「侍ジャパン大学代表候補」から学ぶ3つの心得
2019年は7月16日(火)から21日(日)まで愛媛県(2試合)、山口県(1試合)、福島県(1試合)、全5戦・日本開催の「第43回日米大学野球選手権大会」を闘う「侍ジャパン大学代表」。高校球児の多くにとって現実的な選択肢である大学野球のトップクラスでどのような世界なのかは、大いに興味が湧く部分であろう。
そこで今回は、昨年12月に開幕戦開催地となる愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムで行われた「侍ジャパン大学代表候補選手強化合宿」で起こった出来事の中から役立つ心得を紹介。現役選手たちはもちろん、新たなステップへと踏み出そうとしている卒業生たちもぜひ参考にしてほしい。
「侍ジャパン大学代表候補」は周囲への感謝を忘れない
練習の合間に自らトンボをかける侍ジャパン大学代表・生田 勉監督
「さあ、行こうか!」
シートノック後、侍ジャパン大学代表・生田 勉監督から合宿中のキャプテンに指名された佐藤都志也(東洋大4年・捕手・右投左打・180センチ77キロ・聖光学院)、同じく副キャプテンに指名された海野隆司(東海大4年・捕手・右投右打・173センチ80キロ・関西)が選手たちに声をかけると、一斉に参加全39選手たちは坊っちゃんスタジアム・一塁側・三塁側カメラマン席横にあるトンボ置き場へ。しばらくして始まったのは……総出でのグラウンド整備である。
普通「代表候補」の肩書が付けばグラウンド整備は球場係員にお任せであっても当然な場面。しかし彼らは何のちゅうちょもなく、自チームにいる時と同じ動きをしていたのである。さらにノックの合間では生田監督が自らグラウンド整備をする場面も。合宿冒頭と最後にはサポート役をしてくれた愛媛大・松山大硬式野球部への感謝のあいさつもあり、私たち報道陣へのあいさつ、対応も模範的なものだった。
侍ジャパン大学代表は特権階級では決してなく「大学野球界を背負っている責任を示す場所」。候補の時点にしてそういった矜持を共有できている部分は、高校生の皆さんも「学校・地域の代表」という言葉に置き換えて、ぜひ見習ってほしい。
[page_break:「侍ジャパン大学代表候補」は自らの特徴を理解し、活かす]「侍ジャパン大学代表候補」は自らの特徴を理解し、活かす
165センチ65キロでも自分の持ち味を存分に発揮した武次 春哉(関西国際大新3年)
「俺、身体が小さい。だから野球は好きだけど高校まででいいかな」
こう思っている球児の皆さんも、きっといることだろう。それも人生の選択の1つ。だが、もし「身体が小さい」という理由だけで野球を辞めようとしているならば、もう一度考え直してほしい。なぜなら「侍ジャパン大学代表候補」にはサイズのハンデを活かしている選手が数多くいるからだ。
右腕の代表格は明治神宮大会優勝投手の糸川亮太(立正大3年・171センチ73キロ・右投右打・川之江)。彼は高校時代から定評のあった多彩な変化球に、大学では制球力と球速を加える形で自らのスタイルを構築している。左腕では武次春哉(関西国際大3年・左投左打・西脇工)。サイズは165センチ65キロであっても強靭な下半身の回転力を利して回転数の高いストレートを投じている。
そして札幌学生野球リーグ2部の小樽商科大から代表候補合宿に招集された中山智隆(3年・内野手・右投右打・165センチ71キロ)は函館商時代は「8番・投手」。彼も強い体幹を活かしたスイングで、フリーバッティングではさく越えを放っていた。
ちなみに中山については生田監督が「映像を見て招集を決めた」経緯がある。つまり、どのカテゴリであっても、リーグでインパクトを残せば代表へのチャンスはあるということである。
「侍ジャパン大学代表候補」はコミュニケーション能力に長ける
ウエイトトレーニング中、大道 温貴(八戸学院大新3年・奥)と情報を共有する北山 比呂(日本体育大新4年)
3日間の合宿取材を通じ、代表候補選手たちに共通していたのは「よくコミュニケーションを取っている」とこと。「緊張をほぐしてベストのプレーをしてもらうため、宿舎含めたほぼ全員の選手に声をかけた」佐藤をはじめ、練習の合間には常に選手間の会話があった。
その中でも傑出したコミュニケーション能力を発揮していたのは合宿参加14投手中唯一の150キロをマークした北山比呂(日本体育大4年・176センチ78キロ・右投右打・横浜)である。糸川には「これで彼がよくなってくれたらいいと思った」と大学でやっている練習メニューを伝えれば、最終日のウエイトトレーニングでもホワイトボードを使って、身体の使い方を解説する姿が。情報を共有し「みんなでうまくなる」姿勢は、高校野球ににおけるチーム作りにも通じる部分である。
このように3日間の合宿一つとっても、多くの面で学ぶべきところが多かった「侍ジャパン大学代表候補」。高校球児の皆さんもぜひ、この3つのことをヒントにして日々の練習から「自ら探究する」ベースを築いてほしい。そうすれば、大学野球のみならず次のステップで、野球人生・人生の道を拓くチャンスが生まれるはずだ。
(記事=寺下 友徳)