【三年生座談会】千葉市立稲毛高等学校(千葉)
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▲市立稲毛高校野球部 集合写真
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毎年波乱含みの夏の千葉県大会。今年台風の目となったのは稲毛であった。2回戦でAシードの拓大紅陵と対戦。激戦の末、6対5で拓大紅陵を破ると、その勢いで3回戦では千葉商大付に延長14回の末、サヨナラ勝ち。さらに東京学館船橋も破り、ベスト16進出を果たした。今回は彼らにこの夏と稲毛高校野球部について語ってもらった。
◎座談会メンバー
松尾 雄亮:背番号1 181センチの長身から角度ある直球を投げ込む本格派右腕。
堀井 拓真:背番号3 一塁手。拓大紅陵戦ではスクイズを決めた。
川越 渚左:背番号4 1番セカンド。守りでエース松尾を盛り立て、打では核弾頭としてチャンスメイクに徹した。
古橋 洸樹:背番号5 拓大紅陵戦では4打数2安打の活躍。
濱 賢周:背番号7 2番レフトとして繋ぎ役に徹した。
西野 俊平:背番号11 左腕投手。チームの為に常に準備を怠らず登板を待った。
中井 啓介:背番号15 主将。抜群のキャプテンシーで、チームを一つにまとめ上げた。
饗庭 仁規:背番号18 ランナーコーチャーに徹し、ベンチでは声を張り上げてベンチを盛り上げ、全力・ガムシャラを身上とするムードメーカ。
Aシードに勝てる予感があった県大会
▲左から堀井、濱、松尾(市立稲毛)
―― 夏の大会が終わって2カ月経ちましたが、この夏の思い出、またはどういう思いで夏に臨んだか。振り返ってください。
川越 僕は甲子園にいくために3年間野球にかけてきたんですけど、その集大成だと思って、やってきました。拓大紅陵戦はAシードということもあって、気持ちが滅入ったのですが、思うように戦えて、自分の中では思い出に残る最高の夏だったと思っています。
古橋 去年は自分のミスもあって負けてしまって、まあ1年間練習してきて、思うようにいかなかったんですけど、最後の夏で、抽選決まって2回戦で拓大紅陵とやることが決まって、それ以降も強い相手を当たることが分かって、最後なので思い切ってやろうと思って、拓大紅陵戦では楽しくやることができました。
中井 それなりに拓大紅陵にやれると思っていましたけど、気持ち的には負けないと思っていました。向こうはAシードというプレッシャーもあったと思いますし、それが良い方向にいったかなと思っています。うちは失うものはなかったので、強気で行けたと思います。
西野 抽選が決まってから、拓大と当たることが決まって、最初は驚いたんですけど、初戦を戦っている自分たちが優位だと思いましたし、試合前ギリギリ直前の練習試合も結構勝てていて、一番良い形で試合を望むことも出来ましたし、相手は相手だったですけど、戦えると思っていました。
▲松尾 雄亮(市立稲毛)
饗庭 強豪はフリーバッティングをやることが多いと思うんですけど、自分たちはそれほどできなかったので、自主練習で無駄な時間がなく、凝縮して練習ができたことによって、伸びていったと思いますし、自分はそんなに出場できなかったんですけど、チームが勝ち上がっていったので、チームが勝つにはどうすればいいかと考えられた夏だったと思います。
松尾 自分は投手で、勝ちの8割を投手が握っていると思っています。負けたら投手の責任になるので、去年夏も自分が投げて負けてしまったので、今年は甲子園に行くぞという気持ちで臨みました。
濱 秋春ともに思うような結果を出せなくて、常にチャレンジャー精神で忘れずにやってきたので、ああいう勝利につながったと思いますので、良い思い出になりました。
堀井 拓大紅陵と当たることが決まった時は正直何とも言えない気分になったのですが、大会が近づくにつれて、みんなが絶対勝つ、絶対甲子園に行くという気持ちになって、それで自分も自信がついてきて、勝てる気がしてきました。良い形で夏の大会に入ることができたなと思っています。
――拓大紅陵戦ではどういう試合展開に持っていこうと思いましたか?
