいしよう]

飛ばそうとしないで飛ばすコツをおさらいしよう

 私が社会人現役選手のときに、ある指導者の方から「飛ばしたいのならば短くバットを持て」と指導されました。当時の私は、「180センチ以上あるのにどうしてバットを短く持たないといけないんだ。格好悪いな・・」と思いました。

 しかし、飛ばしたいという欲求があるので「素直にやってみるか」とバットを短く持ったのです。今までは長く持って遠心力で飛ばそうとしていたので真逆のやり方です。しかしどうでしょう、面白いように飛距離が変わってスタンドにスコンスコン飛ぶようになったのです。

 今まではバットを長く持って「合わせ力が低い」状態でしたが、短く持つことで「最短距離でバットが振れて(インサイドアウト)、バットの操作性がいいので正面衝突に持っていける」感じに変わっていたのです。

 これは私の体験談ですが、短く持って飛ぶようになる選手は全国にたくさんいることでしょう。

「ボールが当たる10センチくらいの場所をいかに速くスイングできるかどうかだ」

 指導してくれた人がもうひとつヒントをくれました。インパクトの前後5センチをMAXのスピードに持っていくということです。

 と、いうことは・・

 最初から力んでトップの形が固ければ、スイングして加速するどころかインパクトで失速して力が抜けることでしょう。

 トップでは、スーパーリラックス状態で柔らかく待っていて、スイングし初めて徐々に加速しインパクトでMAXになるというのが衝突の熱量を上げることになります。

 ここまで読んだ人は、闇雲にフルスイングしても飛ぶわけない・・と理解されたことでしょう。私の考え方は、「いかに成果を出すのか」です。もちろん形も重要で、そこに戦略的な読みも加わります。そして打者の永遠のテーマである「どう力を抜くのか」が確率よくできるようになればホームランはもう目の前です。

 飛ばすという魔法にかかって打撃を崩した人をたくさん見てきました。最後にもう一度言います・・

 飛ばそうとしないで飛ばす。結果的に遠くに飛んでもらう。

 ホームランは誰も打ちたいと思っていますが、打つメカニックを知らないと怪我もします。どうぞこのコラムを何度も読み直して挑戦してみてください。

(文=遠藤友彦

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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