Column

【三年生座談会】沖縄県立浦添商業高等学校(沖縄)

2012.09.08

僕らの熱い夏

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▲左から 内間滝介(背番号6)、宮里泰悠(背番号1)、照屋光(背番号10)、當眞寿斗(背番号4)

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去った第94回全国高校野球選手権沖縄県大会で4年振り4度目の優勝を飾った浦添商業高等学校。約1年前に新人中央大会で優勝したものの、その後秋季では糸満に屈し準決勝敗退、年が明けた春季では沖縄水産に完封負けを喫しベスト8で終わってしまったが、夏2回戦で興南戦を劇的なサヨナラ勝ちで収めると一気に頂点へと上り詰めた。その勢いは甲子園でも衰えず、高校BIG3の一人である愛工大名電濱田達郎の立ち上がりを攻め崩し見事勝利するとベスト16入りを果たした。
そのメンバーで共に沖縄市で生まれ育った4人をFMコザに迎え、ブースの中で色々な話を伺った。

◎座談会メンバー
内間滝介:背番号6 沖縄東中学校出身。主将としてチームをまとめ、守備では要のショートとしていぶし銀の活躍をした。
宮里泰悠:背番号1 コザ中学校出身。気迫のこもったピッチングが信条のエース。愛工大名電濱田達郎から先制のホームランも放った。
照屋光:背番号10 コザ中学校出身。沖縄県大会で最速151kmをマークしたオキナワンエクスプレス。桐光学園松井裕樹から唯一のホームランを放った。
當眞寿斗:背番号4 沖縄東中学校出身。小学校からの付き合いである内間と二遊間を組む。甲子園でランニングホームランを記録した。
當銘正一氏→沖縄県学童軟式野球中部北支部支部長と、学童チーム暁の監督を兼ねる。FMコザ番組のヒッティングチャンスではパーソナリティを務めている。

甲子園から帰ってきて落ち着きましたか

内間滝介

内間 自分たちが夢見ていたことが終わって、一安心というかホッとはしています。

宮里 でも国体(ぎふ清流国体)もあるのでまだ気は抜けないなという感じです。

――皆さん顔を覚えられていると思いますが、方々から手を振られたりして大変じゃないですか。

宮里 歩いているときに向こうが立ち止まってジロジロ見られたりとか(苦笑)声を掛けられたりして嬉しいというのもあります。

照屋 自分も同じで、通りすがりに「 あっ!照屋だ! 」みたいな感じで(苦笑)少し恥ずかしいなというのもあります。

當眞 自分は誇りに思えますね。

――その憧れの甲子園でホームランを記録した3人がここに居るというのも凄いですね。

當眞 打ったあとにセンター前だ!というのは思っていたのですけど、抜けたときにはもうホームを狙っていました。

宮里 自分のバッティングはいつも引っ張り。(濱田達郎から打った)右中間に打ったホームランは初めてです。良く飛んでくれたなと思います。

照屋 奪三振王の松井君からでしたが、他の良いバッターがどんどん三振していたのですけど、自分は三振だけはしたくないなと思いながらあの打席に入りました。当てることを第一に考えてて。たまたま甘いところにボールが来てくれて。ドンピシャだったのが良かったと思います。いつもの感覚と違ってて打った瞬間いったなと思いました。

内間 “一人置いてけぼりに”、僕はバッティングそんなに良くないので(苦笑)甲子園ではヒット何本か打てればいいかなという思いでした。

――1回戦が第一試合でしたが何時に寝ましたか。

内間 8時です。起床が3時半でした。

宮里 ベッドに入ったのですけど(余りにも早くて)眠れなくて(苦笑)。キャッチャーの伊良波と同部屋だったので、愛工大名電の打者のこととか話してて。9時半頃には寝てました。

當眞 寝ようとしたのですけど、照屋にちょっかい出されて寝れませんでした(笑)

照屋 どうせみんな8時には寝れないだろうなと(笑)他の人の部屋を回りながらちょっかい出して楽しんでました。

内間 練習でも照屋とかが笑いを取ろうとふざけてしまうので、キャプテンとしてそういう面白いところに流されないようにと心掛けてました。

照屋光

――照屋君はそういうキャラだったのですね。笑いを取るということでは、伝令役の阿嘉君が愛工大名電戦で出てきました。

宮里 ピンチだったので阿嘉を見ている余裕は無かったのですけど、スタンドが沸いたので見たら転んでてポーズを取っていたので、やってくれたなという感じでした。

當眞 県大会から面白いものを持ってきては笑わせてくれていたので。でも甲子園のアレは期待を遥かに超えてました(笑)

内間 自分たちのアルプスは騒いでいたのですが、相手の方はシーンとしていたのでこれは問題になるかなと思いました。やっぱりその後球審から相手チームもいるので気を遣ってと言われました。