松尾 とにかく相手が格上。どんな形でも先制していこうと思って、甘い球はどんどん振っていこうと思いました。この試合は打つだけではなく、バント、スクイズも決まって、守りでも粘り強い守りができていましたし、追い付かれても、粘り強い打撃で勝ち越すことが出来て良かったと思います。
堀井(市立稲毛)
――序盤に先行して良い流れ出来ましたが、徐々に追い上げられていましたが、苦しい感じはありましたか?
松尾 そうですね。どっちにしろポンポンと打って、そのまま勝てる相手ではありませんので、追い付かれる覚悟はありました。
――この試合は何点勝負だと思っていましたか?
中井 自分としては厳しい形だと思っていましたが、相手が初戦ということで浮足立っていたように見えましたので、自分はロースコアで行くかなと思っていましたが、予想以上に点が入った試合になりました。
――勝ち越されても3点を入れて逆転。また同点に追い付かれても再び勝ち越しました。点を取られても動じない雰囲気というのがあったのでしょうか?
饗庭 ベンチは1回も沈まなかったですね。ずっと元気でした。自分はずっとランナーコーチをやっていたんですけど、守備戻るじゃないですか。ベンチに声を出していたし、点取られても、それ以上に点が取れる気持ちがありましたし、選手たちを見ていても、練習試合で打球が来るな!という顔つきをしていたんですけど、あの試合はこっちに来いという表情をしていました。
ーー劣勢の時はいつもこんなポジティブな気持ちで試合に臨むことができていたのでしょうか?
濱 夏前の練習試合は負けていませんでしたし、こういうシーソーゲームに勝つことに拘っていたのが大きかったと思っています。
▲左から中井、西野(市立稲毛)
松尾 あの試合は序盤に自分が打たれてしまったので、いつもでしたが最少失点に凌いで、攻撃につないでいく自分たちの形でしたが、序盤で6失点してしまったので、意気消沈してしまったというか、いつもの展開ではなかったですね。
――どの試合も緊迫したゲーム展開が続きましたが、それでも自分たちのペースで試合が出来た要因を教えてください。
中井 負けない気持ちを強く持つことです。緊迫した試合が続いたからこそ神経が引き締まったと思いますし、どのチームも簡単に勝てる相手ではなかったので、何も言わずともみんな引き締まっていたと思います。
一同 そんなことないよ。一度あったじゃん(笑) 秋の大会ぐらいに
ーーそうなんだ。どうやって一つになろうと団結しましたか?
松尾 試合に勝つことだけですね! 勝たないと一つにまとまらないですね。練習試合でもすべて勝つつもりで、勝ってこそチームは一つにまとまると思います!
[page_break:どんなことでも言い合える仲間たち]どんなことでも言い合える仲間たち
▲古橋洸樹(市立稲毛)
――稲毛高校はどんな野球部でしたか?
川越 自分たちの野球部はとにかく仲が良くて本当に休日も、学校生活も一緒にいるような感じで、喜怒哀楽を共にしてきました。野球する為に学校に来ていたというぐらい野球にかけていたので、野球部の仲間とやれて本当に楽しかったです。
古橋 練習メニューは私立の野球部のように専用の練習グラウンドはありませんでしたし、外野にサッカー部、ラグビー部、陸上部も使っていて、限られた中でやっているので、自分たちで足りないところを補ってペアを作って考える時間が多かったです。自分が考える中で、仲間に指摘しあいながらやってきました。稲毛高校は常に野球について考える野球部で、日常生活の中でも野球の話が出てきますし、自分たちで考えてやっていました。
中井 チームカラーとしてやはり古橋がいったように全員が考える野球でしたので、それなりに意見も出てきたりとして、良い形に生まれてくることがありました。ただいろいろな意見が飛び交って、自分の中でもどうしようかなと思いました。そういう環境が入れたというのはクリエイティブといいますか、いろいろなモノが生まれると思いましたし、それをもっと自分がまとめられていれば、柏日体戦にも負けなかったじゃないかなと思います。
饗庭 でも中井はいつも言うことは正しいですし、もうちょっと威厳が合っても良かったと思うんですけど(笑) いろいろあってまとめるのは難しかったと思うんですけど、良いキャプテンと思っていますし、最後までやってくれて感謝しています。
左から松尾、饗庭(市立稲毛)
西野 高校野球1年から始めて引退までの時間を考えたら、家族にいる時間より長かったんですよ。家族以上に親しい存在でもありましたし、高校入って部活以外に友達いなくても、野球部の仲間で十分だと思っていましたし、他の学校に行っていたら、こんな仲の良い友達に出会うことはなかっただろうと思っています。3年生の一人ひとりが面白いところがあって、部活が終わって、塾に行くことが多くなって、仲間と顔合わすことが少なくなったのですが、塾に帰るともやもやした気分になるんですよね(笑)
堀井 本当に楽しかったですし、クラスの中では野球部以外では友達もいなくて、絡みませんでしたし、この練習がつらかった3年間は仲間がいたからこそ乗り越えられたと思っています。
濱 朝から晩まで一緒にいて、昼飯も教室ではなく、外に出て一緒に食べるほどでしたし、そのおかげで、本当に言いたい事が言える。チームにとって言いたい言える環境だったのはとてもよかったと思います。
松尾 明るくて良いチームでした!
