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イメージトレーニングの重要性・実践編~最高の心理状態を探す~

2012.12.25

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イメージトレーニングの重要性・実践編~最高の心理状態を探す~2012年12月25日

イメージを調整しながら変えていく

~最高の心理状態を探す~

 今回も前回と同じ、周囲の期待にいつもうまく応えられなかったピッチャーの事例を出して説明しよう。前回のコラムで彼は、メンタルモデルを作るステップをスポーツ心理コンサルタントと共に行い、自分の内面にある感覚を表出させ、良いパフォーマンスが発揮できたときには「筋感覚」を意識することができるまでに至った。

 そして、次に選手がこの感覚に気がついてから、「良いピッチングが出来なかった試合」を思い出してもらうとこう答えが返ってきた。

「今思えば、ダメな日は何も感じず、だから意識もできなくて、集中力もありませんでした。あ、なるほど…そういうことなんですね。自分で話していてどんどん分かってきました」

 続けて、その感覚を話せるか聞いてみた。

「言葉にするのは難しいですが…。そうですね、ステップした時が大切なんです。そーっといって、ぐっとスパイクでひっかける感じです」

 感覚というものは、その選手のものなので、100%他の人が理解するのは難しい。そこで「キーワード」を作ることが大切だ。そして、そのキーワードは、筋感覚のイメージを呼び起こすものである必要がある。さらに、このキーワードはイメージを調整しながら変えていく必要がある。次のページでは、具体的な方法を紹介しよう。

[page_break:最高のパフォーマンスがどの心理状態で発揮されるのかを探る]

最高のパフォーマンスがどの心理状態で発揮されるのかを探る

▲ベストパフォーマンスの時に何か感じたか

 メンタルモデル作成の次の段階は、最高のパフォーマンスがどの心理状態で発揮されるのかを探ることだ。
 私たち応用スポーツ心理学の専門家は、ここで良いパフォーマンスを発揮できるためのメンタルモデルに取り入れる心理的要素を探すのである。

 最初、この選手は自分の最高の心理状態についてこう語った。 

『ガンガン行っている時が良いですね。テンション高くやってやるぞって言う感じかな』

 この選手は、自分はこうありたいのだということを話していた。しかし、知りたいのは実際に最高の結果が出た時の心理状態なのだ。そこで、具体的に良かった試合のビデオを見ながらその心理状態を探ることにした。

『この大会では、あんまりみんな僕に期待してなかったので、リラックスしていました。マウンドでは落ち着いてましたよ。試合で投げているのが嬉しくて、投げることに集中してたような気がします』

 そこで、先程、彼から聞いたように「ガンガン行ったらもっとすごいことになっていたのでは?」と聞いてみた。

『うーん。どうかな。そう言われてみるとそんな感じで投げているときは、打たれた試合の時の感じかもしれない』

 ここで、続けて「良い試合」と「悪い試合」を両方検討していき、この選手が本当にメンタルモデルに入れたい感情や態度を確認した。そして、筋感覚と同様にキーワードを作成した。

 最終的には、それらすべてを統合し選手独自のメンタルモデルが完成した。最後の段階では自分のイメージしやすい音楽も組み合わせて、音楽を聴きながらメンタルモデルを使ってのイメージトレーニングを繰り返した。

 この選手はその後、大切な試合前も音楽とともに数回メンタルモデルを使ってイメージトレーニングを繰り返し、自信を持って眠ることが出来るようになった。そして、周囲の期待などの外的な要因に左右されることなく自分らしいパフォーマンスを試合で発揮できるようになっていった。

 ここまでイメージトレーニングの実践編として、ある選手の例を出して説明してみたが、ご理解頂けただろうか。ぜひ、選手の皆さんも、自分の最高のパフォーマンスが発揮できる時というのは、どんな心理状態なのかを探ってみてほしい。「良い試合」と「悪い試合」の両方を探ることが鍵となる。今回の内容で、不明な点があったら、気軽にご意見もお寄せください。

(文・布施努

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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