照屋 今夜の”熱闘甲子園”に出てくるだろうなと(笑)センターの利修(大城)と話してました。

――その愛工大名電と当たることになった抽選会場ではどうでしたか。

内間 予備抽選で48番。残ったのが愛工大名電と開幕試合の二つ(苦笑)。

宮里 甲子園来たからには強いところとやりたいなと。抽選後は伊良波と愛工大名電のDVDを見て研究して。相手の名前を憶えるくらい見てました。

内間 抽選後はみんなからマイナスの言葉とか全然なくて。逆に楽しそうでした。

――思い出が尽きない甲子園ですが、その中でもどの場面が一番印象に残ってますか。

内間 自分は滝川ニ高戦。一塁に喜瀬(2年)が居てエンドランを決めたのに喜瀬がセカンドでアウトになって。宿舎に帰って喜瀬をイジってました(笑)

宮里 桐光学園戦。先頭打者にホームランを打たれた場面。打つのは嬉しいけど、打たれるのはすごく悔しいので。あっちに投げていなければなと。。失投でした。

照屋 バッティングでは桐光学園松井君からのホームラン。ピッチングでは愛工大名電戦で泰悠の代わりにマウンドに上がって。その回のピンチは抑えられたのですけど、次の回から自分が大暴れしちゃって。自分がライトからマウンドへ行くときに泰悠に「 ゴメン 」て言われて「 あとは任せろ! 」って言ったのに、まさか再び泰悠に任せる(負わせる)ことになるとは思ってなくて。監督さんやチームの期待を裏切ってしまったなと思います。

當眞 1回戦の内間の暴投ですね。目に何か入ったみたいで周りが良く見えないまま投げて。審判が僕らに見えて投げたみたいです(笑)

内間 投げたあとに「 あっ!審判だ! 」と(苦笑)焦ったんですけど、終わったあとはしょうがないなと。

――良い場面だけじゃなくて、苦い場面など色々な場面が印象に残っているのですね。苦いといえば桐光学園・松井裕樹君。彼に関してはどうでしたか。

内間 スライダーが速くて。真っ直ぐも速いのですけど、どっちに対応したらいいか分からなくて迷ってしまいました。

宮里 試合前は絶対三振しないぞ!という気持ちでいたのですけど、ど真ん中に来て振ったら内角に入ってきて。バットも止まらず振ってしまってました。

照屋 自分は三振していないのですが、スライダーにビックリして。試合前にチームでは、腰から下はたとえストライクでも見逃せということでした。高目から(普通なら)真ん中にくるかなと思ってもバウンドするくらいの低目に来て。キレも凄くて振らされていたところはありますね。

當眞 右バッターでもダメなので(僕のような)左バッターでは打つのは無理です(苦笑)。

宮里泰悠

――やはり凄い投手なのですね。宮里君に質問です。投げるたびに落ちていましたが、帽子がのサイズは大きめなのでしょうか。

宮里 小さいです。ズレて落ちるようになったのは(浦添商入学後の)1年生のときからです。直そうとしたのですが直らなくて。サイズをひとつ下げたけど無理で。甲子園行く前に、もうひとサイズ下げてもやっぱり飛ぶのでしょうがないかなと。深く被っているのですけどね。自分でも(何故落ちるのか)分かりません。

――躍動感が宮里君の持ち味でもありますからね。そうそ、来る9月30日から岐阜県で国体がありますが、何処とやってみたいですか。

全員 大阪桐蔭です!
※残念ながらその後抽選結果で大阪桐蔭ー青森光星学院の対戦が決まった。果たして彼らは藤浪君に挑戦出来るだろうか!?

[page_break:激戦の県大会を振り返って]

激戦の県大会を振り返って

照屋光

――今度は県大会を振り返ってもらいましょう。それぞれ印象に残ったゲームはどこでしたか。

照屋 2回戦の興南戦です。先発を任されて気合も入り、初回からドンドン思い切り投げて、相手バッターに向かっていきました。序盤良い形でスタート来れたのですが、終盤意味の無い四球を出してしまいそこで泰悠と代わりましたが泰悠も点を取られてしまって。再び登板して9回ニ死三塁。代打が出て来て自分も思い切り投げたら打球がホームベースに高く跳ねて。周りの観客は凡フライと思ったようで歓声が上がりましたが、取ったところで走者は一塁ベースに近かったのですけど、自分は一塁に投げることしか考えてなくて。握り損ねて暴投して同点を許してしまいました。

ヤバイなぁとベンチで焦っていましたが、浦添商らしい粘り強い野球でしっかり点を取ってサヨナラ勝ちしてくれました。仲間に助けられたなと感謝しました。

▽2回戦
興南
000 000 031 | 4
000 103 001x| 5
浦添商

當眞 3回戦の普天間戦です。(向こうのメンバーで唯一の)中学時代の盟友(上地正隼)が先発でした。先制タイムリーを打てたのが嬉しくて。でもこんなに苦戦するとは思ってなくて。野球の面白さというか、何があるかわからないというのを実感した試合でもありました。

