野球のプレーに、「偶然」はない 著:工藤公康
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書評
報道ステーション等でわかりやすい野球解説をされている工藤公康さんの著書が発売になったというのでさっそく注文してみました。タイトルの『野球のプレーに、「偶然」はない』を見てまず最初に思い出したのが、元楽天イーグルス監督・野村克也さんが広めた「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」という言葉。負けるときには必ず原因があり、負けるべくして負けるという意味なのですが、「偶然」という要素もさまざまな伏線があって「偶然に見えるだけ」なのかもしれません。
本書では野球を観戦する視点を「投手」「捕手」「野手」「打者」「ベンチ」というそれぞれの立場からわかりやすく解説しています。例えば「左ピッチャーは左バッターに強い」という話。私も「そりゃそうでしょう!」と思っていたのですが、でもなぜ強いのか。左ピッチャーの持つ角度や球種が重要であり、それぞれの得意球や特徴によっては左バッターを苦手にする左ピッチャーも存在するとのこと。左投手の工藤さんは現役時代「左バッターに投げづらかった」と述懐しています。その他にも「クセを盗まれないためのプロの技」であったり、「キャッチャーの配球の考え方」であったり「代打で成功する選手の条件」であったりと興味深い内容が続きます。
野球の基本的な考え方というのは、長年プレーをしている選手の皆さんや指導されている先生方にとっては「そんなの知ってるよ」ということが多いかもしれません。ただ何事も基礎があってこその応用であり、読み進めていくうちに「こういう見方があるんだ」という新鮮な発見があるかもしれません。工藤さんも著書の中でおっしゃっていますが「ここで話していることが正しいというものではなく、こういう理由からこう考えているという一つの視点を皆さんに提示している」というスタンスです。だからこそ長年プロ野球という世界で活躍された工藤さんの経験や知識に学ぶことも多いのではないでしょうか。
ご挨拶
今回の書評コーナーを担当しますアスレティックトレーナーの西村典子です。三度の食事と同じくらい本が好き、本棚から本があふれて居住スペースを占領している、いつも本を2、3冊持ち歩かないと不安で仕方がないという読書マニアで、日本一読書量の多いトレーナーを目指しています(結構本気)。読み終わった本は「これ面白かったよ~」と選手に気前よくあげることも多く、ドットコムをご覧の皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思う本を厳選してご紹介したいと思います。「賢者は歴史に学び、愚者は経験に学ぶ」初代ドイツ帝国宰相ビスマルクの言葉です。自分の経験則に頼りすぎず、本に書かれているもの(=他人の知識・経験など)から謙虚に学び、さらなる高みを目指すことへのガイドが出来れば幸いです。