Column

東海大学野球部から学ぶ!オフの身体と心のスタミナアップ法

2011.12.20

東海大学野球部に潜入!オフシーズンのトレーニングを教えて!

 2011年の首都大学秋季リーグで完全優勝。さらに07年春から10年秋までも8季連続優勝を果たしたという大学野球の強豪の1つ、東海大学硬式野球部。

 昨年のドラフトでは、伊志嶺翔大選手が千葉ロッテから1位指名を受けるなど、チーム力だけでなく、個々の力においても心技体トップレベルの選手を育てている。

 今回は、そんな東海大野球部のオフシーズンの取り組みをレポートします!また、実際に3名の選手から今、行っているスタミナアップのためのオススメのトレーニング法や、オフの期間の目標の立て方など教えていただきました。

<本日のメニュー>
[1]東海大野球部は盛り上がり方を知っている
[2]伏見寅威捕手(東海大四)が語る「誰でも出来ることを、誰も出来ないくらいに続ける」
[3]坂口真規内野手(智弁和歌山)が語る「徹底的な走り込みで近づく甲子園の道」
[4]猿川拓朗投手(花巻東)が語る「毎日の練習日誌でモチベーションアップ!」
[5]写真で紹介!東海大のオフの練習風景

キャプテン伏見が語る!東海大野球部

開成高等学校 青木秀憲監督

“キャプテン 伏見寅威選手”

 今月12月に行われた大学日本代表候補選手強化合宿にも参加した東海大の新キャプテン・伏見寅威捕手(東海大四)から、まずは、東海大野球部について紹介していただきました。

■東海大野球部は盛り上がり方を知っている

 大学ジャパンの合宿に参加してみて感じたのは、他のチームの選手たちと体力面で違いがあるかどうかは、持久走やウエイトをやったわけじゃないので、分からなかったんですけど。でも、東海大学の選手は身体が大きいかなって思いましたね。菅野さんもそうですし、その上の伊志嶺(ロッテ)さんもそうですし、他の選手と比べても、みんな体がある程度でかいかなって。

 あと、トレーニングの話しではないんですけど、東海大の選手は盛り上がり方を知っているなって思いました。ノックでも狙って盛り上げていく選手が多い。
 ノック以外でもアップであったり、声を出していい場面ではお構いなしに声を出せるっているのは、どのチームにいても必要な感じはするし、社会に出ても明るい人は必要になってくると思うので。そういう所は、東海大野球部の誇りだと思っています。 

 今年の新チームについては、僕らは4年生の先輩たちよりも力がないので、個人の力だけじゃ勝てない。だから、チーム全体で戦うために『結束』というスローガンを立てて、その言葉を意識しながら全員でオフシーズンのトレーニングにも取り組んでいます。


伏見寅威(捕手) 「誰でも出来ることを、誰も出来ないくらいに続ける」

開成高等学校 バッティング

“身体や筋肉の機能を学び、変わったウエイトへの意識”

 続いて、北海道の東海大四高出身の伏見選手に、実際の東海大のトレーニング内容と、オフの目標の立て方を伺いました。

■12月のトレーニングを紹介

 12月は、心肺機能を高めるために、チームでは今しか出来ないランニング系のトレーニングを主に取り組んでいます。色々な種目を行いますが、10~50メートルまで、10メートルごとに印をつけて、まず10メートル走ったら、次は20。20メートル走ったら次は30。次は40、次は50というのを3~5セット行うランがとくにハードですね。

 抜こうと思ったら抜けるんですけど、チーム的にも誰もそれを許さない雰囲気がある。こういった苦しいメニューをお互いに「ナイスラン」って声掛けながら、やり切ることで、次に何が来ても大丈夫だって思えるようになってくるんですよね。

 また、高校と違って、大学ではオフシーズンは週3回のトレーニング日があります。器具を使ったトレーニングは、水曜と土曜の2回ですね。月曜日はグラウンドでタイヤを引くトレーニングなど行ったり、外を走ったりもしています。

 ウエイトでは、ベンチプレス、スクワットとパワークリーンなどが、主なトレーニングで、自分で足りないなと思ったら他の器具を使ってやっています。メニュー自体は高校とあまり変わらないですね。

 ただ、トレーニングの先生からウエイトでの正しいフォームを教えてもらって、ケガなく効率よく鍛えることが出来たり、自分は体育学部なんで授業でもトレーニングについて勉強したことで意識は変わりました。 
 例えば「スクワットで動く時は、どの筋肉が必要で、ここに力が入ると動きが悪くなってしまう」など、高校時代よりトレーニングに関する知識が増えた状態で取り組めていることも、ひとつの違いかなって思います。

