【三年生座談会】県立畝傍高等学校(奈良)
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▲左から土井、中村、宮崎、藤井、藤田、田口、阪本
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今年の奈良県大会は揺るがしたのは間違いなく、畝傍(うねび)高校だった。2回戦に登場して青翔を破ると、大会のダークホースと言われた高田商、関西中央を撃破、準決勝では断トツの優勝候補とさえ言われた智弁学園も破った。
ビッグサプライズ――を起こした彼らはどんな想いで今大会を戦ったのか。
受験勉強に励む中、畝傍高校のメンバー7人に集まってもらった。
◎座談会メンバー
土井岳、中村侑介、宮崎誠、藤井慶造、藤田秀輝、田口文也、阪本和之
(インタビュー : 氏原英明)
夏の大会の最後を振り返って
▲宮崎誠(県立畝傍高等学校)
――夏の大会の最後を振り返って、見事準優勝でした。この結果に関してはいかがですか?
土井 僕は悔しかったです。
――みなさんも悔しい思いが強かったのでしょうか?
一同 はい。
――決勝までは無欲だったと百合監督が言ってましたが、どうでしたか?
中村 自分たちの野球ではなかったと思います。
――大会前は厳しい組み合わせだったと思いますが、みなさんの中では行けると思っていましたか?
阪本 目の前の一戦を頑張ろうといってました。
――手応えはどこかで感じましたか?
一同 ない!
中村 無理やろっていってました。
土井 それくらい楽な気持ち。
田口 もう終わる、もう終わるって。俺ら、もうすぐ引退やって、言ってましたね。
▲阪本和之(県立畝傍高等学校)
――3回戦の高田商がポイントになったのかと思いますけど、実際はどうでしたか?
阪本 自分たちの野球はできたと思います。
土井 高原さまさまでした。
(高原は今大会は救援投手として活躍。2年生ながらチームの勝利に貢献した)
――記憶に残っている場面とか、それぞれありますか?
土井 ピッチャーに『大丈夫や』って声を掛けながら、ホンマは、どうしよって思っていて、必死にやっていたなと思います。ひとついうと、高原と関西中央戦でスクイズを外せたのが良かったな。
中村 僕はミスも出たんですけど、今大会は守備でいつもどおりの平常心でできたと思います。
宮崎 智弁戦の初回にゲッツーとれたことですね。今年の智弁は強かったんで、あのままズルズル行くんかなと思ったところで、0点に抑えれたので良かったです。
藤井 僕は智弁戦2本のタイムリーを打てたことです。
藤田 智弁戦の藤井の二本目のタイムリー、追いつかれたあとだったんで、その次のチャンスで勝ち越せたので、すごく印象に残っています。
田口 智辯の試合で右中間の打球を捕れた。あれが抜けたら得点になってたので、止めれたのは良かったです!
阪本 自分的には高田商戦でタイムリーを打てたのが良かったですね。
▲中村侑介(県立畝傍高等学校)
――今大会は智弁が強いと言われていましたけど、畝傍は昨年の秋も接戦、智弁戦前はどうだった?
土井 勝てると思ってなかった。実際に投手もすごかったし。
阪本 もう俺たちは終わりやなって感じ。
田口 ホンマ、終わりみたいな。
中村 諦めているんじゃないんですよ。
土井 それくらいの楽しい気持ち。
阪本 楽しむだけ楽しんどこみたいな気持で戦っていましたね。
――でも、戦いながら、行けるって感じはあったでしょ?
土井 いや、(百合)監督さんも、勝たれへんぞっていう感じやったんですよ。
阪本 智弁に勝つなんて無理やって監督は常に言ってました。
田口 回を追うごとにいってましたからね。
土井 4-3でリードした時も、お前らが智弁に勝てるわけないやろって。だから、逆に楽にいけた。
――勝った瞬間は?
阪本 実感はなかった。
土井 全然なかった。
危機感を感じた春
▲田口文也(県立畝傍高等学校)
――そもそも、新チームからはどんなチームだったの?
土井 秋は、勝ってたんですよ。
阪本 新チームが始まったころは調子良かったですし、勝っていたんですよ。
土井 秋が終わってからエグい状況になって、勝てなくなった。
田口 やばい状況になったよな。
阪本 やばかったな。
――そんな時期があったのですね。
阪本 4、5月くらいはきつかったですね。
土井 練習試合で変な負け方してたんです。
阪本 全然ダメだったんです。
中村 そのことを真剣に考えはじめたのは5月くらい。
阪本 このままやったらやばいってなって…。
土井 勝ちたい!ってなって、みんなで意見を言い合いました。
▲土井岳(県立畝傍高等学校)
――それで徐々にまとまっていったのですか?
阪本 ミーティングをして、次の週の練習試合からちょっと良くなってきて、結果も出るようになってきました。
田口 懐風館(大阪)と試合をしたあたりですね。
――どんな話をしたのですか?
