理は変革の中に在り 野村克也著 KKベストセラーズ
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新緑の間から漏れる日差しをきつく感じ始めると、もう夏はすぐそこ。3年生にとって最後の夏が始まります。高校生活の集大成となる2カ月です。皆さんは、悔いのない夏を過ごすために、最後の一日までグラウンドで汗を流していることだと思います。
もっと上手くなりたい! もっと速い球を投げたい! 球を遠くに飛ばしたい! そういう思いが強すぎて、焦っている人もいるでしょう。しかし、どう頑張っても野球のテクニックは、急に伸びたりすることはありません。今日、いきなり140キロの速球を投げられるようにはならないものです。
では目の前に迫った試合に向けて、何ができるでしょうか。野球は急に上手くならないにしても、どうしても次の試合は勝ちたい、勝たなければいけない。そんな人は、『理は変革の中に在り』(野村克也著 KKベストセラーズ刊)を開けてみてはどうでしょう。
カーブをどうやって打てるようになったか
ご存知の通り、野村元監督は選手としても監督としても、偉大な記録を残しています。日本野球界のスターですが、そのスタートは決して華々しいものではありませんでした。1954年にテスト生として南海ホークスに入団。不器用ながらも、真面目さを買われ一軍の試合にも起用されますが、そのオフに解雇の危機に遭います。スタッフに何度も頭を下げて生き残り、成功への道を歩み始めます。誰も成し遂げたことのないようなサクセスを野村元監督が実現できたのは、「思考」、「感性」そして「勇気」を武器にして、常に自分を変え続けたからです。
不器用だから、失敗をしてしまいます。それ自体は、致命傷にはなりません。でも、同じ失敗を重ね続けると傷口が広がり取り返しのつかないことになってしまいます。野村元監督は、そういう負のスパイラルから抜け出すために、自分の欠点を「思考」し、「感性」でどこを変えればよいかを察知し、「勇気」をもって自分を変えていったのです。
この本の中に、野村元監督のカーブ打ちのエピソードがあります。カーブが打てなかった元監督は、どうすれば打てるのかを「思考」します。そして、事前にカーブが来ることを知るにはどうするべきかと「感性」を働かせます。そうして、球種を知るために誰もやっていなかった方法を「勇気」を持って実践したのです。そうすることで、常に打率を3割キープすることに成功します。
変革の輪をチームに広げてみよう
球児の皆さんは、1度でも負ければ終わりという過酷なトーナメントに挑みます。そのプレッシャーは、恐らくプロ野球選手よりも大きなものでしょう。負けたくないなら、自分が変わるしかありません。140キロの速球は投げられないかもしれないけれど、140キロに見える速球は投げられるかもしれない。球を遠くに飛ばせないけど、来る球が分かれば飛ばせるかもしれない。
野村元監督が、自分の欠点を克服したように、皆さんも、自分の欠点をどうしたら克服できるかを考えてみてください。もし、いいアイディアが浮かばなければ、周りの仲間に相談してみて、輪を広げてみてはどうでしょう。そして、あなたも仲間が欠点を克服するために、何が必要かを考えてみてください。それをチーム全体に広げれば、あなたも上手くなり、チームの力もアップします。
最後の夏、皆さんが悔いのない過ごすことを期待します。
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(文・高校野球ドットコム編集部)