▽3回戦
浦添商
200 001 206 | 11
000 400 300 | 7
普天間

宮里泰悠

宮里 
準決勝の前原戦ですね。自分はいつでもマウンドに上がれば相手ピッチャーにも敵対心を持っているので、前原の屋宜は良いピッチャーだという声を聞いて、負けられないという思いはあったけど(屋宜より先に)マウンドを降りてしまって。照屋が繋いでくれたけど自分たち打線は屋宜を打ち崩せず延長14回まで進んで。そこで屋宜が降りて次のピッチャーでスクイズを決めてサヨナラ勝ち。試合の結果では勝ちましたが、ピッチャーとしては自分たち二人は屋宜に負けていたと思います。

▽準決勝
前原
000 011 000 000 00 | 2
000 110 000 000 01x| 3
浦添商

内間 
決勝の沖縄尚学戦です。初回照屋がすぐ(沖縄尚学上間佑輔に)ホームランを打たれてしまって。伝令が来てマウンドに集まったんですが、照屋がヘラヘラしている(苦笑)。それを見て大丈夫かとは思ったんですけどね。相手が先行して自分たちは追い付こうという展開でしたが不安はなくて。ワンチャンスが来たら必ず逆転出来ると思ってました。守りでも當眞とゲッツーが取れましたしね。

▽決勝戦
沖縄尚学
220 010 000 | 5
210 101 03x | 8
浦添商

[page_break:浦添商での三年間の思い出と後輩たちへ]

浦添商での三年間の思い出と後輩たちへ

當眞寿斗

――そんな激戦を繰り広げたライバルたちがあったから、甲子園でも勝利を手にすることが出来たのでしょうね。浦添商に入学すると決めた当時の思いと、入ってからの三年間を振り返っていかがでしたか。

内間 自分はお兄ちゃんが浦添商でしたので良く話は聞いていました。自分もどうにか頑張れるだろうもいう軽い気持ちで入ったのですけど、全然キツくて(苦笑)。三年間も続けられるのかなと思ってました。キャプテンになってからも引っ張っていけるのか不安でしたが、新チームになってここから(僕の)高校野球が始まるぞと実感してました。

宮里 小学校の諸見スワローズの大城朝幸監督の息子さんが浦添商でして、そのときに応援に行かせてもらったときに浦添商の雰囲気が感動して忘れられなくて、(中学卒業時には)迷わず浦添商に決めてました。
エースで甲子園に行きたいなという目標を持ってましたが、最初投げたのは(同世代では)照屋だったりで、相当練習しないと(エースには)なれないなと。足腰が痛いときもあったのですが我慢して。昨年の夏で中部商に延長13回も戦いながら負けたときは悔しかったけどエースナンバーをもらったときは嬉しかったし、(最後は)甲子園に出られたし。三年間キツい思いもありましたが、最後に楽しい思いにかわって良かったなと思います。

照屋 
浦添商は噂では県内一、ニを争うほどキツい練習をしているときいてましたが、予想を遥かに超えてました。ケガもしましたがキツいときには周りを見て仲間たちとお互い励ましあってきました。
三年間通して仲間の大切さを感じたし、最後を甲子園で終われて良かったなと実感しています。

當眞 
何で浦添商入っちゃったんだろうと(一同笑)キツくてキツくて。上手くなりたいというのはありましたが、(次第に)上手くなるということより耐えるということしか考えられなくなるくらいキツくて。
(例えば)1年生のときの冬トレで、重い砂利を下半身に乗せて走るのがあって。(ここで宮里君が同意するように頷く)自分は下半身が弱かったので、いつも帰ってくるのは一番最後になって。泣きながらでも精一杯やりました。
でも甲子園を目指していたので、たとえ血だらけになっても耐えるんだと思っていたのが一番の思い出です。
これから浦添商に行きたいという子供たちには、キツくても夢を掴むための厳しさに向かっていって欲しいなと思います。

――8日から始まる秋季県大会。そこにのぞむ後輩たちへ一言お願いします。

内間 今までたくさん応援してもらったので自分たちも応援に駆けつけます。甲子園を経験している(大城や喜瀬)子もたくさんいるので、(来年は)自分たちを越して欲しいなと思います。

――最後にもうひとつ。甲子園について一言述べて下さい。

内間 全てが大きい存在でしたが、中でも人の多さにビックリしました。

宮里 どこよりも自分を熱くしてくれるところでした。

照屋 自分の持っている見えない力を出してくれた場所でした。

當眞 何と言えばいいか。。。ホント夢の世界でした。

共に凌ぎを削った小学校時代。実は一度だけ対戦したことがあるという4人。宮里・照屋の諸見スワローズと内間・當眞の美東ドラゴンズが、最後の6年生冬のブロック県大会予選で激突。
スコアは0-0のまま最終7回裏。ニ死三塁でマウンドの宮里は打者を三ゴロに打ち取るが、サードを守っていた照屋が一塁へ暴投してサヨナラ負けを喫したという。

時を経た全国高校野球選手権沖縄県大会決勝戦。そこでもマウンドに宮里が居てライト前に運ばれた際、照屋がホームへ大暴投。だが互いの信頼関係は消えることなく見事逆転に成功して夢であった甲子園への切符を掴むことが出来た。

そんな支え合った”仲間としての絆”の強さこそが、浦添商最大の武器でもあっただろう。

国体を控えての忙しい中、集まって下さりありがとうございました。

(構成=當山雅通

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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