逆境を生き抜く力 我喜屋優 WAVE出版
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書評
「人生はいいことばかりではない。物事というのは、うまくいかないことのほうが圧倒的に多い」(「はじめに」より)。逆境に立たされたときにその人の本当の姿が見えるという、沖縄県興南高校監督・我喜屋優さんの著書です。私たちも普段感じることが多いと思います。「どうしていいかわからない」と。こうしたことに対し、我喜屋さんは「目の前の小さなことをおろそかにしていないか、考えよう」とおっしゃっています。
2010年春のセンバツ・夏の選手権大会の連覇を果たし、沖縄県勢初の夏の甲子園優勝を達成した興南高校。しかしそこに達するまでの道のりは決して平坦ではなく、2007年に監督に就任した当時のことを振り返って「これでは野球が強くなるはずがない」と確信したと言います。野球よりも前に生活指導に力を注ぎ、まずは「人間の根っこ」を作ることで逆境に対するストレス耐性を育てることを試みました。たとえば、
・夜更かしはやめて睡眠時間を確保する
・食事は残さず食べる
・大きな声であいさつをする
等、意識すればすぐにでも実践できるものばかりです。だからこそこういったことをおろそかにしていないか、振り返って考える必要があるのです。さらには「子どもたちにあいさつをさせたいなら、自分がまずあいさつをする。生徒にゴミを拾わせたいなら、自分がまず率先してゴミを拾う。自分が変われば、相手もかならず変わる。口先だけでは、人の心は動かせない」(P152より引用)と指導者にとって真摯に受け止めたい話も。
野球の技術が上手くなる前に何が必要なのか、何が足りないのか。そして選手たちにとって甲子園がゴールではないことも明らかです。「野球の試合は9回で終わるが、人生のスコアボードは一生つづく。(中略)学生時代とは、そのために準備をする貴重な時間であり、高校野球とは、強い心と体を育てるための場所なのだ」(P188より引用)。こうした小さなことの積み重ねを経て成し遂げられた大偉業。選手の皆さんにはぜひこうした「自分たちでもできること」をどんどん増やしていってほしいなと思います。
(書評:西村典子)