アメリカの少年野球 こんなに日本と違ってた 小国綾子著 径書房
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書評
日本は「野球」、アメリカは「ベースボール」。アメリカから伝わった競技は、今や日本でも多くの子どもたちが楽しむスポーツとなりました。これは家族でアメリカに移住することになった著者が、少年野球をアメリカでも続けたい!という子ども(太郎)のために、文化の違いやその育成システムに戸惑いながらも奮闘するノンフィクションです。
日本であれば同じチームで同じメンバーが切磋琢磨しながら練習を積み、年に何回か行われる大きな大会を目標に活動するのが一般的ですが、アメリカでは同じチームで毎年プレーすることのほうが珍しいようです。シーズンが終わればチームは解散し、新しくメンバーを募集して選抜試験(セレクション)を行い新チームを作る。遠征などを伴ってよりレベルの高い大会に出場するトラベルチーム、全員が楽しく野球をすることを一番に考えるレクチームという二つのカテゴリーがあること。守備は9人、打席は9人以上、時には全員回ってくるという独特のシステムがあること。家庭教師のようにプライベート・レッスンを受けて、技術向上を指導してもらうこともごく当たり前に行われていること等々、いろいろとビックリさせられることが多いです。
少年野球を支える親の存在も大きなウエイトを占めます。自分の子どもの環境を一番に考え、技術が伴わないと感じたらワンランク下のチームに移籍させ、そこで自信をつけさせるようにするといったことも「親の仕事」なのです。アメリカは「ドアの国」。自分の力で思い切りドンドンと叩かないとドアは開けられない。一方で日本は「障子の国」。ドンドンと叩いたら障子は破れてしまうので、場を乱さず、音もなく開けなければならない。なるほどなぁと感心してしまいました。シャイな太郎が語学の壁を乗り越え、アメリカの地で笑顔でプレーすることができるようになるまでのまさに奮闘記。挑戦することが何よりも評価されるアメリカならではの野球文化は、日本においても参考になるところがたくさんあると思います。
(書評:西村典子)