勝ち続ける意志力 梅原大吾著 小学館
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書評
ゲームを戦うことで賞金を稼ぐ仕事。初めて「プロ・ゲーマー」という職業を確立した梅原大吾さんの著書。勝負の世界で「勝ち続けること」を突き詰めながら、なおも成長し続けるその姿勢は、ゲームという小さな世界にとどまらず、スポーツやビジネスにも通じるところがたくさんあり、その勝負哲学ともいうべき言葉には唸らされてばかりです。
ゲームといういわゆる「世間的な評価の低い」世界で、批判的な目をはねのけて好きなことを続けるむずかしさを身にしみて感じたという梅原さん。だからこそ、人の目を気にしないで自分自身を信じ、これだというものに邁進してほしいというメッセージを送っています。「本当はこれがやりたかったけれども、周りの人に反対されるからやめておこう」とか「世間一般に名の知られている大学に行きたい、会社に入りたい」といったことは人の目を気にしながら行動することに他ならず、「窮屈で息苦しい生き方」のお手本みたいになってしまいます。「勝負の世界において人の目を気にすることはマイナスでしかない。なぜなら人の目を気にしていると本来やるべき行動を継続できないから」(P107より引用)。
人の評価や結果は一過程のものであるということ、努力を続けていればいつか必ず人の目は気にならなくなること、そしてそこに絶対的な集中力が養われること。実際に経験したからこそ言える言葉に、振り返って自分を省みると「周囲を、そして周囲の評価を気にしすぎる」凡人の私がいて反省しきり・・・。集中力とは他人の目をいかに排斥し、自分自身とどれだけ向き合うかにおいて養われるもの、なのです。
人の目を気にせず努力を続けるのは素晴らしいことですが、その一方で梅原さんは「自分を痛めつけるだけの努力はしてはいけない」ともおっしゃっています。自分を痛めつけることと努力することは違うということ。努力には人それぞれ、適度な量や限度が決まっていて、ガムシャラな努力ばかりが褒められるものではなく、壊せない壁、人間の手には負えない才能の壁にぶち当たったのであれば「頭を使って考えるべきだ」と指摘します。「考えることを放棄して、ただ時間と数をこなすのは努力ではない。それはある意味、楽をしているとさえ言える。頭を使って考えることの方が苦しいから、それを放棄してガムシャラに突き進んでいるのだ」(P184より引用)。ひたすら何かに取りつかれたように努力したとしても、それが頭を使わずにただ量をこなすだけであれば努力の仕方が間違っているということ。才能を超える努力というのは「頭を使って」努力することに他ならないのです。
勝ち続けるためには「勝って天狗にならず、負けてなお卑屈にならない」という絶妙な精神状態を保つこと。こちらで紹介した内容はほんの一部に過ぎませんが、梅原さんの勝負哲学はスポーツにたずさわる人にとっても学ぶところが多いのではないかと思います。