■オフシーズンの目標の立て方

 スポーツって野球だったら冬、スケートだったら夏みたいに、実際のシーズンとの季節が真逆の時の過ごし方が一番大事っていうのを本で読んだことがあるんですよね。野球だったらオフが冬になるので、その時の取り組み方で夏の結果が変わってくるって、自分の中では理解して取り組んでいます。
 でも、今から夏に向けてと考えると、ずいぶん先のことのように感じるじゃないですか。だから、自分は夏までの日数を考えないで、「今月は何をしよう」って、今に近い目標を立てるようにしています。

 例えば、体重だったら2キロ増やすとか、ウエイトにしてもこの重さを上げるようにしたいとか。バッティングだったらスイングを毎日何本やるとか。一日の目標でいいと思うんですよね。近い目標を積み上げていくことで、夏につながるって考えたほうが取り組みやすいかなって。自分の場合は、それでモチベーションを保っています。

■決めたことも3日坊主になってしまう場合は…

 自分が出来る目標を立てればいいと思います。無理な目標は立てないで、絶対出来ること。以前、コーチから、「みんなが出来る事をみんなが出来ないくらいやったら、結果につながる」って言われたことがあったんです。
みんなが出来ない事をやろうとすると全然思いつかないじゃないですか。「みんなが素振り1000回やっているところを1500回にしよう」じゃなくて、プラス100回だけでもいい。それをみんなが出来ないくらい継続してやる。僕自身も、この考えは「すごい!なるほどな」って思いました。
 「『やれ』でやるな、『やる』でやれ」そんな気持ちで今も続けています。


坂口真規(内野手) 徹底的な走り込みで近づく甲子園の道

開成高等学校 ウエイトトレーニング

“数をこなすのではなく、自分のための練習をする”

 智弁和歌山高時代、甲子園で1イニング2本塁打の記録を残した内野手・坂口真規(3年・智弁和歌山)選手に、高校時代と現在のトレーニングについて語っていただきました。

■高校時代から変わったこと

 高校の時はそんなトレーニングというトレーニングはやってなかったです。ランニングばかりやっていました。トレーニングを始めたのは大学に入ってから。ウエイトも高校時代はやっていませんでしたね。
大学に入ってウエイトを始めて、体重も変わらずに筋肉がついたかはすぐには分からなかったですけど、高校の時よりも身体が締まったって言われますね。

 あと野球の面では、かなり変わりました。とくにバッティングでは、それが顕著に表れていますね。逆方向が飛ぶようになったとか、インパクトが強くなったとか。

 金属バットと木バットは打ち方がちょっと違うじゃないですか。金属の打ち方の筋肉で打つと、木だと飛ばない。木で打てるための筋肉を意識して、ウエイトを始めたのが良かったのかなと思います。

■インターバル走でスタミナアップ

 高校時代は、300メートルのタイムレースを50秒で20本走ってました。休憩でも、1本を1分で走るのが休憩。これが辛かったですね。毎日やっていました。タイムは監督が測るんですけど、倒れるかと思いましたよ。このタイムレースが終わったあとに、腹筋1000回が待っている(笑)これを6月や、冬の時期、正月前にずっとやってました。

 それくらい高校で追い込んだので、大学では辛いっていうメニューはそんなにないんですけど、100メートルのインターバル走が一番キツイですね。100メートルを20秒で走って、40秒で戻ってくる。ダッシュとジョグの繰り返しを10本やります。

 ただ、インターバル走もいろいろな種類があって、トレーナーの西村さんに僕らが、「毎日一緒のランニングじゃ面白くないから、毎日変えてください」って言ったら、色々なメニューを用意してくれるので、感謝してますね。

■走るトレーニングの大切さとは?

 自分は、この時期はウエイトでは基礎を意識しています。基礎の筋肉をちゃんとつけてからランニングの動きに持っていこうと考えています。

 だけど、高校生と大学生は練習に費やせる時間の長さも違うので、高校生のオフシーズンは徹底的にランニングですね。走ったら、体全体が鍛えられる。それに、野球って気持ちが一番大事じゃないですか。苦しいランメニューも、乗り切ったら気持ちも鍛えられる。

「これを走ったら甲子園に行ける」って、自分の場合はそう思いながら取り組んでいました。ただ、数をこなすんじゃなくて、自分のためになるように練習を重ねていけばいいと思います。


猿川拓朗(投手) 毎日の練習日誌でモチベーションアップ!