饗庭 周りと同じ意見で、言うことがないんですけど(笑) とにかく明るくて良いチームだったと思います!
――みなさんとても仲が良い野球部ということが分かりました。今のようにチームが一つにまとまったのはいつの時期になるのでしょうか?
一つじゃない時期がなかったと記憶しています。チームが同じ目標だったということありますし、自分がさっきいろいろな意見が飛び交ったと言ったんですけど、その根底はチームが勝つためなので、それなりに目指しているところが一つなので、確かに意見の衝突はあったんですけど、それもチームが勝つ為に必要なことですし、そういう意味では常に一つでしたね。
[page_break:後輩たちへメッセージ]後輩たちへメッセージ
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▲市立稲毛高校野球部ナイン
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――最後に先輩たちの躍進を再び実現しようと燃えている後輩たちへメッセージをお願いします
川越 やっぱりあれですね。仲間同士で「なぁなぁ」になっては駄目ですね。自分でこれやりたいから、これをやるとはっきりと言った方が良いですね。自分も仲間からいろいろ言われましたし、普段から付きあって、何でも言える仲にしてほしいですね。
古橋 1年間やってきたんですけど、自分もエラーをして負けてしまったことがあって、チームに迷惑かけてきたんですけど、それでも自信を持ってやってやるべきだったと思っています。後輩たちにはミスがあっても、自信を持ってプレーしてほしいですね。
中井 野球を引退して思ったのは、自分を振り返ると、今の自分と昔の自分を見ると、ああすればよかったなと思うことが結構あって、何かが終わった時に今日の自分はどうだったんだろうなと、これはやっている時は難しいんですけど、今日の試合が終わって帰りのバスや電車の中で、今日の自分はどうだったかを、寝る前ときに、今日の練習はどうだったかを振りかえる。一日をそのまま流すではなくて、過去から学んで次につなげていってほしいなと思います。
西野 後輩たちも自分たちと同じように仲が良くて、なんでも言える仲だと思いますので、自分からとにかくどんな意見でも仲間の為に行ってほしいですね。
饗庭 自分は全力とガムシャラですね。自分は技術がなかったので、全力とガムシャラを大事にしてきました。強豪校に勝つには強豪校にないものを求めることが大事で、全力とがむしゃらは大事にしてほしいですね。
松尾 隣のヤツに絶対に練習に負けない一番の練習をする。誰にも負けない一番の練習をすることですね。
濱 勝つことですね。過程も大事ですけど、最終的には勝つことが大事なので、それに拘ってやってほしいと思います。
堀井 とにかく精神的な反省ではなくて、ミスが出たら技術的な反省もして、前は進んでいってほしいと思います。
――以上になります。本日はお忙しい中、ありがとうございました。
今回だけではなく、2006年にはシード校・成田を破り、ベスト4進出したことがある稲毛。毎年、強豪校を脅かす戦いを見せる稲毛の強さはどこから来るのか興味深かった。選手の話を聞くと自分の言葉で強く主張していて、普段の練習からお互いが指摘しあいながら高めていたことが分かる。そして大会中は常にポジティブな心境で試合に臨んでいた。今回の座談会を通して、夏の快進撃が出来るのも必然だと感じた。最後に本人のために厳しいことを遠慮なく言える友達こそが本当の「友」ということを彼らから学ばせていただいた。
(取材・構成=河嶋 宗一)