第7回 東京大野球部 勝利の方程式 守備フォーメーションの取り組み2013年05月17日

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早大の走塁

 東京六大学野球連盟において、個々の能力では敵わない強豪大学に挑み続ける東京大学運動会硬式野球部。彼らはその差をいかにして埋め、勝利しようとしているのか。守備のフォーメーションの取り組みなど、木村駿佑(4年)、芦田拓人(3年)両学生コーチが披露する、格上とされる相手からでも勝利する“方程式”には高校生が参考にできる要素が詰まっている。

【目次】
[1]己を知ること
[2]自分たちがまずは崩れないこと
[3]試合をマネジメントする意識

己を知ること

東京大学 木村駿佑 学生コーチ

 自分たちよりも強いチームに勝つためにはどうすればいいか。その糸口は、己を知ることにある。

 「個人のレベルは他の大学と比べて劣ります。完全に劣ります。例えば守備のとき、ランナーが一塁と三塁にいて、一塁ランナーがスタートを切り、キャッチャーがセカンドに放った瞬間、三塁ランナーがホームを突いてくるケース。他の大学はキャッチャーからの送球を受けたセカンドもしくはショートがキャッチャーに返球して三塁ランナーを刺せますが、うちは肩の強さがないため、その流れでは三塁ランナーの生還を許してしまいます。

ですから、セカンドないしショートがセカンドベースの1メートルくらい手前で送球を受けてキャッチャーに投げ返します。もしくはピッチャーがカットするか、キャッチャーが二塁ではなく三塁に投げるなど、自分たちが実行できる、失点を防ぐためのプレーを考えて行っています」

 木村学生コーチは他大学に後れを取っていることを素直に認める。だからこそ、工夫の道を探ることができる。

 「これは重点を置いてやっているわけではないんですけど、レフト線への長打が出て一塁ランナーがホームまで還る場合。レフトは本塁でアウトにするつもりでカットマンのショートへ返すのですが、ショートはそれが間に合わないと判断したときには切り替えてバッターランナーを二塁で刺しに行く。実戦でなかなか出るプレーではないんですけど、それをあえてシートノックでやったりします」

 他にも一二塁間を抜けるかどうかという強いゴロに対して、他大学はセカンドが捕ったときに備えてファーストが追いすぎないところを、東大では思い切りよく捕球を狙う。空いた一塁ベースにはピッチャーが素早く入る。リーグ戦でもかなり出るプレーで、普段の投内連携の練習でもそうした打球を打つようにしている。

東京大学 芦田拓人 学生コーチ

「セカンドが追いついたものの、ファーストが出てベースががら空きになっていたため投げられなかったというプレーが実際にあって、あれはアウトにできただろうということで練習するようになりました。こういう動きは他の大学では見たことがないですね。ピッチャーの走力もそうですし、ファーストの守備範囲もそうですし、それらによってタイミングなども変わってくるので、そういう練習は毎日やっています」

 アウトにできるチャンスがあるならば、それを少しでも大きなものにする。木村学生コーチの言葉には、東大の勝利への渇望が端々に感じられる。ただし、仮に効果的なフォーメーションであったとしても自分たちに適さないと思えば取り入れることはしない。

「臨時バッテリーコーチの今久留主成幸さんからランナー二塁で相手がバントをしてくる場面でのピックオフプレーを教わったのですが、うちのピッチャー陣の制球力ではやらない方がいいと思って見送ったものもあります。ファースト、サードがホームに向かってダッシュをするんですけど、ピッチャーは絶対にボールを投げる。キャッチャーはピッチャーに『ストライクを入れろ』と口では言うんですけど、これはピックオフの布石で相手にうちがバントをやらせると思わせるんです。それで次の1球も外して今度はピックオフする。ただ、面白いプレーだとは思いますが、刺せなければカウントが2ボールになってしまう。キャッチャーもある程度、肩が強い必要がありますし、今のチームには合わないと判断しました」

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プロフィール

鷲崎文彦
鷲崎 文彦
  • 生年月日:1975年
  • 出身地:東京都
  • ■ 小学3年から野球を始め、高校では硬式、大学では準硬式で野球を続ける。大学卒業翌年にはOBが務めるのが慣習だったこともあり、準硬式野球部の監督を経験。以後、フリーライターとして週刊誌、月刊誌、ムック本などでスポーツを中心とした取材、執筆活動を展開。
  • ■ 理系出身であることを生かして「図解雑学 野球の科学」(ナツメ社)の製作に携わるなど、あらゆる角度からスポーツにアプローチし続けている。昨年、小関順二氏、氏原英明氏とともに「検証 甲子園2009」(講談社)を刊行。「高校野球ドットコム」では安福一貴の「塁間マネジメント」の構成を担当。書籍からネットと幅広く活躍。
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