開成高等学校 ウエイトトレーニング

“最終的な目標と別に、冬の目標を自分で作り出す”

 花巻東(岩手)時代は、高校通算42HRと長距離バッターで、甲子園でも注目された猿川選手ですが、大学に入ってから投手に専念。最速147キロの速球を武器に、首都大学リーグで活躍中の猿川投手が、高校時代からの教えを今でも続けて実践していることがあるといいます。

■高校時代からウエイトを実施

 高校の時は、冬はグラウンドが使えないので、ほとんどウエイトとかトレーニングばかりしていました。また、高校時代は僕はピッチャーじゃなくて野手だったので、ずっと打ち込んでいましたね。だから今とは、全く違うメニューです。

 大学に入って、このオフシーズンの時期は、ウエイトで筋肉を大きくしたりする基礎のトレーニングをしています。去年はパワークリーンとスクワットとデッドリフト、今年はそこにベンチプレスもメニューに入れています。
僕はこの冬は、まず投げ方をしっかり固めて、強いボールを投げられるようにすることと、下半身の強化をテーマにしています。

■投手のスタミナアップにおすすめメニューは?

 長距離はもちろん、あとはインターバルとポール間走ですね。
 投手陣はポール間を30秒走って1分休み。これを10本×2セットで、毎日行なっています。
 あとは、投手陣のメニューの中で一番辛いのが、ポールからポールを往復してかえってくるんですけど、60秒以内に戻ってこなきゃいけない。これを7~8本、多い時には10本はやりますね。こういったメニューでスタミナもそうですが精神面も鍛えられる気がします。 

■高校から続けている『練習日誌』

 僕の高校は日誌をつけていたんですけど、そこに自分の最終目標を書いて、それに至るまでの目標を書くんです。僕は、寝る前に毎日これを書いていました。
 目標を実現するためにどうするかを書いたり、その日の反省を書いたり、最後に明日何をしたいかを書いてました。これは技術の向上にもつながるし、気持ちの持ちようにもつながりました。
 高校の時は、チームの目標が日本一。自分の目標は、全日本に入ること。結果的には、日本一は出来なかったけど、全日本に入るという目標が達成できました。
 今でも自主的に日誌を書いています。前の日に、明日何をやろうと思っても忘れるので、書いておくといいですね。この時期であれば、オフ期間の目標と最終的な目標を書くことで、意識高くオフのトレーニングにも取り組めると思います!
 


写真で紹介!東海大のオフの練習風景

 最後に東海大のオフの練習風景を写真で紹介!この日は、前日の雨でグラウンドが使えず、内野付近で行う予定だった「リレー」ではなく、グラウンド周辺を使ってのメニューに変更。もちろん、選手のお話でもあったように、メニューは西村トレーナーの工夫で日替わりのため、「とある土曜日の練習風景」として紹介させていただきます。

<野手のラン風景>

西村トレーナーとジャンケンをして負けたら、急な坂道コース

負けたペアは、ハードな上り坂を全力ダッシュ・・・

ジャンケンに勝ったペアは緩やかな坂道コースへ!

今度は選手同士でジャンケン。負けた選手は長めのダッシュ

<投手のラン風景>

投手陣は毎日ポール間ダッシュを10本×2セットを走る!

これを30秒でゴールしないといけないので、タイムキーパーが待機して時間を計測中。30秒オーバーすると本数UP?!

<ウエイトトレーニングの風景>

最大200名トレーニングできるという大学のトレーニング施設

ポジション別のメニューに基づいてウエイトを行う

重さを変えて挑戦!日々パワーがついていることを実感!

西村トレーナーと相談しながら、体を作り上げていく

 今回の特集「身体と心のスタミナアップ法」に沿って、アドバイスをいただいた高校球児の先輩、ありがとうございました。
「大学で野球を続けるには、今こんなことやっておこうかな」「自分も今日から目標立てて過ごしてみようかな」など、何か刺激になってもらえれば先輩たちもきっと嬉しいはず。
 なかには、「うちの高校も同じくらい苦しいインターバルしてるかも」って感じた球児は、ぜひチームメイトにも「うちのトレーニング、大学と同じくらい走ってるらしいよ」と、教えてあげてください。やる気が増しますよ!
 伏見選手、坂口選手、猿川選手の言葉通り、毎日のトレーニングを全員でやり切ることで、チームと個人のレベルも確実に高くなっていくはずです!

(取材・構成=安田未由

【関連コラム】
 東海大野球部の専属トレーナー西村典子氏のコラム『セルフコンディショニングのススメ』にて、今月は野球に必要なスタミナをつけるを公開中!ぜひ、こちらの記事も合わせてご覧ください。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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