ノムラの教え 弱者の戦略99の名言 野村克也著 講談社
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書評
野球にたずさわっている人で「本を読むのが結構好き」という人なら、数々のプロ野球球団の監督をつとめられた野村克也さんの本は一冊や二冊読んだことがあるのではないかと思います。かくいう私も数えてみたところ、10冊近くと我ながらビックリ!たくさんの書籍を世に送り出しながらもなお、新しい本が尽きないというところは、世間から広く親しまれ、その野球哲学が多くの人に支持されている一つの証ではないかと思います。
週刊モーニングに掲載中のマンガ「グラゼニ」とのコラボ企画で誕生した「ノムラの教え 弱者の戦略99の名言」は、見開き2ページで一つの名言が収められており、ところどころにグラゼニの登場人物や挿絵などが入って、とても読みやすく構成されています。言葉によって選手を奮い立たせてきた野村監督らしいひと言は、選手にとっても、指導者にとっても、それぞれの立場で感じるところがあると思います。野村監督の代名詞とも言える言葉の一つ「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」をはじめ、「努力に即効性はない。でも、努力は裏切らない」「不器用は最後に器用に勝る」「自分は正しい努力をしているか、毎日自分に問いかけよ」といった言葉は、天才長嶋茂雄と常に比較されてきた「不器用な」野村克也が、どのようにして球界を代表するキャッチャーになれたのかという問いに対する大きなヒントといえるでしょう。
またさまざまな理由でクビになった選手が、野村監督の下でめざましい活躍を遂げたことを表して「野村再生工場」と呼ばれたりもしましたね。「再生は難しいことではない」という項目ではそうした疑問に答え、「『悔しかったら見返してやれ』と反骨心を煽ってやる。そのうえで、足りないものに気づかせてやる。(中略)ちょっとしたヒントを与えるだけで、驚くほど人間は変わることができるのだ。」(P130より引用)と述べています。そのためには指導者が選手をよく観察するということが大切と野村さんはおっしゃっています。どうせ野球をやるなら上手くなりたい、勝ちたい、勝った喜びを味わいたいと思うのは、勝負の世界にいるものとしては当然の心理だと思います。その中で、正しい方向性を見つけだし、高校野球の2年半という限られた期間での成長を遂げるためのガイドとして、野村監督の哲学から学ぶことは大いにあると思います。