土井 練習をメインのメンバーだけでやるのかとか、もっとメンバーを絞るのかとか…。
中村 勝つためにどうしたらいいのかとか。
阪本 最後は絞ったんですけど。
土井 (百合)先生がいうまでは、絞らなかったんですよね。反対意見もあったんで。
中村 でも、この時に、初めて意見が出た感じでした。
土井 今までは言わなかったですね。それぞれ。
――結果が出て見えてきた?
田口 打ち始めたんですよ。
阪本 打ってたけど、守る方はまだやった。
土井 13-10とかで勝っていたんでね。基本は守ろうというのはいってましたね。
少ない練習時間での工夫
▲藤井慶造(県立畝傍高等学校)
――3年間で一番しんどい練習は?
土井 特にこれはきついとか、鬼メニューとかはないですよ。
田口 というよりも、練習時間が短いんですよ。
阪本 長くできへんし……。
土井 どれだけ効率良くするかなので…。
中村 場所も時間もないんで……。
――練習時間が少ない?普段の練習メニューでは何をしてるのですか?
土井 外野と内野に分けて、内野ノックして、外野はバッティングして、時間で交替です。
中村 あとは自主練をするだけです。
阪本 全体の練習時間は7時すぎくらいまでで、そのあとバットを振りたいやつは振るみたいな感じですね。
―― 一番、練習したのは?
土井 高原?(笑)。
田口 間違いない。
――彼の影響は大きかった?
土井 あいつで勝ったようなもんですからね。
中村 常にチームの中心にあいつがいた。
土井 最初はそんなんじゃなかったんですよ。最後の最後に出てきたんです。
田口 急でした。高原しかおらんかった。最後は。
――高原君はチェンジアップが良かったね?
阪本 そうです。
土井 代名詞でした。コントロールがいいんで、リードしやすかったです。
▲藤田秀輝(県立畝傍高等学校)
――3年間を振り返って、こうしておけば、良かったなとかはありますか?
田口 投手やろな。
藤田 僕は個人で練習なんで、あんまりしどくなかった。最後は調子良くなかったんで、つらかったですね。後輩が急成長してたんで、頼りになりました。
藤井 僕は最初はレギュラーじゃなかったんで、秋の大会の智弁戦でホームラン打ってから変わって、自信を持てるようになった。そこから練習もするようになって……。
宮崎 基本的に上位を打たせてもらってて、春終わってからやっと1番を打たしてもらって、1番の自覚が出てきた。いつも、今年のチームは『1番がおらん』っていわれてきたんで、自分が1番になったからには、俺が一番にふさわしいと思われるようにやっていました。
土井 俺はお前が一番やと思っていたで。
宮崎 絶対、俺に打たせてみろっていうのはあった。
土井 でも、最後、肉離れしたんでね。それはちょっと残念でした。
後輩たちへのメッセージ
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▲奈良県選手権大会 閉会式
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――引退して感じることは?
一同 勉強がきつい。
――みんな勉強中?
阪本 国立行こうとか、みんな、そんな感じっすね。
――では、最後に後輩にメッセージをお願いします。
土井 来年、期待できる投手多いので、ぜひ、頑張ってほしいです。俺らみたいに、悩む時期はあると思うんですけど、自分らの野球を見失わず諦めんとやってほしいです。
中村 自分らが勝てたのは、いつも、平常心で自分たちの野球ができたからなので、そういう自分たちの野球というのを作っていって、それを貫いて、悔いのない終わり方をして欲しいです。
▲奈良県選手権大会 決勝での畝傍ベンチ
宮崎 真っ向勝負でいったら、私立には勝てないと思うので、日ごろ、百合先生がいっている、細かい部分を聞いて、考える野球でやってほしいです。
藤井 しんどいと思うんですけど、最後に楽しいことが待っていると思って、頑張ってほしいです。
藤田 頑張ってほしいしか、ないです。
田口 来年は僕らより、能力的には強いんで、勝って行ってくれるんじゃないかなって思います。
阪本 能力的には、落ちることもないし、投手もいい選手いるし今年の夏を経験している選手も多いんで、しっかり今年のことを生かして、勝っていってもらって、甲子園に行ってもらえれば良いと思っています。
――ありがとうございました。
準優勝といえば、あと一歩届かずに悔しさも多いのかと思ったが、彼らから感じたのは、やりきったことへの満足感だった。だが、その中でも、準優勝だったことには誇りを持っているようだった。一人の選手が言っていた。
『(準優勝の)メダルは一生残るので、嬉しいです。ベスト4より全然違う』
優勝校の歓喜の中にあって、準優勝校には絶望しか感じないが、彼らにとって、首に懸けられた準優勝メダルが大きな財産になったのだろう。甲子園出場はならなかったが、今年の奈良大会でもっとも輝いたチームとして記憶に残しておきたい。