野球ノートに書いた甲子園3 高校野球ドットコム編集部 KKベストセラーズ
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書評
毎日練習を行うことと同じように、「野球ノート」を書くことが自分自身やチームにとって大きな力となり財産となる。野球ノートの習慣を実践し、チームの力にしている6校を取材したシリーズ第3弾が刊行されました。今回登場する6校(佐賀北高校、健大高崎高校、向上高校、四條畷高校、静岡高校、松商学園高校)の野球ノートに対する取り組み方は、一人一人野球ノートを書いて、監督に提出するスタイルから一冊のノートを全員で書く交換日記型式のものまでさまざま。ここに共通するのは書くことでコミュニケーションの補完になっているという点が挙げられます。
佐賀北高校では毎日選手が監督に野球ノートを提出することが約束事となっています。こうしたノートのやり取りでは、直接面と向かって言いにくいことでも、ノートに自分の思いを書いて提出すると監督からコメントをもらえたり、さらに問題点を指摘されたりすることによって、監督と選手それぞれの思いを共有することができます。
例えばケガからの復帰を目指す古賀 佑太朗選手の野球ノートには、プレーが出来ないことへの焦りやいらだちが随所に現れており、そこを百﨑 敏克監督は親身になってアドバイスをしたり、時には厳しい言葉で甘えを指摘したりしながら、夏の大会に向けた古賀選手の復帰を後押しします。もちろん直接的なコミュニケーションも大切ですが、一対多数では十分に行き届かないことや誤解を招くといったこともあるでしょう。野球ノートを通じてのやり取りは、選手の本音に近づける手段の一つとして大いに活用できるという一例だと思います。
また府内有数の進学校として知られる四條畷高校も、野球ノートに取り組むチームの一つです。こちらは一冊のノートを監督と女子マネージャーを含む野球部員で毎日つなぎ、書き残していくというもの。部員数が多くなるとそれだけ書く機会が減ってしまうということにもなりますが、他の部員がどう感じてどのような思いで野球をやっているのか、それに対する監督のコメントなどを部員全員で共有することができます。
「たとえ練習中に野球ノートを読んでいても問題ない。ノートを読むことも練習だ」とは辻野 茂樹監督の言葉。書く機会が少なくても前回書いた1ヶ月前の状態よりも内容が良くなっていたり、逆に気持ちの面でムラが出ているのでサポートが必要だと感じさせられたりと、野球ノートが気づかせてくれることはたくさんあります。
「最後まで続けたら絶対いいことがあるから」と後輩マネージャーに野球ノートを託したマネージャーの宮部 梨花さん。「チームを支える」のではなく「チームを創る」。野球部員に結束力が生まれ、一丸となって試合に臨む姿は野球ノートによって培われたものが大きいと感じさせられました。
(書評:西村 典子)
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